The Prestige


2007年6月10日(日)「プレステージ」

THE PRESTIGE・2006・米/英・2時間10分


日本語字幕:手書き書体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://prestige.gyao.jp/
(音に注意。入ったら画面極大化。全国の劇場案内もあり)


19世紀末のロンドン。マジシャンのサクラを務めるロバート・アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とアルフレッド・ボーデン(クリスチャン・ベール)は、いつしか自分たちもマジシャンとして大きな舞台に立ちたいと、お互いにライバル心と野心を燃やしていた。そんなある日、マジシャンの助手を務めるアンジャーの妻ジュリア(パイパー・ペラーボ)が、水中脱出中に水死してしまう。アンジャーはボーデンのロープの結び方が原因だと恨みを抱く。それ以降、2人は袂を分かち、ライバルとしてマジックの世界を歩んでいくことになる。

73点

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 マジックのイリュージョンの華麗なというか、夢のような世界を描いた作品かと思いきや、やっぱりクリストファー・ノーラン監督、とてもダークな世界だった。出て来る人たちに良い人がいないというのは、どうなんだろう。しかも主人公たるべき2人が、なんとも悪い奴ら。あまりに度を越していて、引いてしまった。

 主要3人の名前が、Aで始まるアンジャー、Bで始まるボーデン、Cで始まるカッターというのは意図したところがあるのか、それとも名前を考えるのが面倒でアルファベット順にしたのか。

 ノーラン監督の「メメント」(Memento・2000・米)と似た感じで、本作も時間軸はバラバラにシャッフルされていて、わかりにくくされている。ラストの大どんでん返しは、たぶん多くの人がなんとなく中盤くらいで分かってしまうと思う。最初にラストは他の人に言わないでという監督のメッセージが出るけど……。

 おもしろいのは、マジックのビジネスとしての側面が描かれていること。通常はマジックそのものと、その種明かししか採り上げられないが、本作はそこに踏み込んでいる。マジックのネタを考える人がいて、演じるのがうまい人がそれを舞台で演じる。目くらましの美女は単なる助手ではなくて、演者の1人であり、時にはサクラとして客席内にもいるなど、なかなか興味深い。怪しげな人が、怪しげな雰囲気で、それっぽく演じて見せるからマジックはマジックらしくなる。なのほどなあ。

 手品の種明かしとして、ハトを消すトリックは毎回鳩が死んでいたとはショックだった。もちろん今そんなトリックを使ったら動物虐待で訴えられるだろうが、昔は手品をやるごとに殺されていたのだ。これが暗示になっているわけだが……。

 手品に最先端科学を取り込もうとしているのが面白い。当時、直流電流を普及させようとしていた強大な力を持つ発明王ことエジソンと、一時はエジソンの会社につ勤めながら、交流電流を普及させようとしていたテスラという科学者が登場してくる。これが物語に深みを与えている。ただ、これがトンデモな展開につながるので、ここを映画らしいと面白がるか、現実的ではないと否定してしまうかで、評価は変わってくるだろう。

 ヒュー・ジャックマン演じるマジシャンの妻を演じた美女はパイパー・ペラーボ。ダンス青春物語の「コヨーテ・アグリー」(Coyote Ugly・2000・米)で主役を演じていた人。洞窟モンスター映画「地獄の変異」(The Cave・2005・米/独)にも女性隊員で出ていた。

 クリスチャン・ベール演じるマジシャンの妻を演じた美女はレベッカ・ホール。TVを中心に活躍している人で、どうも本作が本格的な映画出演第1作ということらしい。今後注目かも。

 一体どっちのサイドなのか、描き方が中途半端なのが、途中から助手になる美女を演じたスカーレット・ヨハンソン。いまや、あちこちに引っ張りだこという感じ。

 天才科学者テスラを演じたのは、デヴィッド・ボウイ。だんだん貫録が出てきて、こういう役を演じても違和感がなくなってきた。

 その助手を演じたのが、独特の存在感を持つアンディ・サーキス。最近は「キング・コング」(King Kong・2005・ニュージーランドほか)で船のコックを演じていた。同じピーター・ジャクソン監督の「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Ring・2001・米ほか)のゴラム役は有名。

 ヒュー・ジャックマンのサイドのネタを作る役目のカッターを演じたのは、名優マイケル・ケイン。この人が出るだけで説得力が出るというか、重みが増すというか、良くなる。イギリス生まれで、サーの称号を持つ。最近では「トゥモロー・ワールド」(Children of Men・2006・米/英)でいい味を出していた。

 マジックの監修は、デヴィッド・カッパーフィールド。自由の女神を消したり、滝から落下したり、万里の長城を貫通した人だ。なんとプロ・デビューは11歳という天才。

 公開2日目の2回目に、銀座の劇場で座席予約したら、運悪く舞台あいさつのある回。これは混む。しかも映画を見たいという以外の人も来る。マスコミの取材も多いようで(ビデオ・カメラ8台!!)、座席に制限があった。うーん、映画ファンには迷惑な話だなあ。さらには持ち物チェックまで。一般の写真撮影禁止なんだと。

 驚いたことに、ゲストは出演者とかではなく、Mr.マリックとGackt。おかげで8割以上が若い女性。満席。予告なし。やれやれ。


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