Tsuki-Gami


2007年6月24日(日)「憑神(つきがみ)」

2007・東映/ホリプロ/東映ビデオ/住友商事/TBS/TOKYO FM/AHS・1時間47分


ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル



公式サイト
http://tsukigami.jp/index.html
(全国の劇場案内あり)


幕末の江戸。同級生に出世され、婿養子先からは離縁されてしまった別所彦四郎(妻夫木聡)は、ニ八そば屋の甚平(香川照之)から、向島の「三囲稲荷」にお参りしてはどうかと勧められる。そんなとき、酔っぱらって「三巡稲荷」を見かけ、同じ「みめぐり稲荷」と思ってお祈りしてしまう。すると翌日、貧乏神(西田敏行)が現われる。

71点

1つ前へ一覧へ次へ
 コメディ要素満載なのに、コメディにし切れず“まじめ”に仕上がってしまったような印象。SFXの使い方も古いし、メイクも顔に絵を描いたようなレベル。狙いなのか、演出や構成も古くてコテコテな感じ。ギャグも笑っていたのはほとんど高齢者のみ。ラストは感動的だが、そこだけで全体からくるものではない。

 主題歌が上映前から流れていたのだが、どうもどこかで聴いたような曲。米米CLUBの「御利益」。何回も繰り返しかかるので、とても気になった。英語の曲にあったようなフレーズが……。

 音もドンシャリで、ちょっと耳障りな感じ。カンに障る。

 ギャグの部分では大げさなアクションで、ほとんど笑えない。香川照之演じるニ八そば屋の甚平はお笑いキャラなのだろうが、なぜ彼が身分を越えて侍である別所彦四郎に尽くすのか良くわからないし、存在があざと過ぎて受け入れがたい。

 もう1人のお笑いキャラ、佐々木蔵之介演じる主人公の兄である別所左兵衛がかろうじておもしろいくらいで、西田敏行演じる伊勢屋こと貧乏神も、佐藤隆太演じる主人公を兄のように慕う小文吾も、わざとらし過ぎていけない。

 いいキャラクターは主人公の別所彦四郎だが、これは演じている妻夫木聡の個性というか持ち味によるところが大きい感じだし……。その別れた妻役、笛木優子は清楚な感じで、とにかくキレイ。ユミンの名で韓国でも活躍していたという変わり種。ただキス・シーンはいただけない。好き同士のキスじゃなくて、本当に嫌で形だけ作ったようなキス。こんなのだったら入れない方が良かったのに。でも今後の活躍に期待したい。

 特殊メイクもガッカリで、憑神が水鏡に写ると正体が露となるのだが、それが顔にペンキで描いたようなメイク。香取慎吾の「西遊記」並み。いまの時代にこれはないだろう。

 これはないだろうと言えば、憑神が消える処理も古い。今だったらカメラが動いていて、消える人物が歩いていても、自然に消すことが出来るはずなのに、アナログ時代に逆戻りしたかのような、その人の動きが止まってそれから消えていくという不自然さ。

 ラストも、ジェット機が飛んで現代になって、原作者の浅田次郎が出てくるというのは、どうなんだろう。すっかり興ざめの気がした。

 妻夫木聡は「どろろ」(2007)が良かった。注目され始めたのは「ウォーターボーイズ」(2001)あたりからか。大予算映画「ドラゴン・ヘッド」(2003)の主役などを経て、いまやすっかり売れっ子。

 その兄役は佐々木蔵之介。独特のいい味を持っていて、本作でも笑える数少ない登場人物。「県庁の星」(2006)も良かったし、見ていないが「間宮兄弟」(2006)もかなり評判良かったようだ。

 その母を老婆のようなメイクで演じて見せたのは、やっぱり最近名女優としてすっかり定着してしまった感のある夏木マリ。「ピンポン」(2002)のオババは素晴らしかったし、宮崎アニメ「千と千尋の神隠し」(2001)の湯婆は秀逸だった。今や名わき役として描かせない存在。

 監督は脚本も手がけた降旗康男。1934年生まれというから70歳を超えている。「新網走番外地」などのヤクザものシリーズを手がけ、1970年代後半はTVで、話題となった山口百恵の「赤シリーズ」を監督している。1980年代から再び映画に戻り、高倉健の名作「駅 STATION」(1981)、「仕掛人梅安」(1981)、再び高倉健と組んだ「居酒屋兆治」(1983)、など話題作が続く。最近作には浅田次郎原作・高倉健主演の感動作「鉄道員(ぽっぽや)」(1999)などがある。

 絵は、天気が良い時コントラストもくっきりし、色も力があったが、やははり曇りだとコントラストが低くなるようだ。それでも様になる絵を撮っていったのは、名匠・木村大作。降旗康男監督との仕事が多いようだが、「極道の妻たち」シリーズや、古くは「日本沈没」(1973)や「八甲田山」(1977)、「復活の日」(1980)などを手がけている。

公開2日目の初回、銀座の劇場は60分前に着いたら10人くらいの行列。男性は2〜3人、若い女性3人くらい、あとはほぼオバサン。舞台あいさつは初日だったというのに……。間もなく案内があって整列。50分前に再び案内があって、この時点で30人くらいに。そして40分前、早くも開場。嬉しい。2F席無しの全席自由。

 最終的には510席に6割くらいの入り。多いのか2日目にしては少ないのか、よくわからない。男女比は4対6くらいで女性が多かった。若い人は全体の1〜2割程度。妻夫木なのに……西田敏行ファンか。

 気になった予告編は……期待していた「怪談」は、内容がわかるものになってきたら、なんだか普通の印象。ティーサー予告の時は、何か違うものを予感させたのに……。またまた浅田次郎原作の映画「オリオン座からの招待状」の予告は、SFかと思ったら、なんだか「ニュー・シネマ・パラダイス」(Nuovo Cinema Paradiso・1989・伊/仏)か「マジェスティック」(The Majestic・2001・米)のような印象。オリオン座とは映画劇場のことで、それを復興させる話らしい。レトロ路線のわかり切った物のような気もするが、ちょっと期待してしまう。


1つ前へ一覧へ次へ