300


2007年6月9日(土)「300〈スリーハンドレッド〉」

300・2006・米・1時間57分


日本語字幕:手書き書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、米はIMAX版あり)/ドルビーデジタル、dts、SDDS(IMDbではSonic-DDP[IMAX]も)

(米R指定、日R-15指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/300/
(入ったら音に注意。全国劇場案内もあり)


紀元前480年。ギリシア南部のスパルタは、世界征服を企むペルシア軍100万の侵略を受けようとしていた。スパルタの王レオニダス(ジェラルド・バトラー)は、戦争の許しを神から得るべく司祭のもとを訪れるが、祭りの最中であり戦いは許されないと告げられる。最初の動きが遅れれば100万の大群を防ぎきれないため、精鋭300名からなる王のボディーガードと称する個人の軍隊を組織すると、狭い山道でペルシア軍を迎え撃つため、神の許可を得ずに出発する。

86点

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 血みどろの戦いの映画。銃などを使う戦いと違って、棍棒や剣での戦いは見る方にもかなり残虐な感じを与える。しかもCGなどを使い、刃が体に食い込んだり、血飛沫が舞うだけでなく、腕が飛んだり頭が飛んだりと、凄惨なことこの上ない。なのに、気持ちが悪くなったり、嫌な感じがあまりしなかった。戦う男たちの気持ちが良く伝わってきたからだと思う。

 印象としては、ほとんど全編が戦いのシーンだけのような気がするが、実は最前線の戦いと、国もとでの様子とが半々くらいにうまく寄り合わされていて、緩急が実にうまくバランスされているのだ。戦いのシーンでうんざりしそうになる前に、妻である王妃や会議の様子が描かれる。そして動きの少ない銃後のドラマが飽きる前に戦闘シーンに引き戻す。このタイミングが抜群。しかも心情の描き方がうまい。セリフとして口で言うだけでなく、ちゃんと行動でそれを感じさせてくれる。

 そして絵画のような絵の素晴らしさ。色使い、レイアウト、コントラスト、グラデーション……それだけで人を惹きつける魅力を持っている。戦闘という混乱、カオスを1つ1つ調律の取れた美しいアンサンブルのように見せてしまう圧倒的力。これこそ映画というようなパワーを感じさせる。多少CG臭さが透けて見えるものの、微妙なところで嫌な感じはしない。

 映像やSFXだけが先走って、内容はさっぱりという映画も少なくないなかなか、本作は素晴らしいバランスでまとまっている。超人的なモンスターも登場するし、チャン・イーモー監督の「HERO」(英雄・2002・)のような弓矢攻撃、たぶん「スター・ウォーズ エピソード1〜3」(Star Wars・1999〜・米)の新シリーズが完成しただろう大人数による戦闘シーンもある。しかし、前者のようにSFとしないで歴史物としたところが良かったのではないだろうか。

 スパルタの王レオニダスを演じたのはスコットランド生まれのジェラルド・バトラー。最近では「オペラ座の怪人」(The Phantom of the Opera・2004・米)でファントムを演じていた人。あれだと優男な感じだったが、本作では全く正反対。マッチョでりっぱな戦士。まるで別人。さすが役者だが、本作のようなものの方が向いているのではないだろうか。「トゥームレイダー2」(・2003・米)ではララ・クロフトの元恋人役で、アクション満載だったがやはり優男的な扱い。ここまでマッチョではなかった。

 気高き王妃ゴルゴを演じた美女は、レナ・ヘディ。「ブラザーズ・グリム」(The Brothers Grimm・2005・米/チェコ)で気の強い猟師の娘を演じていた人。「地獄の変異」(The Cave・2005・米/独)では教授の助手という役で、美人なだけでいまひとつ目立たなかった。本作では輝いている。

 ペルシアの大王クセスクセスを演じていたのは、ブラジル生まれのロドリゴ・サントロという人。「チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル」(Charlie's Angels: Full Throttle・2003・米)や傑作群像劇「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米)にも出ていたらしいが、ここまでの存在感を示したものはなかったのでは。ちょっとホモセクシャル的雰囲気を持った、美しくて残忍な王を好演している。今後注目かも。

 多くの出演者が、本作では別人のような魅力を発散させているのは特筆に値する。まずメイクや美術といったビジュアルが強烈なのだ。そしてエキセントリックなまでの演出と演技。

 その元となったのが、「シン・シティ」(Sin City・2005・米)で広く知られるようになったフランク・ミラーのグラフィック・ノベル。フランク・ミラー自身は本作で原作のほか製作総指揮も兼ねている。もとは伝説的な史実「テルモビュライの戦い」。

 監督は脚本も兼ねたザック・スナイダー。なんと「ドーン・オブ・ザ・デッド」(Dawn of the Dead・2004・米)で劇場長編映画監督デビューを飾った、いわば新人。それまではミュージック・ビデオやCM界で活躍していたらしい。「ドーン……」との共通点は集団による戦闘ということか。でも同じ監督とは思えないほど、本作はスゴ過ぎる。

 撮影はザック・スナイダーと映画学校で同期だったというラリー・フォン。卒業後もザック・スナイダーと一緒に仕事していたらしい。主にTVで活躍していたらしい。作品としてはついつい先が見たくなる島流しドラマ「ロスト」、「スリープウォーカー」などを手がけている。

 美術(プロダクション・デザイナー)は、ジェイムズ・ビッセル。最近では、ジョージ・クルーニーが監督したモノクロ映画「グッドナイト&グッドラック」(Good Night, and Good Luck・2005・米)や、ホラーの「ザ・リング2」(The Ring Two・2005・米)などがある。

 公開初日の初回、銀座の劇場は50分前くらいに着いたら、ちょうど窓口が開いたところ。初回のみ前席自由で30人くらいの列。史劇ということでか、ほとんど白髪で、若い人は7〜8人。女性は5〜6人というところ。

 30分前くらいから若い人とも増え出して、老若比は半々くらいに。下は15歳くらいからいた。男女比は3:1くらいで男性が多かった。最終的に470席の7.5割くらいが埋まった。なかなか好調な出だし。関係者らしい一団が20人くらいいたが、多過ぎじゃないの。

 気になった予告は……「ハリー・ポッター」が新バージョンに。上下マスクで、なかなかスゴそう。3D-CGアニメの「シュレック3」は、もういいかなと。


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