Valley of the Wolves: IRAQ


2007年6月23日(土)「イラク ―狼の谷―」

KURTLAR - IRAK・2006・トルコ・2時間02分


日本語字幕:手書き書体下、桜井 文/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル

(英15指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://www.at-e.co.jp/ookami/
(全国の劇場案内あり)


イラク北部クルド自治区で、アメリカの同盟国であるはずのトルコ軍がテロリストとしてアメリカ軍に捕らえられた。元トルコ諜報部員のポラット(ネジャーティ・シャシュマズ)は同士とともにアメリカ人が経営するホテルに向かい、爆弾を仕掛けて脅し、米軍を影で操るサム(ビリー・ゼイン)を呼び出す。

70点

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 こういう映画が公開されるだけでも珍しい。アメリカが悪者の映画。日本を含む世界各国でアメリカが悪者の映画は作られているわけだが、たいていは自国のみでの公開で終わる。それが外国でも公開されるとは。

 特に興味深いのは、親米国のトルコがアメリカを悪者として描いていること。しかも実際に起きた事件を巧妙に取り入れ、アメリカの有名俳優まで使って映画化していること。これには驚かされる。

 ただし、映画の出来としては、あまりレベルが高くないように感じる。劇場公開もされず、いきなりDVD発売されてしまうようなB級のレベル。母国では大ヒット作品らしいが、これがトルコ映画の標準的なレベルかどうかは別として、作品のコンセプトというか構成がウケただけで作品が出来が良かったというのではないのではないだろうか。アクション・シーンなどもっとカッコ良く撮れるはずなのに、どこか古くさい感じも。予算が少なかったということもあるのだろうが……。

 ハリウッドから参加している有名俳優は2人。悪役の多いビリー・ゼインとゲイリー・ビジー。米軍を悪事に利用しているサム役のビリー・ゼインは、「山猫は眠らない」(Sniper・1992・米)の新米スイパーや、「タイタニック」(Titanic・1997・米)のケイト・ウィンスレットの婚約者を演じた人。本作でも、不敵な雰囲気を漂わせた憎たらしい悪役を見事に演じている。

 ゲイリー・ビジーは「ビッグ・ウェンズデー」(Big Wednesday・1978・米)で、ジャン=マイケル・ヴィンセントやウィリアム・カットらと一緒にブレイクした人で、その後「リーサル・ウェポン」(Lethal Weapon・1987・米)や「プレデター2」(Predator 2・1990・米)、「沈黙の戦艦」(Under Siege・1992・米)などで活躍したものの、薬物中毒でいろいろと問題があったらしい。どうにか克服したらしいが……最近は日本公開作が少なく、最後に見たのはSFアクションの「ソルジャー」(Soldier・1998・米)か。

 やたらまぶしそうな表情ばかりしているコテコテ演技の主役らしい人物は、ネジャーティ・シャシュマズという人で、2003年からのTV版「狼の谷」にポラット役で突然抜擢されたそうで、それまで演技経験はないらしい。どうりで……。それで映画版でも主役を演じることになったのだとか。トルコでは国民的スターらしい。おそらくヒロイン、レイラ役の女優もトルコで有名なスターではないだろうか。

 トルコの精神的指導者ケルクーキ導師を演じたのは、ハッサン・マスードという人。リドリー・スコット監督のパッとしなかった史劇「キングダム・オブ・ヘブン」(Kingdom of Heaven・2005・米)でイスラムの指導者サラディンを演じていたらしい。

 監督はセルダル・アカルという人。公式サイトにも紹介がなく、アメリカで公開されていないので(当然だろう)IMDbにもデータがない。演出がTVッぽい感じがしたので、TV版を手がけた人がそのまま劇場版も手がけたのではないだろうか。

 米軍役の多くは、どうも現地のエキストラらしく、アメリカ人に見えない。また装備も軽装過ぎるような感じがしたが、どうなのだろうか。銃はM16A1となぜかG36。AKも混じっていたが、特殊部隊などは積極的に使ったらしいので、間違ってはいない。トルコ側はMG3(MG42の現代版)を装備。狙撃に使うスコープ付きのライフルは、ボルト・ハンドルの形がシュタイアーっぽかった。車載の.50口径の重機関銃は、形が単純化された奇妙なもので、ひょっとしたら純粋なプロップ・ガンかも。ビリー・ゼインはS&Wの2インチ・リボルバーらしかった。

 車は高級車がベンツで、一般的なピックアップ・トラックなどの車はニッサンだった。なるほどなあ。

 公開初日の2回目、10分前に着いたらすでに開場済み。最終的には177席に3.5割ほどの入り。1/3くらいが若い人で、あとは中高年。ほぼ男性で、オバサンが少々。

 気になった予告編は……アントニオ・バンデラスがダンスの先生になる「レッスン!」は意外に面白そう。ただ劇場が……。ちょっとヒラリー・スワンクの学校教師もの「フリーダム・ライターズ」とダブッている気がしないでもない。ガッカリだった「オープン・ウォーター」の続編「オープン・ウォーター2」が公開されるらしい。なぜ? 理由がわからない。ウケていないのに。中国映画「幸せの絆」は、タイトルが何だかウィル・スミスの「幸せのちから」みたいだが、予告編だけで泣けるような映画。そしてちょっと落ち込んだ。うーん。これは……。


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