日本語字幕:手書き書体下、寺尾次郎/モノクロ/シネスコ・サイズ(マスク、Technovision、Super 35)/ドルビーデジタル
(仏-16指定、日R-15指定)
屋根修理の仕事で生計を立てているセバスチャン(ギオルギ・バブルアニ)は、ある日、仕事中に依頼主が麻薬で死亡し、修理代がもらえないことになり、ついパリ行の切符が入った封筒を持ち帰ってしまう。そしてそのチケットどおりパリに行くと怪しい男たちが現われ、人里離れた森の中の家に連れて行かれる。そこでは、金持ちたちがプレーヤーを出場させ、ロシアン・ルーレットをやって賭けに興じていた。 |
予告編ではすごいのに、見どころはロシアン・ルーレットのシーンのみ。後はそのための、付け足しのような前後譚。全体にリズムが単調で、もっと面白くなるはずが、退屈で眠くなる。何回か気を失った。 しかも、モノクロという手法がドキュメンタリー・タッチを盛り上げるというより、いかにも1960年代くらいのヌーヴェル・ヴァーグのフランス映画のような雰囲気。すごく古い感じがする。終わり方も昔のフランス映画っぽい。えっそんな終わり方、というような。逆に新しいというより、古くさい。音楽も当時のものをそのまま使った感じ。今は使われなくなった手法だからこそ目立ったのか。 モノクロは硬質でコントラストの強いもの。雰囲気はあっている。 確かにロシアン・ルーレットのシーンは良い。モノクロによって焦燥感や絶望感も強調されている。ただ、ここが撮りたかっただけで、他はノー・プランという印象。映画全体として何が言いたかったのかも良くわからない。伝わってこなかった。単調さは致命的なのではないだろうか。 銃は、ロシアン・ルーレットをやるために当然リボルバーのみ。ただし、すべてダブル・アクションで、映画のようにシリンダーを回してもあんなに派手な音はしない。カチカチという音はするが、映画的演出。使われていたのはフランスだから当然マニューリンと、S&WのM19あたり、だいたい2〜4インチ。一方、実際の殺人ではオートマチックが使われる。画面からはワルサーPPのようだったが……。 主演の屋根職人セバスチャンを演じたのは、グルジア生まれのギオルギ・バブルアニという人。監督の弟だそうで、イケてない青年を好演。観客がいらつくほど煮え切らない感じがうまい。本作が映画初出演らしい。 監督・脚本・製作、そしてセバスチャンの兄を演じているのは、グルジア生まれの32歳、ゲラ・バブルアニ。この若さでこの古さとは。本作は初長編監督作品で2005年ベネチア国際映画祭・最優秀新人監督賞、2006年サンダンス映画祭ドラマ部門審査員大賞、2006年ヨーロッパ映画賞・ディスカバリー賞を受賞している。 公開8日目の初回、渋谷の劇場は60分前に着いたら誰もいなかった。45分前で3人ほどになり、35分前に案内があった時には15人ほど。次第に増え出して20分に開場なった時には30人くらいに。 20代くらいが1/3ほどで、女性は2〜3人。中高年が2/3。最終的には221席に2〜3割ほどの入り。2週目でこの入りはまあまあか。 気になった予告編は……ロボットが主人公の「ダフト・パンク・エレクトロマ」。内容はよくわからないが、フルフェイスのヘルメットを被っただけでロボットというのが、なにか新鮮で、映像に力があった。ただ。劇場がちょっと……なのとレイトショー公開というのが引っかかる。 アイドル・グループ嵐の「黄色い涙」は「三丁目の夕日」的青春群像劇というところか。ヒュー・ジャックマンとレイチェル・ワイズの「ファウンテン」は不治の病に侵された妻が書いた冒険ファンタジーと現実の物語がシンクロしていくという感じの風変わりなラブ・ストーリー。これは見てみたいが……。 特に日本の映画で中々タイトルが出ず、出てもそれとわかりにくいものが多い。工夫が必要ではないだろうか。 ケネス・ブラナーが監督したオペラの映画化「魔笛」は、舞台を第一次世界大戦に置き換えて、青い軍服という斬新な演出で興味をそそる。劇場窓口で前売り券を買えば、魔笛のペンダントがもらえるらしい。 暗くなっての予告はショッキングなタイ映画「レベル・サーティーン」。これはすごい。闇のネット・ゲームを描いた作品で、ある日、ある男の携帯に電話が掛り、壁のハエをたたき落とすように指令される。実行すると賞金が振り込まれ、次にレベル2に進むか聞かれる。レベル2はそのハエを食べること。こうして次第に指令はエスカレートしていき、最終ステージのレベル・サーティーンにはとんでもないものが待っているらしい。しかし賞金は3億円。はたして主人公は……。これは見たいが、なぜかレイト・ショー公開。なぜ? 上下マスクの「ルネッサンス」はもうそろそろ飽きてきた。ビジュアルはスゴイ。それはわかった。その先は? |