Music and Lyrics


2007年4月22日(日)「ラブソングができるまで」

MUSIC AND LYRICS・2007・米・1時間44分(IMDbではアルゼンチン版106分、米版96分)

日本語字幕:手書き書体下、藤澤睦実/ビスタ・サイズ(Arri、1:1.85)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/musicandlyrics/
(音に注意)


1980年代に一世を風靡したアイドル・グループ“ポップ”の元ボーカル、アレックス(ヒュー・グラント)は、グループも解散し、元相棒がソロで活躍する一方、遊園地や同窓会などのイベントで、オバサンとなってしまったかつてのファンたち相手に、昔の歌をそのまま歌って生計を立てていた。そんなある日、アレックスのファンだという人気絶頂の現役アイドル、コーラ(ヘイリー・ベネット)から新曲を作って欲しいという依頼が舞い込む。ところが、長年も昔の歌ばかり歌っていて作曲を手がけておらず、作詞は苦手だった。わずかなチャンスにかけたいアレックスだったが、まったく作業は進まない。そこに、たまたま植物の世話に来ていたソフィー(ドリュー・バリモア)の口ずさんだフレーズが、アレックスの何かを動かす。

74点

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 どこかで見た気がする。しかし定番の期待を裏切らない、定番どおりの展開。まったく安心して見られるし、他の同類のものと同じことなのだが、面白い。会話(セリフ)がよく練られている。そして曲もまたいい。このところ、人が死ぬような映画ばかりを見続けていたせいもあって、久々に上質なコメディを見た感じ。

 いわゆるラブ・コメだけれど、ミュージシャンが主人公なだけに、ミュージカルのようでもある。しかも、おどろおどろしい部分のないミュージカル。といって、内容がないわけではなく、落ちぶれたミュージシャンの再チャレンジと、恩師にメチャクチャこき下ろされて夢を諦めた女性の再起が折り込まれている。元気が出てくるし、がんばろうという気にしてくれる。やっぱりたまにはこういう映画も見ないと。

 特に音楽がついでではなく本気のところが良い。1980年代のヒットソングとして出てくる曲も良いし(プロモーション・ビデオも本気で当時らしく作っている)、2人で作る曲も良い。ということ、このCDは買いだと思う。6曲しか入っていないようだが、3曲は主演のヒュー・グラントが歌っているし(1曲はドリュー・バリモアとコーラス。これがいい)、新人美女女優のヘイリー・ベネットが歌う曲も2曲入っている。すごいなあ、2,580円(税込)。

 ビデオ・クリップがあるならそれも良いかも。なんだかワムっぽい設定がまたおもしろく、「あのスターは今」のような番組への出演依頼が来るような落ち目ぶりが、笑えると同時に哀しい。食べるためにオバサンたちの前で腰を振り、遊園地でも同窓会でも歌う。食べていくのは大変なのだ(結構良い部屋に住んでいるのだけれど)。

 細かいギャグがおかしい。たとえば植物の水やりアルバイトのドリュー・バリモアは荷物を平気でピアノの上に置くが、ヒュー・グラントは口で文句を言わずに、いちいち取って他に置く。こんな細かい仕掛けがあちこちに折り込まれている。そしてそれが全体の雰囲気を良いものにしている。

 ヒュー・グラントはラブ・コメの帝王的に言われるけれど、その走りとなった「恋するための3つのルール」(Micky Blus Eyes・1999・米)の前のジーン・ハックマンと共演した「ボディ・バンク」(Extreme Measures・1996・米)なんて、かなり硬派。そしておもしろい。それ以前はラブ・コメはないのではないだろうか。マイク・ニューウェル監督の「フォー・ウェディング」(Four Wedding and a Funwral・1994・米)がちょっとそれっぽいか。ロマン・ポランスキーの「赤い航路」(Bitter Moon・1992・仏/英)など、かなり毛色の変わった作品だ。ラブ・コメはつい最近のこと。

 相手役のドリュー・バリモアは「E.T.」(E.T.・1982・米)の子役で注目され、以来ホラーSFの「炎の少女チャーリー」(Firestarter・1984・米)とか、いろんな作品に出演しているが、ゆはり最近はラブ・コメ系が多いようだ。

 美人アイドル歌手コーラを演じたのは、ヘイリー・ベネット。劇場長編映画デビュー作らしい。実際にアーティストで、いまアルバムの準備中なのだとか。

 とぼけた味のマネージャーを演じているのは、「キャプテン・ウルフ」(The Pacifier・2005・米)に副校長役で出ていたブラッド・ギャレット。

 ドリュー・バリモアの姉で、80年代アイドル・グループ“ポップ”の大ファンだったりっぱなオバサンに、クリスティン・ジョンストン。人気TVドラマの「ER救急救命室」や「セックス・アンド・ザ・シティ」「シカゴ・ホープ」などに出演するかたわら、劇場映画のコメディ「オースティン・パワーズ・デラックス」(Austin Powers: The Spy who shagged me・1999・米)などにも出ている。

 脚本も書いた監督のマーク・ローレンスは、面白かったサンドラ・ブロックとベン・アフレックのラブ・コメ「恋は嵐のように」(Forces of Nature・1999・米)や、サンドラ・ブロックのアクション・コメディ「デンジャラス・ビューティ」(Miss Congeniality・2001・米)の脚本を手がけた人。サンドラ・ブロックとヒュー・グラントのラブ・コメ「トゥー・ウィークス・ノーティス」(Two Weeks Notice・2002・米)で劇場長編映画監督デビューした。うーん、ラブ・コメ職人という感じか。もうサンドラ・ブロックとは仕事をしないのだろうか。

 公開2日目の2回目、前日に座席を確保しておいて、20分前に着いたらちょうど前回が終わったところ。全席指定。さすがに若いカップルが目立つ。大学生くらいが多く、中高年は1/3くらい。男女比は4対6で女性が多かった。予告が始まったときは540席に4割くらいだったが、それから続々と入ってきて最終的には5.5割くらいの入りに。中高は意外にも高齢者が多かった。

 クラビッツ・ミニッツは相変わらず良くわからないが、気になった予告は……中田秀夫監督の「怪談」の新バージョン。これでようやく落語の「真景累ケ渕」が原作だとわかった。面白そうっていうか、恐そう。

 「ピンポン」(2002・日)の曽利文彦監督の新作「ベクシル」は3D-CGアニメのようだった。2077年、日本が鎖国するというSFらしい。雰囲気は「アップルシード」(2004・日)のような感じ。おもしろそう。「ゲゲゲの鬼太郎」も新バージョンに。期待できそうだ。「パイレーツ・オブ・カリビアン」も新バージョン・上下マスクですごいビジュアルが展開。期待してしまうなあ。

 驚いたのは、「デスノート」。アニメ化が決定し、「L再起動」って一体? 夏撮影開始って、それ実写? 情報が少な過ぎて良くわからなかった。

 上下マスクの「オーシャンズ13」は「2」は酷かったが、「3」はアル・バチーノが出ているので良いのではないだろうか。同じく上下マスクの「ゾディアック」も期待大。「セブン」(Seven・1995・米)のデビッド・フィンチャー監督で、ジェイク・ギレンホール主演。未解決の実話に基づいた連続殺人事件の謎を追うものらしい。暗号はいろいろあるが、予告ではサイファーだと言っていた。太いサイレンサーが印象的。「ダーティハリー」(Dirty Harry・1971・米)のスコーピオンのモデルになったらしい。見たい。


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