13 Beloved


2007年6月11日(月)「レベル・サーティーン」

13 GAME SAYAWNG・2006・タイ・1時間54分


日本語字幕:手書き書体下、風間綾平/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル

(米PG-13指定、日R-15指定)レイトショー公開

公式サイト
http://level-13.jp/
(全国の劇場案内もあり)


サラリーマンのプチット(クリサダ・スコソル・クラップ)は、何をやってもうまく行かない。借金が溜まり、親からは仕送りの催促、営業成績は落ちつ、ついにはクビになってしまう。そんなところへ、突然、携帯に送信者不明の電話がかかってくる。目の前のハエを足下の新聞紙で叩き殺すことができたら賞金1万バーツを口座に振り込むというのだった。叩き殺すと再び電話があり、今のはレベル1で、2に挑戦すれば賞金はさらに増え5万バーツ。そのハエを飲み込めと言う。ゲームはレベル13まで、最終賞金は1億バーツ。途中でやめたり誰かに話すと賞金は全額没収というルールのゲームが始まった。

72点

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 うーん、後味の悪い映画。なんの救いもない。夢オチにしなかったのは偉いと思うが、この結末では途中でたまったストレスがちっとも解消されない。カタルシスがあると思うから、途中の気色悪いことも我慢して見ているのに、それが見事に裏切られる。ただ、この映画のアイディア自体は卓越しているし、現代社会をよく象徴していると思う。各レベルの課題もえげつなくて、想像を超えていて、実に良く考えられている。

 たぶん安直な結末にしたくなかったのだろう。それは良くわかる。ただ、普通にというかハリウッド的に考えると、ラストは良心に目覚めた主人公が、ゲーム主催者に罠を仕掛けたりして、組織自体をぶっ壊したり、主催者を自業自得の目に遭わせる、逆襲するというのがスジだろう。そんな感じを予想してしまう。

 しかしタイは違うのだ。勝手に想像して見ると、映画産業が調子よく経済的にも成長が見られる時期には、概してこういう傾向の作品が見られるのではないか。高度成長期と言われた1960年代の日本にもそういう映画が多かった。1980年代後半から1990年代前半にかけてのバブル期は日本映画がパッとしなかったこともあってか、劇場公開より後に話題が盛り上がった「私をスキーに連れてって」(1987)はハッピーな恋愛映画だが……。

 リアルに作られたウンコまで食べてしまう、イケメンだけれどダメ・サラリーマンを熱演しているのは、アメリカ人の父とタイ人の母を持つアメリカ育ち、ボストン大学出身というインテリ、クリサダ・スコソル・クラップという人。兄と2人でバンドを組み、ミュージシャンとして活動しているらしい。そのかたわら2003年から俳優業もやっていると公式サイトにある。本作をみた限り、俳優向きなのではないだろうか。今後が楽しみ。

 主人公の友人の女性、トンを演じているのは「心霊写真」(Shutter・2004・タイ)で幽霊役を演じたアチタ・シカマナ(「心霊……」ではシカマーナーと表記していた)という人。「心霊……」ではとても美しい感じだったが、本作では役柄もあり仏頂面のイケテない女。変わるもんだ。

 主人公を追う警部には、タイでは有名なマルチ・タレントだというイケメン、サルンヨー・ウォングックラチャン。ただ本作ではキャラクターというかポジションが中途半端で、あまり印象に残らない。

 監督・脚本を手がけたのは、1981年生まれの新鋭、マシュー・チューキアット・サックヴィーラクルという人。タイの名門大学で映画を学んだらしい。本作は早くも全米での配給とハリウッドでのリメイクが決定したという。今後に期待したい。

 原作はタイで人気のコミック「OUT OF CONTROL」だそうで、作者はエカシット・タイラットという人。3つの映画会社が争奪戦を展開したそうだ。

 レイト・ショー3日目、渋谷の劇場は全席指定。あらかじめ座席を確保しておいて20分前に着いたら、ちょうど開場したところ。最終的には221席に20人くらいの入り。平日だからか若い人が多く、中高年は1/4ほど。女性は若い人が3人ほど。

 予告で気になったのは……日本映画の「アコークロー」は、また沖縄が舞台というだけの普通のドラマかと思ったら、そうではなくてホラーらしい。沖縄独特の赤い髪のキジムナーがなかなか恐ろしそう。ただ上映劇場がなあ……。上下マスクの「ルネッサンス」は予告期間が長過ぎ。早くやって欲しいという感じ。

 マット・ディロンと名作恋愛映画「忘れられない人」(Untamed Heart・1993・米)の美女マリサ・トメイが競演するダメ男の話はタイトルを「酔いどれ詩人になるまえに」というらしいが、予告編だけで溜息が出てしまうような類いで……。


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