Mushi shi


2007年3月24日(土)「蟲師」

2006・東北新社/バンダイネットワークス/東芝エンタテインメント/ピラミッドフィルム/Yahoo! JAPAN/東急レクリエーション/小椋事務所・2時間11分

ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル



公式サイト
http://www.mushishi-movie.jp/
(入ると画面極大化。音に注意。全国の劇場案内もあり)

明治末期のある冬、山奥の山村で雪に降りこめられた蟲師のギンコ(オダギリジョー)は、大きな農家に一晩の宿を乞う。ギンコが蟲師と知った庄屋夫人(りりイ)は、使用人たちが片耳の聞こえなくなる病で悩んでいることを告げ、治療してくれるように頼む。難なく「うん」という蟲の仕業と見抜き患者を完治させたギンコに、今度は轟音で悩む孫の真火(守山玲愛)も診てくれと言うが……。

73点

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 すごいビジュアルと独特の世界観。恐ろしく、おどろおどろしいようでいて、妙に爽かな印象もある不思議な感覚。2時間11分をまったく長く感じさせず、むしろ物足りない感じ。たっぷり異世界トリップが楽しめる……

 が、エンディングはいかがなものか。なんだかフェードアウトして、終わったのかどうかさえはっきりしない感じ。暗くなってエンド・ロールになったので終わったとわかったが……。原作を読んでいる人にはわかるのかもしれないが、読んでいないボクはそこだけが気になったというか、尻切れトンボのように感じた。まるで前後編の前編の終わりか、連続TVドラマの第1回とでもいうような印象。予算切れのようにも見えてしまう。これが残念。

 どうせだったら、ロード・ムービー的に一緒に旅する、虹のような蟲(むし)を捕まえようとしている虹郎(大森南朋)と別れるところで終わりにしても良かったのでは。虹郎も、ギンコもそれぞれの答を求めて旅に出る……みたいな感じで。受けが良かったら続編を作るとか。予算と時間をかけないと、育ての親同然の女蟲師「ぬい」のパートは描き切れなかったような気がする。

 それまでのパートは、どのエピソードもおもしろい。素晴らしい。TVドラマ化しても良いのではないだろうか。というか、見たい。ギンゴと虹郎で日本全国を旅して欲しい。そして変な妖怪みたいな蟲を退治ああるいは退散させて欲しい。そう思わせてくれる。ある意味「どろろ」と通じるところがあるような。

 主人公を演じたオダギリジョーも、ぬいを演じた江角マキコも、虹郎を演じた大森南朋も、淡幽を演じた蒼井優も、みなイメージぴったりのハマり役。それぞれの魅力が良くでている。しかし抜群に良かったのは、庄屋のおかみさんを演じたりりイ。「SHINOBI」(2005・日)の伊賀の頭もよかったが、本作は妙なリアリティと、おかみとしての気品というか凛とした感じが抜群。本職はシンガー・ソング・ライター?「私は泣いています」は1974年100万枚の大ヒット作がある。

 監督と脚本を手がけたのは「AKIRA」の大友克洋。アニメが有名だが、初期の実写映画「ワールド・アパートメント・ホラー」(1991・日)はなかなか面白かった。

 もう1人脚本を手がけたのは、アニメ「スチームボーイ」(2003・日)や「千年女優」(2001・日)などの脚本を書いた村井さだゆき。

 ちなみに、公式サイトによれば、ロケ地は琵琶湖周辺らしい。冬のシーンもあるし、かなり時間をかけて自然を見事に捕らえている。そこに不思議な癒しのようなものがあるのかもしれない。

 原作は漆原友紀の人気コミックス(講談社)。7巻の累計売り上げが290万部という大ヒット作らしい。これはちょっと読みたくなった。2005年から2006年にフジテレビ系でアニメにもなったらしい。知らなかった……。

 公開初日の初回、銀座の劇場は45分前についたら10人ほどの列。女性は3人で2人は20代くらいか。若い男性が2人。あとは中高年。40分前に案内があって2列に整列。30分前に開場。この時点で30〜40人くらい。

 場内は指定席なしの全席自由。最終的にやや若い人が増えたものの、やはりメインは中高年で、360席の6割くらいが埋まった。もっと入ってもいいと思うが。

 気になった予告編は、石原慎太郎原作・総指揮の「俺は、君のためにこそ死ににいく」。登場する戦闘機がリアルなことはわかったが、どうなんだろう。  驚いたのは「スキヤキ・ウエスタン・ジャンゴ」で、監督・三池崇史。出演者全員日本人で、内容は完璧なマカロニ・ウエスタンのパロディという感じ。なんだかガトリングガンのようなものまで出てきていた。うーん。どうなんだろう。


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