Shooter


2007年6月3日(日)「ザ・シューター 極大射程」

SHOOTER・2007・米/加・2時間05分(IMDbでは124分)


日本語字幕:丸ゴシック体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定)

公式サイト
http://www.shooter-movie.jp/
(入ったら音に注意。全国のチケット発売劇場リストはあり)


スゴ腕の名スナイパー、ボブ・リー・スワガー(マーク・ウォールバーグ)はエチオピアで作戦を遂行中、敵の攻撃により負傷、スポッターの戦友は戦死してしまう。3年後、完全に引退して山奥で隠遁生活を続けるボブのもとに、アイザック・ジョンソンと名乗る大佐(ダニー・グローバー)が現われ、大統領が全米遊説中に長距離狙撃によって暗殺される可能性が高いため、狙撃される可能性の高い都市を特定して欲しいというのだった。

75点

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 試写会で見たが、自腹で払ってもう一度劇場で見た。これは我ながら珍しい。いろいろ映画的な嘘の演出、間違いなどもあるものの、よくできたアクション映画だと思う。

 パターンとしては、陰謀により大統領暗殺犯人に仕立て上げられ、自ら動いて疑惑を晴らし復讐するというもので、昔からよくある感じ。ちょうど10年前にも「最終絶叫計画」(Scary Movie・2000・米)の監督、キーネン・アイヴォリー・ウェイアンズとジョン・ヴォイトが出演したシリアス・アクション「クロスゲージ」(Most Wanted・1997・米)がある(脚本もキーネンが手がけた)。ほとんどそっくり。ただ本作はもっとA級テイトストで、ヒネリが利いている。

 原作はスティーヴン・ハンターの「極大射程」(Point of Impact)。まだ上巻の半分しか読んでいないので、どの程度、映画が原作に忠実なのかはよくわからない。ただ登場人物と粗筋をうまく拾い、映画に向くアクション作品に仕上げられている感じはする。上下巻の大部を2時間の映画よくまとめたものだ。

 スナイパーが主役の映画なので、銃器関係はかなり気を使っている。冒頭のエチオピアで使っているライフルは、どうもM40スナイパー・ライフルにサムホイール・チークピース付きのストックを付けたカスタムのようだ。最新のA3が手に入らなかったのか。どうもスコープも海兵隊仕様のシュミット&ベンダーではない感じ。Dのマークがあったような。ヘリに向けて撃つのは.50口径のバーレットM82A1。なんだか操作が手動みたいになっていたが……。

 相棒のスポッターはM4A1。スポッティング・スコープはリューポルドのMark-4だろうか。だとしたら、ちなみにお値段は1,300ドル(約16万円)。

 山でスワガーが1マイル先のシチュー缶を試射するライフルは、.408口径のチェイタックM200。2kmを越える精度を誇る。ハンドヘルド・コンピューターなどとセットで150万円以上の高級品で、もちろん一般市販はしていない。軍と法執行機関関係のみ。音もリアルで迫力があって、あの反動の感じはまるで実弾を撃っているようだった。ただし、スコープ調整でノブを回すとヘア・クロスが移動するというのは映画的な嘘。

 ボルチモアでスワガーが風速などを測定していた装置はもケストレルのウインド・メーター。赤だったので、たぶん3000というモデル。スナイバーが風を知るのに良く使うらしい。腕時計はデジタルでかなり大きい丸型。何だったのか知りたいなあ。

 警察のスナイパーが使っているのは、たぶんレミントンのM700ポリス。FBIの捜査官はグロック(.40S&W口径ならG22)を使っている。

 後半、FBIのニック・メンフィスとスワガーが使うライフルは、これもレミントンのM700。葉っぱを使ってスプレーし、迷彩模様にするあたりがリアル。スコープはちゃんとミル・ドットのレティクルを使っている。

 山小屋のような車イスの男の家を襲う時、スワガーが使っているピストルはベレッタM92F。ちゃんとウィーバー・スタンスになっていた。M4A1カービンにはドット・サイトを装備。それをさらに襲う奴らはG36なども使用。

 雪山での狙撃では、ライフルにBのマークのスコープがのっていたが、あれはブッシュネルか。嫌らしい男ジャック・ペインを射殺するピストルは、ブラジルのPT92のシルバー。ソード・オフしたショットガンを針金で首に巻き付けているのは「狼たちの午後」(Dog Day Afternoon・1975・米)そっくりの感じ。

 ラスト、スワガーが処刑に使うピストルはガバメント。なぜ銃を換えたんだろう。確実に倒すという意味か。ガバメント(政府)という名前に意味を持たせようとしたのか。

 銃器を担当したのはウェポン・コーディネーターのライアン・ステーシーという人。TVが多いようだが、「アイ、ロボット」(I, Robot・2004・米)や「ブレイド3」(Blade: Trinity・2004・米)のアーマラーもやっている。面白い銃を集めてくる人だ。

 ミリタリー・テクニカル・アドバイザーは、正真正銘の米海兵隊のスナイパー、パトリック・ギャレット。マーク・ウォールバーグをスナイパーの基礎訓練キャンプに入れ、サウスポーのマーク・ウォールバーグを右利きの銃に慣れさせ、さらには1,100メートルでの射撃もやらせたという。監督もそのトレーニングを見ていたたらしい。脚本家のジョナサン・レムキンもスナイパー養成コースに参加しているという。なるほどなあ。リアルなわけだ。だから、嘘の表現はわかってあえてやっているわけだ。すべてリアルにやったら、逆に一般の人にはわかりにくくなることもある。

 監督のアントワーン・フークワは、「キング・アーサー」(King Arthur・2004・米)はともかくとして、フルース・ウィリスとモニカ・ベルッチの「ティアーズ・オブ・ザ・サン」(Tears of the Sun・2003・米)は良かった。

 脚本のジョナサン・レムキンは、キアヌー・リーブスの悪魔映画「ディアボロス/悪魔の扉」(The Devil's Advocate・1997・米)や「レッド・プラネット」(Red Planet・2000・米)を手がけた人。寡作な人のようで、次作も決まっていないようだが、期待できそう。

 FBIのニック・メンフィス役にはマイケル・ペーニャ。「ワイルド・トレード・センター」(World Trade Center・2006・米)で生き埋めになった警察官を演じていた人。ひた向きな感じがこの映画にはピッタリ。

 戦友の奥さん、サラ役は、ケイト・マーラ。主にTVで活躍していた人で、「24」の第5シーズンにも出ているらしい。映画では同性愛を描き話題になった「ブロークバック・マウンテン」(Brokeback Mountain・2005・米)に出ていたらしいが、見ていないので何とも……。

 もう1人の美女、FBIの女性捜査官アローデスを演じたのは、ローナ・ミトラという人。「メラニーは行く!」(Sweet Home Alabama・2002・米)や「ハイウェイマン」(Highwaymen・2003・米)、「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」(The Life of David Gale・2003・米)などに出ている。途中からいなくなってしまうが、最後まで活躍してほしかった。

 ジャック・ペインを演じたのは、イライアス・コティーズ。「コラテラル・ダメージ」(Collateral Damage・2002・米)に出ていた人。ダメな捜査官とか、悪役が多い。こんな嫌らしい役をやらせると抜群にうまい。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は40分前くらいで7人ほど。全員オヤジというや、もうちょっと上の男性。35分前に30人くらいになり、ほとんど中高年男性。オバサンが3人くらい。ここで列が移動させられて、整列。25分前に50人くらいになって、開場。全席自由で、女性が6〜7人。若い男性は5〜6人。

 プレミアム・ビールを買ってきて、乾杯して飲んでいるオジサンが2人。楽しそう。でも長い映画なのにトイレは大丈夫なのか(結局、上映中にトイレに行っていた)。最終的には406席の6割くらいが埋まった。

 暗くなって始まった予告は……警告画面が出てから始まった「呪怨パンテミック」。かなり恐そう。アンドリュー・ラウ監督のハリウッド進出第1作になる上下マスクの「消えた天使」も気になる。リチャード・ギアだし。タイのパン・ブラザースのハリウッド・デビュー作となる「ゴースト・ハウス」も恐そうで、見たい。どんな作品を撮ったのか。ロバート・デ・ニーロが出ているファンタジー、「スターダスト」は楽しそう。ただ、まだ日本語のサイトはない。


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