Hollywoodland


2007年6月24日(日)「ハリウッドランド」

HOLLYWOODLAND・2006・米・2時間06分


日本語字幕:手書き書体下、菊地浩司/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル、dts



公式サイト
http://www.movies.co.jp/hollywoodland/
(入ったら音に注意)


1959年6月16日、ハリウッドの自宅で「スーパーマン」の役者ジョージ・リーブス(ベン・アフレック)が死んだ。警察は自殺と断定したが、母親(ロイス・スミス)は信じず、私立探偵のルイス・シモ(エイドリアン・ブロディ)に捜査を依頼する。

76点

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 この時代の雰囲気、曲、クラシック・カー、ハリウッド中にあっただろう空気感、多くの人がタバコを吸い、そして探偵もののちょっと斜に構えたハードボイルドな感じ……それらが素晴らしい。かつて起こった事件と、それをたどるような現在の探偵の捜査とが同時進行するのは、探偵ものの定番ながら、名作ハードボイルド・ミステリを彷彿とさせる作り。

 実話の映画化で、有名な映画会社やスター、プロデューサー、監督などが実名で登場する。日本だったらこういう映画ははたして撮れるだろうか。それを考えてもすごい映画。しかも多くのスターが出演していて、かなりの大作となっている。

 事件の真相を探ろうとすることは、結局多くの人のスキャンダルを暴くことになり、それはそれであまり気分の良いものではない。だから本作もやっぱり気分の良いものではない。そして本作は自殺説とも他殺説とも断定していない。

 意外に興味深かったのは、スーパーマンの衣裳は青いタイツに赤いパンツだったが、TVではモノクロ放送だったので、実際には灰色と茶色のような地味な衣裳で撮影していたということ。そうだったんだ……ちょっぴりガッカリ。

 とにかく落ち目の私立探偵のルイス・シモを演じるエイドリアン・ブロディがいい。ちょっと倦怠感を漂わせながら、しかし一度食いついたら絶対に放さない犬のような、ハード・ボイルルドものにピッタリの雰囲気を醸し出している。どうしても「戦場のピアニスト」(The Pianist・2002・仏/独ほか)のような弱いキャラクターをイメージしてしまいがちだが、どうして細身で優しい顔立ちでもりっぱにハード・ボイルドを演じることが出来るのを証明して見せた。

 スーパーマン役者ジョージ・リーブスを演じたベン・アフレックも良い。オーディションでやっと手に入れた仕事なのに、子供向けで演技力が評価されず、固定イメージが出来てしまって他の仕事が得られないジレンマ。しかも映画会社の重役の奥さんに家も与えてもらい、飼われているような状態。それを悩む感じが良く出ていた。

 その重役の奥さんを見事に演じたのがダイアン・レイン。「パーフェクトストーム」(The Perfect Storm・2000・米)以来見かけなかった気がするが、さすがにうまい。男を手玉に取る感じが抜群。

 その亭主、エディ・マニックスを演じたのは、ボブ・ホスキンス。やり手重役の恐さが良く出ている。「ダニー・ザ・ドッグ」(Unleashed・2005・仏/米)でも恐かったが、コメディもいける人。どちらかというと初期はコメディ系の作品の方が多かったようだが、最近はすっかり悪役のイメージ。

 探偵のルイス・シモの奥さんを演じたモーリー・パーカーは清楚な美女。作品はいまいちだったが「アドルフの画集」(Max・2002・加/独ほか)で目立っていた女優さん。やっぱりね。いい感じだ。

 そしてもう1人、探偵のルイス・シモの秘書、キット・ホリデイを演じたカナダの女優さん、カロリン・ダヴァーナもなかなかの美女。「クールボーター」(Out Cold・2001・米)に出ていたらしいが、見ていないので何とも……。今後期待したい。

 自殺に使われた銃はルガーP08の4インチ。子供たちは自殺という事実だけでも大ショックなのに、それがナチスの銃だったと言ってさらに嘆く。弾痕は床に1発、そしてこめかみにあったという。

 公開9日目の2回目、銀座の劇場は全席指定で、前日に座席を確保しておいたので10分前に到着。すぐに半分ほど暗くなって劇場案内が始まった。男女比は4対6くらいで女性の方が多く、ほぼ中高年。1/4くらいが若い人。

 3館あるうちの一番見にくい劇場での上映。せめて座席が千鳥配列なら良いのだが、前の席に人が座ったらほとんどスクリーンの下は見えない。スクリーンの下には字幕が出る。かくして字幕が良く見えずストレスがたまることになる。う〜ん。つらい。でかい人だったら最悪。しかも全席指定だから移動できない。

 最終的には192席に6割くらいの入り。良かった、あまり混まなくて。真ん前の席は空いていた。助かった。

 予告編は……上下マスクの「ボルベール〈帰郷〉」は予告編だけで気が重くなった。どうなんだろう。詳細は不明だが「大統領暗殺」という映画もあるらしい。現役の大統領ブッシュ暗殺の話らしい。実話だと言う上下マスクの「サルバドールの朝」はスペインのフランコ政権下の事件を描いたものらしい。暗く辛い……予告だけで落ち込んだ。こういうのは苦手だ。Webサイトはないようだ。

 マイケル・ムーアの新作「シッコ」も公開が近いようだ。アメリカの医療問題と言うことだが、興味はある。ただ予告はカットが早く目が痛くなった。イランでは女性はサッカー観戦できないというキャッチで始まった「オフサイド・ガールズ」、これもショッキングだった。こんな国があるんだ。「長江哀歌」もまた暗い話。2006年のベネチア国際映画祭グランプリ作品らしいが……。「リトル・チルドレン」は「タイタニック」のケイト・ウィンスレット主演で、満たされない大人たちを描いたものだとか。うーん、どうなんだろう。この劇場は暗いものばっかりか。「魔笛」と「フリーダム・ライターズ」は面白そうだが。


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