Into the Faraway Sky


2007年8月18日(土)「遠くの空に消えた」

2007・遠空PARTNERS・2時間24分


ビスタ・サイズ(in Panavision)/ドルビーデジタル



公式サイト
http://to-ku.gyao.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)


ある地方都市の空港に青年(柏原崇)が降り立つ。滑走路に半分埋まったコンクリート漬けのスニーカーを懐かしそうに見ていると、客室乗務員がやって来る。青年は客室乗務員にスニーカーが埋まっている理由を語り始める。

73点

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 「ALWAYS三丁目の夕日」(2005・日)系のノスタルジックもの。それをコメディ・タッチで、無国籍なファンタジーに仕上げたと。ジュブナイルと言っても良いかもしれない。オープンニングは「ニュー・シネマ・パラダイス」(Nuovo Cinema Paradiso・1989・伊/仏)を思い出させた。ただ、感動的だがギャグはあまり笑えず、ファンタジーのスケールも小さく、日本映画の限界が見えてきてしまうような印象。

 あまり劇場でも予告されておらず、チラシも少なく、TVコマーシャルも少なかったから見る気がなかったのだが、ラジオで行定勲監督のインタビューを聞いて見ることに。なんでも、蜂は航空力学的にいうと体に大きさに対して羽が小さく本来は飛べるようになっていないらしい。それが飛べるのは、飛びたいという気持ちが強いからだと。そういうファンタジーなら面白いのではないかと思った。映画の中でも羽ばたき飛行機が登場し、蜂のエピソードが語られる。そこから、強く思えば願いはかなう、奇跡は起きる、というテーマへとつながって行くわけだ。

 ただそのミラクルが小さい。こういう流れで行くならば、やっぱり最後にはスピルバーグ的なとんでもないUFOの母船でも現われて奇跡を起こしてくれないことにはバランスが悪い。せっかく実話かホラ話かわかりにくくしているのに、ミラクルの規模が小さいと、実話だからなあと納得することに。ミラクルが大きいほどラストが効いてくるはずなのに。小さくまとまってしまう。

 やはり映画としての作り方は、あまり芝居がかった設定にはして欲しくなかった。そろいの黒のソフトを被ったギャング(?)とか、時代錯誤のようなサロン、カウボーイのような町の実力者、鳩を飼うおかしそうでまともな青年……とかではなく、もっとノスタルジーあふれるリアリティのある町で、リアルな話が進行しながら、リアルな人情溢れる人たちがいて、信じられないようなミラクルが起きた方が映画っぽいと思うのだが。本作は、いかにも芝居で、何か起きるよ、起きるよと予感させておいて小さなミラクルが起きるというパターン。舞台劇のほうが良かったのではないだろうか。確かにリアルにはお金がかかるけど……。感動作「狼少女」(2000・日)にノスタルジック・ファンタジーで及ばない。

 いい味を出していたのは、牛乳配達の少年、公平を演じた、ささの友間。1993年生まれというから14歳。しかし映画では確かに小学生くらいに見えた。劇場映画のデビュー作は「バトル・ロワイヤルII〜鎮魂歌〜」(2003・日)だそうだが、記憶にない。子供は成長が早いから印象がまるで変わったのかも。「鉄人28号」(2004・日)にも出ていたらしい。今後も期待したい。

 謎の美少女、ヒハルを演じたのは大後寿々花。どこかで見たなあと思ったら、「SAYURI」(Memoroes of Gaisha・2005・米)で主人公の少女時代を演じた女の子。彼女も1993年生まれの14歳。あどけなさを残しながら、セクシーさと怪しい魅力を込めた感じは大女優の予感。

 女先生、サワコは伊藤 歩。悲しかった一寸法師映画「水の旅人―侍KIDS―」(1993・日)で劇場映画デビューしたらしいが、作品が作品なので印象薄。岩井俊二監督のアクション映画「スワロウテイル」(1996・日)ではアゲハという重要な少女役を演じていた。あれから11年、ずいぶん大人っぽくなったが、それでもあどけなさのようなものが残るところが素晴らしい。これまた大女優か。本作でも、出番は少ないながら印象に残る。

 なぜか羽ばたき飛行機に挑戦する男として登場する謎の人物に、チャン・チェン。「グリーン・デスティニー」(Crouching Tiger, Hidden Dragon・2000・米/中)で盗賊の頭を演じていた人。その彼がなぜ日本映画に? それも、なぜ時代錯誤の羽ばたき飛行士? しかも女先生と恋に落ちる? まったく人物設定がよくわからないが、とにかく出ただけですごいことではある。

 あと、リアルで存在感があったのは土田牛乳の肝っ玉母さん役の鈴木砂羽。うまい。すべての登場人物の中で一番足が地についていた感じがする。もうベテランといっても良いと思うが、印象に強く残っているのは、驚きのバイオレンス・アクション作「昭和歌謡大全集」(2002・日)。少年たちと殺し合いを演じるオバサン役だったが、素晴らしい存在感であらためて鈴木砂羽という女優を見直した。本作でもいい。

 脚本と監督を担当したのは、行定 勲という人。大ヒットし社会現象にまでなった「世界の中心で、愛を叫ぶ」(2004・日)やちょっと地味な「北の零年」(2004・日)を撮った人。ボクは1本も見ていないので何とも言えないが、重厚な作品が続いたので、本作で軽い方向へ行こうとしたのか。とにかく日本でたくさんを映画を撮れるというだけでスゴイと思う。本作は監督が7年間温めてきたオリジナルらしい。

 公開初日の初回、舞台あいさつがある劇場を避けて銀座の劇場へいったら、狙いどおり混んでいなかった。渋谷は超満員だろう。35分前についたのに誰も並んでいない。30分前で10人ほど。6対4で男性がやや多く、ほぼ中高年。ノスタルジックなところからだろうか。若い男女のカップルが1組。

 25分前に開場して、全席自由の場内へ。最終的には360席に30人くらいの入り。これは寂しい。宣伝が少な過ぎではないだろうか。劇場予告さえほとんど見た記憶がない。小学生くらいの子供を連れたファミリーが1組。

 カーテンが開いて、暗くなって始まった予告で気になったものは……ジム・キャリーの数字の23がすべてにかかわってくるという上下マスクの「ナンバー23」。なにやらジム・キャリーがまじめそうで、しかもミステリーっぽい。監督は「フォーン・ブース」(Phone Booth・2003・)のジョエル・シューマッカー。期待大。

 ニコール・キッドマン主演の「インベージョン」は、ダニエル・クレイグも出ていて高級な感じがするものの、「スペースインベーダー」(Invaders from Mars・1986・米)とか「パラサイト」(The Faculty・1998・米)のパターンの雰囲気。どうなんだろう。

 日本映画のスキヤキ・ウエスタン「ジャンゴ」はどうなんだろう。時代劇の設定で西部劇。基本的に出演者は日本人なのに全編英語。クエンティン・タランティーノが出ているっていうし……。微妙。ハズすか、ハマるか、一か八かの賭けかも。


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