Zodiac


2007年6月23日(土)「ゾディアック」

ZODIAC・2006・米・2時間37分(IMDbでは米版158分)


日本語字幕:手書き風書体下、杉山 緑/シネスコ・サイズ(デジカム、非圧縮4:4:4、Thomson VIPER FilmStream Camera, Zeiss Digiprime Lenses)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/zodiac/
(入ったら音に注意)


1968年12月20日、アメリカ・サンフランシスコのバレーホで若いカップルが銃撃された。さらに翌1969年7月5日、再び若いカップルが銃撃され、警察署に犯人から犯行声明の電話が合った。さらに8月1日になって3つの新聞社に犯人しか知りえない情報とともに、暗号文が送り付けられ、これを掲載しないとさらに殺人を続けるという。

73点

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 実話の映画化。襲撃シーンが恐ろしく、夢に出そうなくらい。さしたる理由もなく人を殺す恐怖。しかも犯人が捕まらず、迷宮入りしてしまったという事件。映画は新聞社の風刺漫画家を中心に、事件とそれに関わったことによって人生が変わってしまった記者や刑事たちを描いていく。

 正体不明の殺人鬼に対する恐怖と、時代感が見事に描かれている。ただ、長い。前半は誰が主人公かわからない事件と同時進行の群像劇で、後半は風刺漫画家が主人公の謎解き物語へと変わる。まるで同じテーマで作られた2つの作品を足したような印象。あえて言えば、前半は後半のための長いフリのように感じた。そこが、いかがなものか。

 通常、過去の事件を描く場合、ドキュメンタリー風に事件の経過を追うか、探偵か誰かが事件をさかのぼって調べていくか、どちらかのパターンを取る場合が多い。しかし、本作はあえて両方のパターンを取った。だから長い。前半はリアル・タイムで事件が進行。後半はリアル・タイムだが事件を調べてさかのぼっていく。

 ただ雰囲気としては、日本のTVドラマで作られた「3億円強奪事件」のような印象。犯人は限りなく黒に近い灰色だが、結局はわからない。

 後半、ようやく主役として動き出す新聞の風刺漫画家、カートゥニストのロバート・グレイスミスを演じているのは、「ジャーヘッド」(Jarhead・2005・米)でスナイパーを演じたジェイク・ギレンホール。メジャーな作品では「デイ・アフター・トゥモロー」(The Day After Tomorrow・2004・米)で、傑作は何といってもNASAの技師となった男の青年時代を感動的に描いた「遠い空の向こうに」(October Sky・1999・米)だろう。

 身を持ち崩す新聞記者にロバート・ダウニー・Jr。次々と問題を起こしているのに、なぜか仕事が途切れないという人物。きっと性格がとても良いんでしょう。ただ、クセのある役ばっかりになったけど。最近で良かったのはハル・ベリーが出たホラー「ゴシカ」(Gothika・2003・米)だろうか。

 ギリギリまで犯人を追い続けた、最後にはくじける刑事トースキーには、マーク・ラファロ。これまであまり大きな役はなかったようだが、感動刑務所もの、ロバート・レッドアォードの「ラスト・キャッスル」(The Last Castle・2001・米)などに出演。最近ではトム・クルーズの傑作映画「コラテラル」(Collateral・2004・米)の刑事役が記憶に新しい。

 グレイスミスの美しい妻を演じたのはクロエ・セヴィニー。クリスチャン・ベイルの「アメリカン・サイコ」(American Psycho・2000・米)に出ていたらしいが、記憶にない。ニコール・キッドマンの「ドッグヴィル」(Dogville・2003・デンマーク)は何となく記憶にあるような……。

 監督はデヴィッド・フィンチャー。「パニック・ルーム」(Panic Room・2002・米)以来の監督作品になる。気持ち悪さは「セブン」(Seven・1995・米)なみ。とても「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」(The Empire strikes Back・1980・米)に感動して映画界に入った人とは思えない。

 殺人鬼が使う銃は9mmのオートマチックで、劇中ではスーパーXと呼んでいる。ほかに当時のアメリカ警察の標準であったリボルバーや、ガバメントも登場する。.22ルガー、M1ガーランドなどもチラリと。

 このゾディアック事件を題材に作られた映画「ダーティハリー」(Dirty Harry・1971・米)が劇中で上映。あんなふうには解決できないと。ああ、我等がダーティ・ハリーが……。

 一部、明るいシーンでコピー防止のドットが目立った。

 オープニング、WBのロゴマークが古い感じになってノイズが入り、パラマウントのロゴも同様に古い感じで始まるところから、監督のこだわりというか演出が始まっているあたり、なかなかグッド。

 公開2週目の初回、銀座の劇場は全席指定なので、1時間ほど前に着いて、とりあえず前売り券と交換して座席を確保。30分前に戻ったらちょうど開場したところ。ほとんどは中高年で、男女比はほぼ半々。20代らしき女性が2人ほどいた。中年夫婦が目立つ感じ。最終的には540席の3.5割ほどが埋まった。2週目でこれくらい入るのは良い方ではないだろうか。

 予告編では、3D-CGの日本映画「ベクシル」が新バージョンの予告で、なかなか素晴らしい絵。「オーシャンズ13」も新予告で、酷かった「2」よりはまともそう。アル・パチーノが出ているし。しかもシネスコでの予告。いい感じ。


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