The Last King of Scotland


2007年3月17日(土)「ハッピーフィート」

HAPPY FEET・2006・豪/米・1時間48分(IMDbでは109分、米版108分)

日本語字幕:手書き書体下、稲田嵯裕里/シネスコ・サイズ(デジタル 、70mm IMAX)/ドルビーデジタルEX、dts-ES、SDDS

(豪G指定、米PG指定)
(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/happyfeet/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)


南極の皇帝ペンギンの中でも歌のうまいメンフィス(声:ヒュー・ジャックマン)は、ノーマ・ジーン(声:ニコール・キッドマン)と普通に出会い、結ばれた。しかしメンフィスがやってはいけないといわれる卵を落としてしまったからか、産まれてきた赤ちゃんは皇帝ペンギンとしては致命的に歌がヘタだった。しかしマンブル(声:イライジャ・ウッド)と名付けられたその子は、天才的にリズム感が良く、タップ・ダンスは抜群に上手かった。

75点

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 一言でいうと、3D-CGアニメによるミュージカル。ミュージカルは結構きついテーマも描く、というわけで……。

 前半は、ちょっとノーテンキで陽気なペンギンたちの楽しい世界が描かれる。ご機嫌なダンサブルな歌や曲、そしてダンスは完璧な面白さ。ところが後半ロード・ムービーのようになって冒険に出かけると、重いテーマが姿を現し、笑っていられなくなってくる。問題が切実に感じられる分、笑ってすまされないぞと。直接的には乱獲だが、ハッキリ言えば温暖化だろう。乱獲はペンギンのダンスですぐにどうにかなるかもしれないが、温暖化はすぐには回復できない。>>>このかわいいペンギンたちがいなくなってしまうかもしれない>>>人間の責任>>>取り返せない>>>落ち込む……うむむ。

 さらに辛いのが、アデリーペンギンの中で教祖に奉られているイワトビペンギンのラブレイスの首に、缶ビールや缶ジュースなどを6本ごとにまとめている樹脂の輪っがハマっていること。TVのニュース報道などで見たような絵なのだ。本人は首が痛いのに、それを誇りとして教祖に収まっているわけで、そこがまたなお悲しい。足輪をつけられた鳥が、エイリアン・アブダクションだと自慢するのには笑ったが……。

 絵はリアルで、動きも自然、そこにいるかのような存在感。色もクリアでみずみずしく、美しい。ペンギンの子供の産毛はふわふわだし、雪面を歩けばちゃんと凹んで足跡がつく。水はもう波や波紋、水しぶき……どれをとってもホンモノのよう。しかもガラスとの質感の差もしっかりと描き分けられている。もはや完璧といってもいいのでは。モーション・キャプチャーしたというタップ・ダンスは見事としか言いようがない。さすがに、すべてを3D-CGにしているわけではなく、人間だけは実写を使っているようだったが……。東京の街並みもちょっと映る。

 全体の構成としては、擬人化アニメにありがちな、群れからはみ出す主人公と、彼の活躍によって仲間が救われ、名誉回復を果たすというパターン。「バグズ・ライフ」(A Bug's Life・1998・米)、「シャーク・テイル」(Shark Tale・2004・米)、「ロボッツ」(Robots・2005・米)……だいたい似たようなストーリー。本作も同じ。いかに違った切り口で見せるか。本作はペンギンとダンス。

 聞き所は、1つには素晴らしいダンサブルな曲。スティーヴィー・ワンダーの“Tell Me Something Good”、“I Wish”、クィーンの“Somebody To Love”、プリンスの“Kiss”、アース・ウインド・アンド・ファイヤーの“Boogie Wonderland”、ライチャス・ブラザーズの“Unchained Melody”、ライオネル・リッチーの“Hello”、エルビス・プレスリーの“Heartbreak Hotel”、K.C.アンド・ザ・サンシャイン・バンドの“That's the Way (I Like It)”、ビートルズの“Golden Slumbers”、“The End”ビーチボーイズの“Do It Again”……などなど。このサントラCDは買いだろう。

 もう1つの聞き所は、豪華な声優陣。主人公皇帝ペンギのマンブルに「シン・シティ」(Sin City・2005・米)のイライジャ・ウッド。子供のころの声には同じ ジョージ・ミラー監督の傑作「ベイブ/都会ヘ行く」(Babe: Pig in the City・1998・豪)でも主役の子ブタの声をあてたエリザベス・デイリー(E.G.デイリー)。

 その父で、エルビスの歌を高らかに歌うその名もメンフィス(エルビスの出生地)に、「X-メン」(X-men・2000・米)のヒュー・ジャックマン。母は鼻にかかったイロッぽい声の持ち主、ノーマ・ジーン(モンローの本名)に「ザ・インタープリター」(The Interpreter・2005・米)のニコール・キッドマン。本当にマリリン・モンローのような声を出している。

 幼なじみの歌がうまいグロリアには、やはり「シン・シティ」のブリタニー・マーフィー。思いっきりラテン系訛りの小柄なアデリーペンギン5人組、アミーゴスのリーダー、ラモンと、イワトビペンギンの教祖(グル)ラブレイスに、「ナイト ミュージアム」(Night at the Musium・2006・米)のロビン・ウィリアムス。皇帝ペンギの長老ノアに「マトリックス」(The Matrix・1999・米)のヒューゴ・ウィーヴィング。皇帝ペンギンの歌の先生ミス・バイオラに、「ベイブ」(Babe・1995・豪)のミセス・ホゲット役のマグダ・ズバンスキー。

 監督はオーストラリア生まれの62歳、ジョージ・ミラー。「マッドマックス」(Mad Max・1979・豪)で世界的なヒットを飛ばし、主演のメル・ギブソンをスターにのし上げた人。この時から脚本も手がけている。その後、スピルバーグの「トワイライトゾーン」(Twilight Zone-The Movie・1983・米)で飛行機旅行で怪物を目撃する第4話を監督。どちらかというとアクション系の作風だったのが、「イーストウィックの魔女たち」(The Witches of Eastwick・1987・米)でコメディ路線にチャレンジ。さらに実話に基づいた感動ドラマ「ロレンツォのオイル」(Lorenzo's Oil・1992・米)を撮ると、動物感動コメディ「ベイブ」の脚本とプロデューサーを手がけ、ついには続編「ベイブ/都会ヘ行く」を監督・脚本。どんなジャンルも行けることを証明した。そしてついに3D-CGもものにした。

 一瞬だが、何カ所か、たぶんコピー防止のドットが見えて、気になった。

 公開初日の字幕版初回(トータル3回目)。朝に座席を確保しておいたので、20分前くらいに着いたら銀座の劇場はちょうど前回が終わったところ。ロビーはノベルティ商品を買う人と、これから入る人とでごった返していた。

 しかし、全席指定の場内は意外と人が少ない。例によってピンクのカバーの女性専用レディース・シート9席×3列がある。10分前から案内が上映され、5分前からはCMを上映。最終的には540席の5.5割くらいが埋まった。

 男女比は4対6で女性の方が多く、老若比は6対4で中高年が多かった。また若い人に女性が多かった。それにしても、ロビーではなく、なぜ座席に座ってから場内で携帯のメールチェックをするのか。マナーがなっていない。予告が始まってもしゃべっているヤツも多いし、遅れても堂々と入ってくるヤツもいるし、日本人のマナーは……。

 相変わらずわけのわからない「ノラビッツ・ミニッツ」の新作の後、気になった予告編は……人口尾びれをつけたイルカの物語「ドルフィンブルー」は、いい映画のようだが、ボクは見ないなあと。「ゲゲゲの鬼太郎」はちょっと進んだものになった。「パニック・ルーム」のデヴッド・フィンチャー監督の新作「ゾディアック」。実話で、ジェイク・ギレンホークが殺人事件に挑むらしい。デヴッド・フィンチャーらしく絵がスゴイ。暗号(サイファー)が何回も出てきていた。これも見たいが、まだ日本版の公式サイトがないようだ。

 ヒュー・グラントとドリュー・バリモアのラブ・コメ「ラブソングができるまで」も面白そう。作曲家と手伝いに来たかわいい女性という、どこかで聞いたようなバターンだが、王道の作り方でイヤミがない感じ。2.55くらい横長の感じの画面になって「オーシャンズ13」。今度はどうだろう。アル・パチーノが敵で、予告は面白そうだが……。「ハリー・ポッター」は良い悪いに関係なく見てしまうだろうが、「ブラッド・ダイヤモンド」はぜひとも早く見たい。

 そう言えば、3/17から「パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド」の前売りを劇場窓口で買うと、ジャック・スパローの身代わり人形がもらえるらしい。買わねば。


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