Confession of Pain


2007年7月14日(土)「傷だらけの男たち」

傷城・2006・香・1時間51分(IMDbでは香港版110分)


日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、Arriflex、Moviecam)/ドルビーデジタル

(香IIB指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://drywhisky.com/index.html
(音に注意。全国の劇場案内もあり)


3年前に恋人に自殺され警察をやめたポン(金城 武)は私立探偵となったが、ショックからアル中となっていた。しかし元上司のラウ(トニー・レオン)は彼を心配しときどき会い、友情は続いていた。そんなある日、ラウの新妻スクツァン(シュー・ジンレイ)の億万長者の父チャウが強盗に襲われ惨殺される事件が起きる。さらに犯人たちは仲間割れし、お互いを殺し合い相打ちで果てて見つかる。警察は犯人死亡のまま強盗殺人として処理したが、スクツァンは納得できず、ポンに事件の再捜査を依頼する。

74点

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 「インファナル・アフェア」(無間道・2002・香)っぽい映画。過去の事件が現在に深くつながり、正と見えた人間が悪だったりして、それぞれが自分の人生を清算しなければならなくなる。うーん、これは辛い。それと文字数制限と中国語敵表現とのギャップもあるのだろう、日本語字幕のセリフがいかにもセリフっぽく、しかも香港映画伝統の吹替もあってか、セリフと演技の間にちょっとギャップがある感じが……。

 もちろん、感動作には間違いない。切ないラブ・ストーリーで、友情物語で、復讐劇……人を呪わば穴二つ、というところ。探偵=アル中というのはベタな感じもするが、ちゃんとフリがあってろくに飲めない時に「酒はなぜ、うまいんだろう」と聞く。すると「飲みにくいからさ」という答え。これが何度か映画の中で使われている。ウイスキーのうんちくもある。

 夜のシーンは、マイケル・マン監督の「コラテラル」(Collateral・2004・米)っぽい。かなり影響を受けたのではないだろうか。とはいえ、絵は大変美しく、香港の夜を見事に捕らえている。フィルム撮影なのに素晴らしい。

 ラウの妻を演じたのは、中国北京出身のシュー・ジンレイという人。ボクが見たのは「ヒロイック・デュオ 英雄捜査線」(双雄・2003・香)だけだが、ちょっと印象に残っていない。でも、本作では良い感じ。

 ビール会社のプロモーション・ガール、つまりバド・ガールのようなことをやっている一見お手軽女風のフォンを存在感たっぷりに演じているのは、スー・チー。最近では「トランスポーター」(The Transporter・2002・米/仏)と「クローサー」(So Close・2002・香/米)が良かった。香港・タイ合作映画の「the EYE2」(The Eye 2・2004・タイ/香)は今ひとつだったが。トニー・レオンとはたぶんスー・チーの出世作、ジャキー・チェンの「ゴージャス」(Gorgeous・1999・香)で競演している。おねえマン役のトニー・レオンがおかしかった。

 監督は2人で担当していて、どちらも「インファナル……」を手がけたアンドリュー・ラウと、アラン・マックの2人。2人は「頭文字[イニシャル]THE MOVIE」(INITIAL D・2005・香/中)でも共同監督している。アラン・マックはフェリックス・チョンとともに脚本も担当しており、フェリックス・チョンは「インファナル……」のほかに面白かった「東京攻略」(Tokyo Riders・2000・香)も書いている。

 アンドリュー・ラウは撮影監督出身で、とても良かった韓国映画のアクション・ラブ・ストーリー「デイジー」(Daisy・2006・韓)も監督していて、ちょっと前では、瀬戸朝香主演の傑作「バレット・オブ・ラブ」(Bullets of Love・2001・香)も監督している。新作はハリウッドで撮ったリチャード・ギアとクレア・デインズの「消えた天使」(The Flock・2007・米)が控えている。今後も大期待だ。

 ちなみに、撮影監督はライ・イウファイとともにアンドリュー・ラウが担当している。

 銃器特殊効果を担当しているのはプロップ・カンパニーというところらしい。時々名をみるので、香港では大手なのかも。撃っているのは、たぶんS&WのM36チーフのみ。最初と最後に発砲される。始まりがクリスマスで、終わりもクリスマス。銃声が響く。誓っている革のホルスターがえらく年季が入っていたりする。もちろん刃物と鈍器も恐い。そして血糊は黒っぽく、リアル。

 全体に使われている曲がオシャレ。海外市場を意識してのことだろうか。ちょっとハードボイルドというか、大人の雰囲気。音質もいい。ラストの曲は日本語の歌だが、Avexが資本参加しており、日本公開版だけなのかどうかは不明。

 ハリウッドが映画化権を獲得したという。公開は2009年らしい。レオナルド・ディカプリオが出演するらしいが、誰がメガホンを獲るのだろう。

 公開2週目の初回、銀座の劇場は50分前に着いたら窓口は開いていた。2館共通なので、もう一方の劇場の都合だろう。台風が近づいている日で、ロビーで待てたのは嬉しい。

 30分前くらいに開場となり、この時点で25人くらい。オバサンが多く、男性は6〜7人。初回のみ全席自由で、次第にオヤジや母娘連れ、30代くらいの男性も増え、最終的には183席に8.5〜9割くらいの入りは立派。

 気になった予告編は……さすがに上映日が近づいてきたので新バージョンになった上下マスクの「トランスフォーマー」は面白そう。シンプルなものほどマイケル・ベイ監督は実力を発揮するだろうが、どこまでやってくれるか。ヒラリー・スワンクの「フリーダム・ライターズ」は、かなり重いテーマ。ただの暗い映画じゃないと思うが、見たいの半分、パスしたいの半分。3D-CGアニメで上下マスクの「サーフズ・アップ」も、ティーザーから新予告へ。とにかく絵が素晴らしい。いま前売り券を買えばフィギュア付き携帯ストラップがもらえるらしい。ちょっとキャラクターは「ハッピー・フィート」とダブっている気もするけど。同じく上下マスクの「バイオハサード3」は同じティーザー予告。まったくなんだかわからないが、期待はさせる。監督は「スナイパー/狙撃」(Silent Trigger・1996・英/加)や「タロス・ザ・マミー」(Talos the Mummy・1998・米)のラッセル・マルケイなので、ハマれば期待できるかも。


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