Renaissance


2007年7月16日(月)「ルネッサンス」

RENAISSANCE・2006・仏/英/ルクセンブルグ・1時間46分(IMDbでは香港版110分)

(英語吹替版での上映)

日本語字幕:手書き書体下、松岡葉子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(仏U指定、英15指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://www.renaissance-movie.net/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)


2054年パリ。世界的な企業のアヴァロン社の女性研究員イローナ(声:ロモーラ・ガライ)が誘拐された。カラス警部(声:ダニエル・クレイグ)はチームを率いてさっそく捜査に当たる。まず姉スピレーン(声:キャサリン・マコーマック)に会うと、誘拐前にイローナはアヴァロン社のムラー博士(声:イアン・ホルム)に会っていたことを聞き出す。そしてアヴァロン社の最高経営責任者ダレンバック(声:ジョナサン・プライス)が関わっているらしいことがわかるが……。

76点

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 何たるビジュアル。白黒、それもほとんど白と黒の2色だけでキャラクターを表現するという手法は、実にリアルな別世界を垣間見せてくれる。106分間、自分が刑事になったハードボイルドの夢を見ているような感覚。アニメとも実写とも違った独特の世界観。SFやハードボイルドにピッタリと合っている。

 ビジュアルは斬新で独創的な感じ(アップルのCMっぽい感じがしないでもないが)だが、設定や雰囲気、ストーリーは日本のアニメ、押井 守作品「攻殻機動隊」(1995・日)や「イノセンス」(2004・日)そっくり。さらに大友克洋の「AKIRA」(1988・日)も入っている。カラスは「攻殼」のバトーそっくりだし、SWATのデザインは「ケルベロス 地獄の番犬」(1991・日)というか「紅い眼鏡」(1987・日)のプロテクト・ギアそっくで、透明化するステルス・スーツは「攻殼」の光学迷彩だろうし、早老症(プロジェリア症候群)は「AKIRA」のタカシらと同じ。なぜか警察のマークはKで、ケーサツのことかと思ったが、フランス映画だった。重要な鍵を握る人物は日本人。フランスでは日本のアニメが大人気らしい。

 時代設定も「攻殼」の2029年と「AKIRA」の2019年に似ている。もちろん雰囲気は「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香)とも共通する。こちらも2019年の世界。ただ2019年は今となっては至近の未来で、予想が付いてしまうことから2054年くらいになったのだろう。

 面白いのは、白黒にしたことによって、ディテールの省略と描き込みの両手法を使い分けていること。人物の顔や手足などはディテールを省略し、ほとんど白黒ニ値で描かれている。ところが、背景、煙などはグレーの階調を使って写実的に表現している。

 モーション・キャプチャーを使ってキャラクターを表現しているので、印象としてはまるで実写撮影したものをアップルのiPodのCMのようにハイコントラストのモノクロ処理したもののように見える。しかし実際には省略と描き込みのテクニックを使い分けてバーチャルに再構築したものなのだ。それがすごい。

 英語版の声優は実に豪華。こういう人たちがやってくれるというのは、やはり作品の力なのだろう。

 銃器は未来世界ということで、実在しないデザインとなっているよう。オートはUSP風だが、リボルバーは角張っていてウソ臭い。ちょっと残念。どこか玩具っぽいのだ。

 監督&デザイン原案はクリスチャン・ヴォルクマンという人。高校時代をアメリカですごし、その後フランスでグラフィック・デザインを学んで映画の世界に入ったという変わり種。

 オリジナル・ビジュアル・コンセプトはマーク・ミアンス。1999年にクリスチャン・ヴォルクマンらと出会って本作品の企画がスタートしたらしい。3D監督はガッカリの「ゴッド・ディーバ」(Immortel Ad Vitam・2004・仏)でセット・デザインを手がけた人だそうだが、本作では良い。ガラス張り(?)の床など秀逸。

 タイトルの文字の見せ方も素晴らしい。個々のアルファベットが波打つように落ちてきて、集まって文字になる。ただれが担当したかは不明。

 プログラムは白と黒の二冊セットでなんと1,500円。欲しいけど……これは高い。DVDの特典付きに期待しよう。

 公開3日目の初回、渋谷の劇場は70分前に着いたらオヤジが2人。60分前には10人くらいになったが、全員が男。5〜10分おきに案内があったものの、結局は30分前になるまで開場はしなかった。その時点で女性は1割ほど。老若比は若い人が1/3くらい。

 初回のみ全席自由で、入れ替え制。最終的には女性と若い人も増え、女性3割くらいに。老若比も4対6と逆転。221席に7割ほどの入り。これはなかなか。ただ、千鳥配列の席で床にも傾斜が付いているのに、前の席に座ったヤツが背もたれに背を付けないで座ってるヤツで。スクリーンと字幕が見づらいという悲しいことに。ちゃんと座れよなあ。

 気になった予告は、ヒュー・ジャックマンの「ファウンテン」は見たいけど微妙な線で、劇場がなあ……。「酔いどれ詩人になる前に」はボクの見たくないタイプの映画なのだが、マリサ・トメイが出ているということだけで気になる。マリサ・トメイといえばクリスチャン・スレーターと共演した傑作ラブ・ストーリー「忘れられない人」(Untamed Heart・1993・米)のヒロイン。その後あまり活躍していないようなので気になって……。

 「封印殺人映画」はドキュメンタリーで、血まみれ映画を作った人々へのインタビューでまとめられているらしい。興味津々だが、レンタルが出たらそれでも良いかも。問題は近くにレンタル屋がないことだけど。


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