Blood Diamond


2007年4月7日(土)「ブラッド・ダイヤモンド」

BLOOD DIAMOND・2006・米・2時間23分

日本語字幕:手書き書体下、今泉恒子/シネスコ・サイズ(レンズ、Arriflex)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/blooddiamond/
(入ったら音に注意)


1999年、アフリカ、シエラレオネは内戦に揺れていた。反政府軍のRUFは諸外国が公正な選挙を行なえと圧力をかけてくることから、各村を襲って成人男性を集めては手首を切り落とし、選挙ができないようにしていた。さらに、屈強な男をさらって行ってダイヤモンド採掘の強制労働に就かせていた。そのダイヤモンドを売って武器を購入する資金としていたのだ。3人の子供がいるソロモン・バンディ(ジャイモン・フンスー)はRUFによってさらわれ、ダイヤモンド採掘場へ連れて行かれた。そしてある日、巨大なピンクのダイヤの原石を発見し、近くの川岸に隠すが、そこを政府軍が急襲、逮捕され留置場に入れられる。その留置場にダイヤモンドの密輸の現行犯で逮捕されたダニー・アーチャー(レオナルド・ディカプリオ)が居合わせ、ピンクのダイヤのうわさ話を耳にする。

80点

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 8年前の話とは言え、現実世界の暗部を、実際の国名を使って描けるということにまず驚く。そして、世界に流通しているダイヤモンドの2/3がアメリカにあり、全体の15%が紛争地のダイヤモンドで、それによって武器が購入されているという。知らなかった。採掘にも大量の血が流され、その売買によって得られた金銭で武器が購入されてまた血が流されるという悲劇。映画の中で「女性がダイヤモンドを欲しがらなければ……」というセリフがある。もちろん女性だけの問題ではないが、女性には辛い映画かもしれない。

 一般にはコンフリクト(紛争)・ダイヤモンドと呼ばれるそうで、2001年にはキンバリーでダイヤの公正な取り引きのプロセスが決められ、2003年にはキンバリー・プロセスに基づいてコンフリクト・ダイヤモンドは扱わないことが決められたという。しかしコンフリクト・ダイヤモンドは消えていないのだとか。これを映画の中で、ジェニファー・コネリー演じるアメリカ人記者のマディ・ボウエンが血のダイヤモンド(ブラッド・ダイヤモンド)と呼ぶのだ。

 アフリカ人同士が殺しあうというのも悲劇だが、一番恐ろしいのは、RUFが幼い子供をさらって少年兵士に育て上げること。名前を変え、恐ろしい考えを毎日復唱させ、銃の撃ち方を教え、強制的に人に向けて撃たせる。恐怖と群集心理で洗脳していくそのようすが、自分も洗脳されていくようで恐い。ニュース報道などで写る少年兵はこうやって作られていたんだと納得した。自爆テロ犯を作り上げるのとどこか似ている気がする。こんなことをする人間が恐ろしい。

 手首を切り落とすなんて、なんて野蛮なんだと思っていると、このやり方はベルギー人が始めたというセリフがある。それを真似しているだけだと。うむむ……。100万人の難民キャンプというのも驚くほどの規模。アフリカはとんでもないことになっていたのだ。アーチャーが傭兵として働いていたのはセシル・ローズの個人名が付けられた国ローデシア(今はジンバブエだと指摘される)。とすればダイヤモンドの大企業バン・デ・カップはデビアスのことか。

 銃器は、アフリカらしくAKやAKSにG3が混じっている。FALがないのはそろえられなかったのか? どれも使い古した感じでそれがまた恐ろしい。こういう人たちに銃を持たせたら、殺戮の手段以外の何ものにもなりえない。車にはおそらく12.7mmのドーシカ重機関銃やブローニングM2重機関銃まで積んでいるわけで、こういうものまで売るヤツがいるわけだ。で、それに一役買っているのがアーチャーのような男。グレネード・ランチャーも売るような話をしている。のちにRPGまで装備していることがわかる。

 反乱軍のボス、コマンダー・ゼロはグロックのコンパクトのようで、取り引きの時アーチャーはS&WのM686の6インチを持っていたようだ。しかし中盤以降、アーチャーの銃はUSPに。しかも特訓を受けたようで「コラテラル」(Collateral・2004・米)のトム・クルーズばりの見事なウィーバー・スタンスの早撃ちまで疲労する。かなり速くて、そしてうまい。AKもハンドリングが抜群。さらりとやっているが、ほんとにプロっぽい。かなり訓練したに違いない。元傭兵という役なので、これくらいできないと説得力がないが。

 政府軍はM16やXM177それにAKも。だいたい政府軍がアメリカ系で、反乱軍がロシア系であることが多い。アフリカの場合はそれにドイツ系のG3などが入ってくる。今回、大物兵器ではロシアの大型ヘリコプター、Mi-24ハインドが登場。このヘリは本当に不気味で恐い。

 かなり社会的な問題に突っ込んだ作品でありながら、ちゃんとエンターテインメントに仕上げているところがすごい。お説教臭くないし、ハラハラ、ドキドキ、2時間23分が長く感じない。むしろ足りないくらいか。

 アウトローのレオナルド・ディカプリオはやっぱり「ディパーテッド」(The Departed・2006・米)より良い気がする。たぶんやりやすい役だったのではないだろうか。しかもおいしい役だ。とても印象に残る。

 ジェニファー・コネリーはまさにピッタリの役という感じ。化粧もスッピンに近いのではないだろうか。演技をしているという風がない。まあイェール大学卒の才女だから、ぴったりなのは当然なんだろうけれど。キス・シーンさえもないのに、上手い具合に恋愛映画にもなっていて、プラトニック・ラブというのだろうか、こういう恋愛の描き方も合っていいというか、逆に新鮮だった。

 ソロモン・バンディを演じたのはジャイモン・フンスーという人。西アフリカのベナン生まれで、まったく雰囲気が違うが、B級アクションの傑作「ザ・グリード」(Deep Rising・1998・米)で特殊部隊というか傭兵の1人を演じていた。他に有名な作品では、「グラディエーター」(Gladiator・2000・米)、「サハラに舞う羽根」(The Four Feathers・2002・米/英)、「トゥームレイダー2」(Lara Croft Tomb Raider: The Cradle of Life・2003・米/独ほか)、「コンスタンティン」(Constantine・2005・米/独)「アイランド」(The Island・2005・米)、そしてつい最近ではガッカリのファンタジー「エラゴン 遺志を継ぐ者」(Eragon・2006・米/英)などがスズラリと並ぶ。

 傭兵のボスは「ハムナプトラ」(The Mummy・1999・米)の濃い顔のアーノルド・ボスルー。南アフリカ出身で、人気TVドラマ「24」の第4シーズンで、テロリストの幹部を演じていた。

 監督はエドワード・ズウィック。「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米)の監督だ、うまいはず。他にはデンゼル・ワシントンとブルース・ウィリスの「マーシャル・ロー」(The Siege・1998・米)、デンゼル・ワシントンとメグ・ライアンの「戦火の勇気」(Courage Under Fire・1996・米)、デンゼル・ワシントンとアシュー・ブロデリックの「グローリー」(Glory・1989・米)と、デンゼル・ワシントンとの仕事が多かったのだが、ほとんど戦争を描いたものが多い。

 脚本と原作はチャールズ・レビット。見ていないがシャロン・ストーンが出た不治の病の少年を描いた「マイ・フレンド・メモリー」(The Mighty・1998・米)や、超常現象なのかはったりなのか微妙に揺れ動く感動作「光の旅人K-PAX」(K-Pax・2001・米)などの脚本を書いた人。うまいのではないだろうか。今後も期待。

 公開初日の初回、新宿の劇場は45分前で8人待ち。男女は半々で、老若も半々。30分前に列を曲げるように案内があったが、当日券や前売り券などの説明がなく、全員が同じ列に。25分前に当日券売り場のシャッターが開き、20分前に開場。知らないで当日券を買おうと待っていた人も並んでいた。ちゃんと説明があれば……。

 1,064席のうちスーパー・ペア・シート以外、全席自由。この時点で30人くらい。さすがにレオナルド・ディカプリオでも、戦争映画でテーマが重いことからか、客が少ない気がする。若い人が増え、1/3くらいに。劇場に併設されているモスはマイ・ペースで、劇場の時間にあわせて営業していない。していたらもっと売り上げが伸びるだろうに。

 最終的には2.5割くらいの入り。少ない。良い映画なのに。女性は楽しくない映画だろうけど。

 明るいまま予告編の上映。「エヴァンゲリオン」は絵なし。何を作りたいんだろう。「シュレック3」は明るくて、暗いシーンがよく見えなかった。せめて半分くらい暗くしてくれればいいのに。「300」はわずかの時間なのに、とても印象に残る。すごい絵。面白そう。絶対に見たい。大きな劇場で上映してくれると良いが。

 シネスコ・サイズになって、暗くなり「パイレーツ・オブ・カリビアン」の予告。大迫力の音。これも面白そう。完結編らしいし。

 携帯のメールを使っているヤツがまだいる。エンド・クレジットになるとすぐに液晶を付けるヤツも。


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