Das Pafum


2007年3月4日(日)「パフューム ある人殺しの物語」

PERFUME: THE STORY OF A MUDERER・2006・独/仏/西・2時間27分

日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(Arriflex、Super 35 3-perf)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(独12指定、米PG-13指定、日PG-12)

公式サイト
http://perfume.gyao.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)


1738年7月17日、当時、し尿を通りに捨てていたため悪臭が立ちこめていたパリの中でも、最も臭いと言われたセーヌ川河岸の魚市場で、1人の男の子の赤ん坊が汚物捨て場に密かに産み落とされた。母親は死産だと思ってそのままにしていたが、後で泣き出したため、子殺しの罪で絞首刑にされる。赤ん坊はジャン=バティスト・グルヌイユと名付けられ、育児所へ預けられることになる。そして13歳の時7フランで革なめし職人に売られる。彼は天性の嗅覚の鋭さを持ち、やがて落ち目の香水調合師パルディーニ(ダスティン・ホフマン)に弟子入りし、究極の香水作りを目指すが……。

72点

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 うーむ。ハリウッド映画などにはない独特の1/fゆらぎのようなリズムとテンポ。事件が起きないわけではないのに、何か単調に感じて、ついつい眠くなってしまう。内容はとてもグロテスクで、変態で、エロティックで、奇想天外で、とんでもない。一言でいうならやっぱりエロ・グロだろうか。直接的な表現はほとんどないものの、PG-12で良いのだろうかとは、正直感じた。酒池肉林ならぬ臭池肉林という感じ。ホントに言葉どおり肉林だったもんなあ。大集団結合……。といっても、小学生や中学生は見に来ていなかったが。

 最初から国際マーケットを意識してか、パリというかフランスが舞台でドイツがメインでドイツ人監督が撮っていながら、全編英語。メインの出演者はイギリス人で、ダスティン・ホフマンはアメリカ生まれ。

 物語の登場人物たちが究極の香水に惑わされたように、観客も映画が持つ毒のようなエッセンスにやられてしまう感じ。あまり気分は良くない。ただ驚いたのは、前売り券やチラシに使われている香水のボトル。アレだったのかあ。始まりの場所と終わりの場所が同じというのもショッキングだったけど。

 劇中、香水の基本みたいなものがダスティン・ホフマンによって語られる部分がある。原作小説はそこがもっと長いのかもしれない。そして見ていてもそこが面白かったが、当然ながらそれほど掘り下げてはいない。映画は物語を描かなければならないのだから。ちょっと香水に興味が湧いたのは収穫かも。

 素晴らしいビジュアルは、主人公が作った香水を師匠のダスティン・ホフマンが試した瞬間、回りが薄暗い部屋から花が咲き乱れる美しい庭園へと革って行くシーン。匂いは脳の記憶を司る部分に近いところで処理されるらしく、ときどき古い記憶などをよみがえらせるらしい。それが映像で見事に表現されていた。750人の集団SEXもすごいが……。

 各所で鼻が強調される。アップになったり、そこだけ照明が当てられたり。その辺も上手い演出。

 主人公を演じるベン・ウィショーはまさにイメージぴったりというところではないだろうか。痩せていて、変態的で、異常な感じを秘めながら、繊細で危うげ。どこかで見たなあと思ったら、第一次世界大戦映画「ザ・トレンチ 塹壕」(The Trench・1999・仏/英)に出ていたらしい。アル・パチーノの「ベニスの商人」(The Merchant of Venice・2004・米/伊ほか)ではポーシャの使用人、ダニエル・クレイグのギャングもの「レイヤー・ケーキ」(Layer Cake・2004・英/仏/西)にも出ていた。最近では「ブライアン・ジョーンズ ストーンズから消えた男」(Stoned・2005・英)にキース・リチャーズ役で出ていたらしいが、見ていない。本作のヒットですでに新作3本が撮影が終了して待機中だとか。

 最後の美女ローラは、日本にも来ていたレイチェル・ハード=ウッド。本作では犠牲者の共通点として赤毛にしている。1990年のロンドン生まれというから、なんと17歳! 24歳くらいかと思った。今回はオーディションで選ばれたらしいが、映画デビューは美少年ジェレミー・サンプターが話題になった実写版「ピーター・パン」(Peter Pan・2003・米/英)の少女ウェンディ役。14歳での出演で、その時も日本に来ている。

 その父親役がアラン・リックマン。TV出身の人で、なんといってもインパクトがあったのは「ダイ・ハード」(Die Hard・1988・米)のテロリストのボス。最近では「ハリー・ポッターと賢者の石」(Harry Potter and the Sorcerer's Stone・2001・英/米)以来、シリーズには欠かせない人物となっている。「ギャラクシー・クエスト」(Galaxy Quest・1999・米)ではコメディもいけることを証明して見せた。

 白塗りで登場した落ち目の調香師パルディーニを演じたのは、今年70歳のダスティン・ホフマン。さすがにシワが増えた。名作「卒業」(The Graduate・1967・米)に出たのは40年も前。名作にたくさん出演していて、最近ではジョニー・デップの「ネバーランド」(Finding Neverland・2004・英/米)に出ていた。精力的に活動していて、新作が3本控えている。

 最初の犠牲者となる赤毛の女性は、ドイツ生まれのカロリーネ・ヘルフルト。ドイツ映画の青春ものなどに出ていて、あまり日本では知られていない。独特の魅力がある人だと思う。

 監督はトム・ティクヴァという人。共同脚本と、音楽も担当している。ドイツで大ヒットし話題になったが、日本では小劇場公開だった(ゆえに見ていない)「ラン・ローラ・ラン」(Lola Rennt・1998・独)の監督・脚本・音楽を担当した人。ドイツ映画は公開本数も少なく、公開されても小劇場が多く、よくわからない。

 橋の上にある家というのもすごい。かつてはパリのセーヌ川にかかる橋には4階建てや6階建ての家が建っていたそう。イタリアには今もそういう橋が残っているとか。ロンドン・ブリッジにもかつては家があったんだと。ヨーロッパはスゴイ。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は45分前についたらオバサンが2人。40分前に1Fの入り口が開いて地下へ。この時点では6人。オヤジが4人増えた。20分前に会場になって、この時で20人くらい。5.5対4.5くらいで女性が多い。ほとんど中高年。20〜30代前半は2割いただろうか。

 最終的には763席に3割ほどの入り。これも少ない。全席自由で、改装によってイスがカップ・ホルダー付きになったが、千鳥配列ではないのでスクリーンの見え具合はあまり改善していない。それより、気になったのは、非常口ランプの明るさ。以前より小さいものになったのに、新しい分、煌々と輝いている。本編が始まっても減光されないで、文字が読めるほど明るいというか、まぶしい。これは早急に改善して欲しい。

 予告では「エヴァンゲリオン」の新劇場版とかいっていたが、詳細は不明。なんなんだろ。前半の盛り上げが素晴らしいだけに、最後にガッカリさせられた作品だからなあ……。「情痴アヴァンチュール」はエロティック・ミステリーといった感じでおもしろそうだったが、IMDbで5.1点だし、2005年の作品だし……。

 「オーシャンズ13」が早くも予告開始。「2」が酷かっただけに「3」がどうなるのか。予告は面白そうだったが。予告でもサラウンドは大迫力。お金の掛け方が違う。えっ、アル・パチーノ? 8月公開っててまだずいぶん先。

 一番驚いたのは「300〈スリーハンドレッド〉」。あの「シン・シティ」(Sin City・2005・米)の原作のフランク・ミラー原作の300人のスパルタ兵vs100万のペルシア兵という戦いを描いたものらしい。とにかく、ちょっとセピア調の絵画のような実写映像が素晴らしい。あまりにきれい過ぎて、すべてがCGのようにも見える。圧倒された。これが映画という感じ。絶対、見たい。

 「ブラッド・ダイヤモンド」は新バージョンの予告。監督が「ラスト・サムライ」(The Last Samurai・2003・米)のエドワード・ズウィックだから期待してしまう。


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