Ocean's Thirteen


2007年8月12日(日)「オーシャンズ13」

OCEAN'S THIRTEEN・2007・米・2時間02分


日本語字幕:手書き風書体下、菊地浩司/字幕監修:アビー・ブラウン/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/oceans13/
(入ると画面極大化。音に注意)


オーシャンズの1人、ルーベン(エリオッド・グールド)が、ダマシで有名なホテル王のバンク(アル・パチーノ)にだまされ、ラスベガスの一等地のホテルの権利を奪われ、自身は心筋梗塞で危篤状態となってしまう。ダニー(ジョージ・クルーニー)はすぐメンバーに招集をかけ、あたらしいカジノのグランドオープンに合わせ、ぶっ潰し計画を立案、実行に取りかかる。

71点

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 お金のかかった贅沢な映画。エンターテインメントに徹して、観客を楽しませようという意図は何となくわかる。ただ、シンプルな構成なのに、仕掛けがどんなものなのかわかりにくく、仲間のリベンジという感情も何も伝わってこなかった。「12」ほど酷くはないけれど、やっぱり「11」には及ばない。どうして、これだけ豪華なメンバーで、こんな凡庸な作品になってしまうのか不思議。

 脚本はブライアン・コッペルマンとデヴィッド・レヴィーンの2人。この2人はデビュー作のギャンブラー映画、マット・デイモンが主演した「ラウンダーズ」(Rounders・1998・米)、傑作法廷劇「ニューオーリーンズ・トライアル」(Runaway Jury・2003・米)、ザ・ロックの実話の映画化「ワイルド・タウン/英雄伝説」(Walking Tall・2004・米)などを手がけている。つまり引っかけのあるアクションものはお得意ということでの抜擢だろう。ただ、本作は以前のものに比べると、悪くはないが決して良くはない。この2人が書いて、なぜ?

 確かに13人が力を合わせて1つのことをやるというのは、きちんとできていたと思う。各キャラクターもそこそこ出ている。しかし、とにかく発端となるリベンジの動機が薄い。アル・パチーノの嫌らしい穏やかな怖さや、エレン・パーキンの淡々としたクールな悪役ぶりは素晴らしいけれど、仕掛けと実行の方にばかり比重が置かれて、大切な人間がなおざりになってしまった。そんな感じ。各キャラクターはあまり描き込まれておらず、魅力もイマイチ。チーム全体としての仕事だけにフォーカスが当たっている。

 撮影は、監督のスティーヴン・ソダーバーグが兼ねていて、フィックスに問題はないけれど、やはりカメラを手持ち通に動かすところがいけない。手持ちのライブ感がこの人の持ち味なのかもしれないが、シネスコ画面でそれをやられると、カメラの動きが何倍かに強調されるので、観客は目が回る。止めて欲しい。せめてステディカムを使うとかして欲しい。でなきゃ、シネスコじゃなくビスタで撮ればいいのだ。

 まあプロデューサーが、一部で国辱物とまでいわれた「ベスト・キッド」(The Karate Kid・1984・米)シリーズや、がっかりの最上級SF「アベンジャーズ」(The Avengers・1998・米)、「オーシャンズ11」(Ocean's Eleven・2001・)をシリーズ化したジェリー・ワイントロープとなれば、しかたがないのかもしれない。当たりもあるけれど、コケたものの方が多いのでは。この人、よくこれで次の作品が撮れるものだと思う。

 久々にスクリーンで見た気がしたエレン・バーキンは、しばらくメジャーな作品に出ていなかった模様。見ていないが「恋する遺伝子」(Someone Like You・2001・米)が比較的最近話題になった作品か。アル・パチーノと共演した「シー・オブ・ラブ」(Sea of Love・1989・米)で一気に注目され、続くアクションの「ジョニー・ハンサム」(Johnny Handsome・1989・米)なんか強烈だったけどなあ。

 オーシャンズの1人、1作目から参加している若手のターク・マロイを演じているのは、ウィル・スミスの傑作アクション「エネミー・オブ・アメリカ」(Enemy of the State・1998・米)のスコット・カーン。ジェームズ・カーンの息子だ。いかにも先走ってしまいそうな若者を演じてうまい。最近では「Uボート最後の決断」(In Enemy Hands・2004・米)で若きダメ艦長を演じていた。

 昔風の曲、手書き風の文字……イントロはとても雰囲気たっぷり。いかにも面白い映画がこれから始まるという感じなのだが……。

 ちらりと出てくるヴァンサン・カッセルは、たぶんワルサーPPK/Sのシルバー。現代銃としては古い感じだが、監督が好きなんだろうか。ヴァンサン・カッセルは「12」にも出ていたらしいが、作品全体の印象が薄いので、まったく覚えていない。つながりがあるんだろうか。どうでもいいことだが。

 公開3日目の初回、銀座の劇場は前日に座席予約をしておいて10分くらい前に到着。ちょうど劇場案内が始まったところ。シネスコでスクリーンは開いていて、左右マスクの上映。最終的に2F席は、3.5割ほどの入り。朝9時からという早さが影響しているのか、ちょっと少ない感じ。「12」のガッカリ感からすると当然という気もする。

 男女比は4.5対5.5くらいで、わずかに女性が多いだろうか。ほとんどは中高年。20〜30代は1割いただろうか。

 シネスコ画面での予告は……なんと「デスノート」の続編が作られるらしい。主演は松山ケンイチで、Lの秘密が明らかになるんだとか。うむむ。シネスコだが絵はない。再起動とはねえ。バス・タブの中の兵士から始まるウィル・スミスのSF「アイ・アム・レジェンド」は12月14日公開らしい。面白そう。チャールトン・ヘストンの「地球最後の男 オメガマン」(The Omega Man・1971・米)のリメイクだとか。音もクリアで迫力がある。

 ジョディ・フォスターのミステリー・アクション「ブレイブ・ワン」は、銃を片手に悪人を自分で裁くという話らしい。銃がかなり怖い。使っているのはXDか。チャールズ・ブロンソンのヒット・シリーズ「狼よさらば」(Death Wish・1974・米)女性版という感じも。


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