Ye yan


2007年6月2日(土)「女帝 エンペラー」

THE BANQUET・2006・中・2時間11分


日本語字幕:手書き書体下、水野衛子/シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル

(香IIB指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://jotei.gyao.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)


907年、五代十国時代の中国、皇子のウールアン(ダニエル・ウー)はワン(チャン・ツィイー)という女性とお互い引かれあっていたが、父の皇帝がワンをめとったことから、舞踏の世界へこもり世間とのかかわりを断ってしまった。ところがある時、父が死んだという知らせとともに刺客がやって来る。命からがら脱出したウールアンは宮廷に向かうが、すでに皇帝の弟、リー(グォ・ヨウ)が皇帝として即位、ワンを皇后に迎えていた。ウールアンは皇太子として受け入れられるが、暗殺の指令を出していたのはリーだった。そして再び刺客がウールアンを襲う。

73点

1つ前へ一覧へ次へ
 皆殺しの映画。あえて一言でいえばそうなるだろう。そして誰もいなくなった……。原作はシェイクスピアの「ハムレット」だそうだが、いかにも昔の中国にありそうな話で、血まみれの権力抗争。日本でもかつてあったわけだが……。

 決して楽しい話ではなく、明るい話でもなく、ただただ美しく、悲しく、切ない。故意だとは思うが、一応ツッコミを入れておくと、女帝はエンペラーではなくエンプレスだろう。

 いずれにしても、ストーリーがそれほど複雑なわけではないのに、中国語の人物名が覚えにくく、人物の関係がわかりにくいので、理解するのに時間がかかった。豪華なセット、豪華な衣裳、撮影、曲は、これぞ映画というほど美しい。対照的に物語はどろどろ。欲望と愛憎がぐちゃぐちゃになっているが、アクション・シーンと舞踏シーンは別な映画かと思うほどスタイリッシュでカッコいい。「グリーン・デスティニー」(Crouching Tiger, Hidden Dragon・2000・米/中)風のカットもある。

 特筆すべきはチャン・ツィイーの美しさと、ダニエル・ウーの二枚目ぶり。そしてアクション・シーンのデジタル・エフェクトで、刀で斬られるとちゃんと衣服が裂けて血がにじみ、そして血が飛び散る、その恐ろしいまでの表現。

 やたら仮面というかお面が出てくる。このデザインがまたいいわけだが、劇中語られるのは、お面は喜怒哀楽すべての表情を隠すと。つまり登場人物のほとんどが自分の本当の感情を隠しているわけで、それを象徴しているのかもしれない。

 気になったのは、猛毒の粉末を爪に隠すところ。耳の穴に吹き込むだけで人を殺せるというのに、爪の間から吸収されないのか。どうも納得できない。そしてラスト、誰が一体? 謎を残して終わるのはどうなんだろう。

 監督はフォン・シャオガンという人。同じ中国の映画監督のチャン・イーモウやチェン・カイコーと似たような絵作りをする。ボクが見た映画では脚本も担当した「ハッピー・フューネラル」(Big Shot's Funeral・2001・中/米)を監督している。あまり笑えないコメディで、パッとしない感じの作品だったが、本作は同じ人が撮ったとは思えないほど良くなっている。ちなみに本作の脚本もフォン・シャオガン本人。

 アクション・シーンが本気で良いと思ったら、アクション監督はユエン・ウーピン。「グリーン・デスティニー」や「マトリックス」(The Matrix・1999・米)、「キル・ビル」(Kill Bill: Vol.1・2003・米)なんかを手がけた人だ。やっぱりうまい。

 圧倒的なまでの美しいセットと衣裳を手がけたのは、香港出身のティミー・イップという人。「グリーン・デスティニー」、ホラーの「ダブル・ビジョン」(Double Vision・2002・香/台/米)、美しさが際立っていた「PROMISE」(The Promise・2005・中/日/韓)を手がけている。

 音楽は尺八も使うなどちょっと日本っぽい感じもしたが(そう言えば兜も日本ぽかった)、中国生まれのタン・ドゥン。手がけた作品は、デンゼル・ワシントンが出たホラー「悪魔を憐れむ歌」(Fallen・1997・米)、アカデミー作曲賞を受賞した「グリーン・デスティニー」、ジェット・リー主演、チャン・イーモウ監督の「HERO」(Hero・2002・香/中)など。うまい。

 ウールアンを演じたダニエル・ウーは、アメリカ生まれのイケメン。ジャッキー・チェンにかわいがられているようで、ジャッキー・チェン作品の出演が多い。仲村トオルも出たヤング・イケメン総出演のアクション「ジェネックス・コップ」(Gen-X Cops・1999・香)、小劇場公開だったので見ていないが「重装警察」(Hit Team・2001・香)、女性アクションの「レディ・ウェポン」(Naked Weapon・2002・香)、「香港国際警察/NEW POLICE STORY」(New Police Story・2004・香)、「80デイズ」(Around the World in 80 Days・2004・米)、つい最近「プロジェクトBB」(Rob-B-Hood・2006・香)にも出ていた。中でも本作はかなりの熱演。

 大臣の息子も中々のイケメン。名前はたぶんホァン・シャンミンという人だろう。今後の作品は注目かも。

 公開初日の初回、銀座の劇場は45分前に着いたら15人くらいの行列。ほとんど高齢者で、男女は半々くらい。40分前に30人くらいになって、若い人は3〜4人に。だいたい女性が若い。列が長くなってきたが案内はなし。自主的に列を曲げる。関係者らしい3〜5人くらいが歩道で待機。

 30分前くらいに窓口が開くが、座席予約などもありなかなか入れない。初回のみ全席自由で、この時点で50人くらい。10分前くらいからカーテンが開いて前方のみ暗くなって案内を上映。最終的には400席の7割ほどが埋まった。

 入場プレゼントがあって、「美麗花茶」というのをもらった。ポストカードよりずっと良い。予告は……「フファンタスティック・フォー銀河の危機」の新バージョンはなかなか面白そう。とにかくSFXがすごい。上下マスクでピクサーの3D-CGアニメ「レミーのおいしいレストラン」はもう期待度、大。キャラクターもかわいらしく、動きがリアルで、すでになんだか感動の予感。


1つ前へ一覧へ次へ