Sakebi


2007年2月25日(日)「叫 さけび」

2006・TBS/Entertainment FARM/エイベックス・エンタテインメント/オズ/日活・1時間44分

ビスタ・サイズ(with Panavision)/ドルビーデジタル


公式サイト
http://sakebi.jp/index.html
(音に注意。全国の劇場案内もあり)


湾岸地区で水たまりに顔を浸けた女性の溺死体が発見される。有明署の刑事、吉岡(役所広司)と宮地(伊原剛志)が駆けつけると、朝の地震のため地盤が液状化し、ほとんど証拠が残っていなかった。そんな中で吉岡は水たまりの中に見覚えのあるボタンを見つけ、自宅にもどって自分のコートを調べると、真ん中のボタンが取れてなかった。吉岡は自分が関わったのか不安になり、捜査を続けると……。

71点

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 怖いというより、暗い。落ち込む。やるせない感じ、やりきれない……。納得できたようで、納得できない。そして全体的な印象としては同じ黒沢清監督の「LOFT ロフト」(2006・日)と似た印象。

 どんでん返しはなかなか素晴らしいのに、スッキリしない。すべての事件は霊の仕業としても、なぜ今なのか。だって話の発端は戦後間もなくの事件であり、それがなぜ今頃になって祟ってくるのか。直接事件に関わりない人たちに祟るなら、まず関わった人たちをどうにかしてからにして欲しいものだが、その辺は一切語られない。まあ怨みがそれほど大きかったからと解釈したとして、なぜ、今? それも連続して。うーん。

 霊を葉月里緒菜にした時点で、ある意味、ハンデとなった部分はある。もちろん美人のほうが怖いわけだが、有名女優であるだけに、ちゃんと顔を見せなければならない。くっきり、はっきりと。するとあまり怖くなくなってしまう。ピントがぼけていて、かつ顔が青白い時はゾッとしたが、普通の顔でピントばっちりで現われると、実際にいるようにしかみえない。おぼろげなもの、気配、そんなものが怖いのだ。

 画調は常に重苦しく、暗い。ちゃんと色は濃く力のある絵だったが、倉庫のような警察署や事件とあまり関係のない部分までが重苦しく、観客は息を抜けない。また逆に単調とも言え、メリハリがない分怖さにはならないという感じか。

 叫びの音はスゴイ。サラウンドで耳を弄せんばかり。タイトルでもあり、ここを強調したかったのだろう。その叫びとは、わかりにくかったのだが、誰からも顧みられないことへの叫びなんだろうか。

 監督と脚本は「LOFT ロフト」の黒沢清監督。同じ年に製作しているからか、似たような印象になってしまったのは残念。

 主演は黒沢清監督への出演が多い役所広司。「SAYURI」(Memories of Geisha・2005・米)、「バベル」への出演で一気の国際派のスターとなった。とても演技が自然で、うまい役者さん。でも、ボクは原田真人監督の「KAMIKAZE TAXI」(復讐の天使 KAMIKAZE TAXI・1995・日)が好きだったりするけど。

 幽霊役の葉月里緒菜は、ボディー・スーツ姿が話題になった「パラサイト・イブ」(1996・日)以外あまり知らないし、見かけないなあと思っていたら、結婚して出産、芸能活動を休止していたらしい。本作では、役作りかもしれないが、なんかやつれたような感じで、苦労したのかなあと余計な心配をしてしまった。

 主人公の愛人、春江を演じた小西真奈美はいい。健気ないい子、というイメージにピッタリの役。ちょっと薄幸の女のイメージもあるけど。「ぐび生、飲も」だよなあ。

 役所広司の同僚刑事に伊原剛志。「硫黄島からの手紙」(Letters from Iwo Jima・2006・米)もよかったけど、NHKの「新撰組!」(2004)とか、「半落ち」(2003・日)の検事役だったと思うけど、よかったなあ。

 ほかにも、ミス・キャストという感じの精神科医にオダギリジョー。作業船の船員に「硫黄島からの手紙」の加瀬亮。不倫から相手を殺す女に奥貫薫。その不倫相手に「教師びんびん物語」の野村宏伸。

 劇中、車での移動シーンがあって、スクリーン・プロセスなのか、不自然で気になった。

 公開初日、渋谷の劇場は舞台あいさつがあるというのでパスして、2日目。1回目は「硫黄島からの手紙」があって、その後、本作の上映。55分名前くらいで受付番号19番。20分前頃に劇場にもどってロビーへ。15分前から入れ替えで、5番ずつの入場。

 指定席なし、中央にぴあ席1席の221席に、最終的に5.5割ほどの入り。8割は20〜30代の若い人。中高というよりは高は2割ほど。女性は1割くらい。そしてぴあ予約席は最後まで来なかった。

 気になった予告は……絵の汚いものが多くて……場内が暗くなってから、北野武監督の「監督・ばんざい」が。まったく何のことかわからなかったが、また新作を撮るらしい。すごいなあ。上下マスクの「ルネッサンス」は面白そうだが、「スキャナー・ダークリー」(Scanner Darkly・2006・米)みたいにならなければいいけど。

 ややピンが甘い感じがしたのと、ずっとブーンというハム音がしていたのはどうしたことだろう。こんなことでは家でSDVDで見た方がいい、ということになってしまいかねないのでは。


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