Unfair


2007年3月18日(日)「アンフェア the movie」

2007・関西テレビ放送/フジテレビジョン/東宝・1時間52分

ビスタ・サイズ(HD?)/ドルビーデジタル


公式サイト
http://unfair-movie.jp/index.html
(全国の劇場案内もあり)


警視庁公安部に移動した雪平夏見(篠原涼子)は、ある日、車を爆破され1人娘の美央(向井地美音)が重傷を負い入院した。ところが、その病院が武装した正体不明のテロリスト集団に襲われ、占拠されてしまう。すぐに指揮本部が置かれ、管理官の山路(寺島 進)がやってくる。そして上層部は特殊部隊SATの突入を命令する。

72点

1つ前へ一覧へ次へ
 よく出来たドラマ。物語はスムーズに流れている。ただ、派手な銃撃戦や爆発もあるけれど、とてもTVっぽいイメージ。絵もビデオっぽい。ところどころ芝居がノっていないと言うか、良くない人もいるし……。それと、無理のある展開(あとで説明されて、そういうことかと思うところもあるが、おかしいままのところも)ある。コメディ路線ではなくリアル路線なので、どうしても気になってしまう。でも、母娘愛は感動するし、全体的に面白い。TVシリーズを見ていた人はもっと楽しめるのではないだろうか。

 気になったのは感染病棟との仕切りのドア。細菌漏れを防ぐようになっているはずだが、中と外で会話が出来るのか。出来るということは、空気が漏れてるんじゃないの。あれ、間違ってる? インターホンのようなもので会話するならともかく……。しかも事件解決後、勝手にドアを開けて菌が漏れている病棟に入って行って、娘にワクチンを注射している。自分も後で打ってもらったとフォローしているけれど、空気感染するんだから、開けた時点で病院中へ広まっているんじゃないの? 「24」みたいに何時間かで自然死滅するウイルスなのかも。

 黒色炭そ菌とか言ってたけど、こんな重要なウィルスの研究を、いくら警察病院とは言え一般病棟がある病院で扱うものなの? 大学病院ならまだしも……。やっぱりファンタジーと解釈すべきか。ここもちょっと気になった。

 ちなみに雪平が勤務する警視庁公安部総務課は、フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』に詳しい説明があるので参照されたい。各県警にもある。公安調査庁とは別。映画の冒頭では、何かの基板を持ち出そうとした犯人たちを追っている。そして捜査のやり方の違いに言及している。同じ警視庁でも、映画の中では捜査一課は「単独行動はするな」、公安部総務課は「終わり良ければすべて良し」。なるほどなあ。

 雪平が使っていた銃は、TVから共通のたぶんS&WのM3913LSレディスミス。M3913は実際に日本の警察の一部で採用されているというので、説得力があるしリアル。公安部総務課の上司、江口洋介演じる斉木はSIGザウエルのP230JPか。これも実際に私服警官用に採用されているモデル。どちらも快調に作動している。快調過ぎて薬莢の飛び出す速度が速く、見えないほど。驚いた。テロリストたちはAKの折りたたみストック(AK47Sか)や、水平二連ショットガンのソウドオフ・タイプ、SIGザウエルP220か226らしきものを装備。もちろんSATはMP5(MP5-Jか)。

 弾着もうまく、ステンレスの板にボコボコ弾痕ができるシーンはハリウッドばりの迫力。人体弾着も、額に小さい弾痕ができ後頭部からパッと血糊が飛ぶなどリアル。

 撮影は、意図して青系のライティングや青系の物を配置しているようで、TVシリーズを見ていないボクには意図が良くわからなかったが、統一感があって良かった。一部画質の悪いところもあったが、なかなか意図した絵作りというのは伝わってこないことが多いので、気を使っているんだなあと感心した。爆破はうまくデジタル合成を使って迫力を出していたようだ。

 監督は小林義則。本作が劇場初監督作品だそうで、これまでにTV版の「アンフェア」はもちろん、「世にも奇妙な物語」(2002・CX)や「海猿 EVOLUTION」(05・CX)などを手がけているらしい。うまいはずだ。

 原作は泰建日子(はたたけひこ)の「推理小説」(河出書房新社)だとか。「チェケラッチョ」の原作と脚本、「ドラゴン桜」なんかも手がけているらしい。原作も読んでみたくなった。今ベストセラーになっている。

 脚本は佐藤嗣麻子。イギリスで監督した吸血鬼映画「ヴァージニア」(Tale of a Vampire・1993・日/英)はショッキングだったし、日本で監督した「エコエコアザラク」(1995・日)、「エコエコアザラクII」(1996・日)もなかなか残酷で怖くて良かった。TV版の「アンフェア」もこの人の脚本だったらしいが、ボクとしてはもっとホラー映画を撮って欲しい。ホラー・ブームの時、なぜこの人に撮らせなかったのだろう。

 撮影は大石弘宣。ほかに映像が吉川博文とあったが、どういう仕事分担なのか。美術は柳川和央、照明は花岡正光。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は45分前で7人ほどの列。オヤジ3人、女性2人、若い男性2人という感じ。寒い日で、風も強かったので、30分前に開場した時はホッと一安心。ただ、それまで一度も整列や案内の来なかったので、列は道路の真ん中まで延びていて、まずいのではないかと思ったが……。

 この時点で30人くらい。男女比は半々くらいで、中高年は5人ほど。やはりTV番組の映画化ということで、若い人が多い。下は中学生くらいから。場内は指定席なしの全席自由。最終的には406席に6割くらいの入り。まあまあのスタートか。

 ただ、喫煙スペースが入り口のすぐ横にあり、開いたドアから煙がどんどん場内に入ってくる。強力な換気扇を付けて欲しい。煙い。さらに、寒い日にも関わらず暖房は入っていないようで、場内も寒く、コートを着たままの人が多かった。ボクも脱いだコートを途中から着たほど。うむむ。

 気になった予告は……鶴田法男監督の「ドリーム・クルーズ」。面白かった「ゴト師株式会社」(1993)や「リング0バースデイ」(2000)を監督した人。予告はかなり恐そう。期待できるかも。上下マスク、シリーズ第3作の「ハンニバル・ライジング」はいよいよ内容がわかるものになってきた。気持ち悪く恐そう。


1つ前へ一覧へ次へ