The Magic Flute


2007年7月15日(日)「魔笛」

THE MAGIC FLUTE・2006・英/仏・2時間19分(IMDbでは135分)


日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビーデジタル



公式サイト
http://mateki.jp/
(入ったら音に注意。画面極大化。全国の劇場案内もあり)


第一次世界大戦のヨーロッパ戦線。タミーノ(ジョセフ・カイザー)は毒ガスに襲われ気を失ってしまう。しかし、そこへ夜の女王(リューボフ・ペトロヴァ)から遣わされた3人の看護婦(テゥタ・コッコ、ルイーズ・カリナン、キム=マリー・デイヴィス)が現われ命を救われる。そして3人の看護婦は夜の女王からの、邪悪な男ザラストロ(ルネ・パーペ)にさらわれた娘パミーナ(エイミー・カーソン)を救ってくれという伝言と、パミーナの写真を見せられる。ひと目で恋に落ちたタミーノは、三人の少年の導きによりザラストロの城へ向かう。

70点

1つ前へ一覧へ次へ
 モーツアルトが生涯唯一、庶民のために書いたという歌芝居が原作だそうで、舞台は第一次世界大戦に置換られているが、基本的には曲も歌詞もそのまま(全22曲)使っているので、どうにも話がかみ合わない。夜の女王、暗黒卿、魔法の笛、沈黙の試練、火の試練、水の試練……というのは、近代ではなく中世以前に相応しい。大胆な試みではあると思うけれど、それならば、やはり舞台に相応しい新解釈で設定も変えないとなじまないと思う。139分は3時間くらいに感じられるほど長く、またオペラ鑑賞の素養のないボクには、映画としては退屈で眠くて、眠くて……。

 もちろん、いかにも映画といった手法はいろんなところに使われているし、テジタル・イフェクトも満載。すばらしいビジュアルを作り出してはいる。戦車に乗って登場する夜の女王というのも面白かった。しかし……。

 監督は「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(Harry Potter and the Chamber of Secrets・2002・米)にも出ていたケネス・ブラナー。脚本も書いている。最近の監督作品ではシェイクスピアのミュージカル「恋の骨折り損」(Lover's Labour's Lost・2000・仏/英/加)がおもしろかった。本作にも出演しているらしいが、どこにいたのかわからなかった。

 出演者のほとんどは、ザラストロ役のルネ・パーペ、夜の女王のリューボフ・ペトロヴァ、タミーノ役のジョセフ・カイザーなど、オペラ歌手。映画ファンにはなじみが薄い。タミーノが恋するパミーナは新人らしいが、映画にはどうなのか。いまひとつタミーノが恋する気持ちがわからないというか、伝わってこなかった。

 狂言回し的なおとぼけキャラのパパゲーノ役のベン・デイヴィスも新人のようで、オペラ歌手っぽくなくて良かったが、どうにもダメなやつで共感できなかった。

 やはりオペラ好きな人、「魔笛」を知っている人向けで、ああこんな舞台設定も面白いねという人でないと難しいと思う。映画になると、ここまで表現できるんだ、とか。

 銃器はライフルはどうもリー・エンフィールドではなかったようだが、リボルバーはウェブリーの中折れ式リボルバー。マズル・フラッシュが炎のような感じだったが、舞台的な演出か。軍服は敵味方ともイギリス式で、青と赤で対比させている。敵はドイツという安直な手は、正邪が逆転するこの物語では使えなかったのだろう。また、いかにも軍服では、きな臭過ぎるし。

 公開2日目、銀座の劇場は初回のみ全席自由で座席が確保できなかったため、台風が接近していたものの1時間前に到着。2館での上映で、もう1館はすでに開いていたので、そちらのロビーで待たせてもらえて助かった。

 20分前に開場し、ほとんどは中高年。男女比はほぼ半々。スクリーンはシネスコであいていた。女性に若い人がチラホラ。10分前から案内を上映。下は小学生くらいの子連れからいたが、子供に楽しめる作品か。最終的には224席に8割くらいの入り。こんなにオペラ・ファンが多いとは意外。

 あいかわらずキューピーのCMは意味が良くわからないが、気になった予告編は……マイケル・ムーア監督の「シッコ」は、またまたた問題作らしい。ただ日本人的にはどうなのか。アメリカの医療の問題ということらしい。


1つ前へ一覧へ次へ