Sicko


2007年8月25日(土)「シッコ」

SiCKO・2007・米・1時間53分


日本語字幕:手書き書体下、石井泰子/ビスタ・サイズ(HDTV)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://sicko.gyao.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)


アメリカ合衆国は医療保険制度が任意で、約5,000万人が加入していないという。しかも、加入者も治療を受ける前に保険会社に保険が支払われるかどうか確認する必要があり、支払の段階になって拒否されることも多々あるという。監督・脚本・製作のマイケル・ムーアは、医療保険のトラブルに巻き込まれた人たちを回り、そしてカナダやイギリス、フランス、はてはキューバまで出かけて、医療保険制度の違いを探る。


73点

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 驚いた。そして感動した。涙が……。前監督作「華氏911」(Fahrenheit 9/11・2004・米)より攻撃的でなく感動的。民主主義や資本主義、助け合いの精神について考えさせられた。日本は1961年から国民皆保険制となっており、毎月一定額を納付することによって、料金の3割(3〜69歳)を負担するだけで誰でも適正な治療が受けられる。しかし、豊かと思われていたアメリカ合衆国は、西側先進諸国で唯一、国民皆保険制度を取り入れていない国なのだという。それによって起こっている悲劇と、他国のシステムとの差(他国に移住したアメリカ人の証言)、そしてなぜ国民皆保険制度になっていないのかに迫る。

 終わりのころ、あちこちでぐしゅぐしゅ音がしていた。泣いている人が多かったのでは。劇場を出る時、「私たちは日本に生まれて良かったねえ」と話しあっている声が聞こえた。ボクもそう思った。そして、マイケル・ムーアの友人夫婦のように、アメリカに旅行する時は、絶対に保険に入ってから行こうと思った。

 結局は「ボーリング・フォー・コロンバイン」(Bowling for Columbine・2002・米)と同じく、国民は恐怖によってマインド・コントロールされているというところに落ち着く。国民皆保険を社会主義と同一視し、社会主義の恐怖を訴える。ビル・クリントンの妻、ヒラリー・クリントンが国民皆保険を採用しようとしてつぶされた経緯も描かれている。ビッグ・マネーの力、保険会社の実体……恐ろしい。

 イギリスやフランスでは医療費は国が全額負担。助け合いの精神に基づいている。一緒に溺れるか、助かるかだと。イギリスでは一定の所得以下だと、病院に来た際の交通費が、逆に病院側から支払われるという。フランスでは医師が認めれば、病後のリハビリを有給にできるという。こういうシステムが充実しているからフランスは生産効率が高いと映画は言う。キューバはもちろん国民皆保険制で、共産主義(社会主義共和制)でアメリカと敵対する立場にありながら、キューバの病院はマイケル・ムーアが連れて行った9.11のヒーローであるアメリカ人の患者も受け入れ、国民同様タダで診療してくれる。うむむ。

 ナレーションは監督・製作・脚本を兼ねるマイケル・ムーア。単純に母国アメリカを良くしたい行動力のあるオヤジという感じだが(1954年生まれ)……もはや顔が売れ過ぎてアポなし取材(昔は突撃取材と言ったが)はできなくなってきたようだ。こういう人がいて、映画などのメディアを使って大きな声で世界に向けて意見を言えるところがアメリカの健全さではないだろうか。日本でこんなことができるだろうか。やろうという人もいないだろうけど。

 公開初日の初回、たぶん「ボーリング……」のようには混まないだろうと予想して、45分前くらいに着いたら新宿の劇場は誰も並んでいなかった。やっばり、日本人はブームに乗り安いからなあ……。それでも35分前くらいには20人ほどになった。30〜40代が中心で、男女比はだいたい半々。前売り券も当日券との引き換えが必要になり、ちょっと面倒になった。

 30分前くらいに開場し、全席自由の場内へ。暑い日だったので冷房に利いた場内に入れるのは嬉しい。次第に20代後半くらいも増えて、高齢者も少々。最終的には400席に50〜60人といった感じ。男女比はやや男が増えて6対4くらいに。

 スクリーンはビスタで開いており、半暗になってCM・予告の上映。気になったのは、ジョン・トラボルタが特殊メイクで太めのお母さん役を演じている「ヘアスプレー」。ダンス映画だというから、トラボルタも踊るんだろうか。ミシェル・ファイファーがでているというのも気になる。1987年版のリメイクだろうか。あの怪優ディヴァインが出ていたという「ヘアスプレー」(Hairspray・1987・米)。見てないんだけど、話題になったので覚えている。

 上下マスクの「アーサーとミニモイの不思議な国」は新予告。だんだん内容がわかってきたら期待が小さくなってきた。リュック・ベッソンだし……。悪いヤツの顔は「バグズ・ライフ」(A Bug's Life・1998・米)のバッタに似てるし……。

 本編に変わってから場内の明かりが落ちたが、できれけば明かりを落としてから本編に行って欲しい。心の準備ができないではないか。


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