Densen Uta


2007年8月26日(日)「伝染歌」

2007・松竹/ジェネオンエンタテインメント/テレビ朝日/ソニー・ミュージックエンタテインメント/衛星劇場/電通/講談社/オムニバス・ジャパン/AKS/ビーワイルド・2時間08分


ビスタ・サイズ/ドルビー

(日PG-12)

公式サイト
http://www.densen-uta.jp/
(全国の劇場案内もあり)


女子高で、1人の女学生、香奈(前田敦子)が刃物で自殺した。その瞬間を目撃した同級生の夏野あんず(大島優子)はある歌を聞いた気がした。しかしマスコミはいじめがあったのではないかと報道をする。そのころ、風俗誌「月刊MASAKA」は、巷で噂になっている歌うと自殺してしまう伝染歌の噂を特集することになり、傭兵上がりの太一(伊勢谷友介)と田舎の旅館のお坊ちゃま、陸(松田龍平)を担当にする。2人はまず夏野あんずにアプローチする。そこへ香奈の親友、朱里(秋元才加)が現われ、彼女のPCから自殺を手助けしている者がいると知らされる。


73点

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 ホラーかと思ったら、どちらかかというとミステリー、謎解きがメイン。しかもその過程がかなり複雑で、旅をしているような雰囲気。これがすごい。オタクのディープな世界と絡めて、独特の世界が展開する。ある意味、デヴィッド・リンチのような独特な世界観。原田監督の昔の作品「KAMIKAZE TAXI」(1995・日)と似ているかもしれない。

 ただ、AKB48のプロモーション作品と見れなくもないので、そう見てしまうとかなりつまらない。むしろロード・ムービーのように一緒に謎解きの旅を楽しんでしまった方がいいかも。

 というわけで、あまり恐くない。むしろ異世界を体験する不思議な感覚。3D-CG(たぶん)で登場する下等霊も、クレイ・アニメのような感じで、しかもクッキリ、ハッキリ。霊というよりは妖怪の類いのような感じ。ちょっとガッカリ。しかし、話は面白い。コメディの要素も多く盛り込まれている。

 基本的には舞台がアキバになり、いろんなオタクが登場する。そして映画の常套手段として、だいたいは異常者。サバゲもなんだか恐い。アイドルの追っかけたちも恐い。もちろん自殺幇助マニアたちも恐い。こわいヤツらだらけ。

 監督の原田眞人という人は、最近、俳優としても「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米)に出演するなど活躍しているが、「金融腐食列島〔呪縛〕」(1999・日)や「突入せよ!「あさま山荘」事件」(2002・日)ですっかり社会派監督、巨匠の雰囲気充分。ホラーの「狗神」(2001・日)も撮ったりしているが(これも恐さより謎解きや世界観がすごかった)、どちらかといえば「ガンヘッド」(1989・日)や、ビデオ作品だが「タフ」(1990・日)シリーズ、「ペインテッド・デザート」(1994・日)や「KAMIKAZE TAXI」などを見ればわかるようにガン・アクションの人だったはず。それが横綱相撲を取るような感じになって、すごいけれどどこか寂しいなあと思っていたらこれだ。この世界観こそ原田監督の持ち味ではないだろうか。

 アキバのオタクの部屋を俯瞰でカメラが移動するのは、「突入せよ!……」で確立させた原田監督らしい撮影方法だろうし、サバゲのシーンは「タフ」や「KAMIKAZE……」の雰囲気。ラスト、旅館に立てこもるがそれも「KAMIKAZE……」の精神セミナーを開いた旅館に似ていた。ここにも原田印が。次作も楽しみだ。

 松田龍平はますます父の松田優作に似てきた。そしてたぶんデビュー作の「御法度」(1999・日)から、「昭和歌謡大全集」(2002・日)などとても良い感じだったが、どこかに構えた感じというかカッコつけているような部分があったのが、本作ではとても自然体な感じがする。一生懸命演じているというのではなく、等身大の自分をそのまま出しているような感じというか。とても良いと思う。大物の予感か。ただ暗くてボソっとしゃべるような役ばかりでなく、軽重明暗、いろんな役をやって欲しい。

 役者的には女学校の気弱な先生を演じた矢柴俊博と、校長先生を演じた矢島健一が良い。そして月刊MASACAの編集部員全員が良い。編集長の堀部圭亮、その愛人役の小山田サユリ、爆弾に詳しいモロ役の遊人、中でも凄いのが、もと傭兵という太一役の伊勢谷友介。キレ方が良い。名前が思い出せない(データもない)が経理の女性も存在感があって良かった。よくこれだけの個性的な役者を集めて、かつまとめたものだと思う。そうそう、旅館のオバサンも良かった。

 銃器特殊効果は、「タフ」の時代からずっと原田作品を手がけているBIG SHOTの納富貴久男。基本的にはトイガンなのだが、PPKらしい実銃の設定のガンも登場する。

 気になったのは、日本映画全般に言えるのだが、コントラストが低く色が浅いこと。なんだかビデオのような絵というか、力がないというか。予告の「釣りバカ」も色が浅かったから、松竹の色なのか……。ハリウッドではかなり色をいじっているようで、リアルという点ではまったく違うことになるが、もうちょっとどうにかしてもいいのでは。

 舞台あいさつを避け、公開2日目の2回目、銀座の劇場は50分前に着いたらロビーに若い男性3人と若いカップル1組。15分前に入れ替えになって、この時点で12〜13人。男女はほぼ半々。ほとんど若い人ばかり。高齢のカップルが1組。入ると劇場案内をすぐに上映。

 最終的には435席に25人くらいか。あれだけTVでコマーシャルしていて、秋元康の企画で、AKB48が出演してもこの入りというのはどういうことだろう。内容的にはもっと入って良い映画。

 予告はやはり場内半明るいまま。暗いシーンがわからん。気になったのは……「黒帯」は日本映画だが見たことのない俳優さんばかりで、しかも何だか古くさい作り。見たい気もするが……。ケイト・ベッキンセールが出演視するホラー「モーテル」。殺人が行なわれたらしい部屋に泊まってしまった男女の話し。彼らにも魔の手が。怖っ! 子供版007の「アレックス・ライダー」は、本気なのかオチャラケなのか、この予告からはわからない。いくらユアン・マクレガーが出ていてもオチャラケだったらパスだなあ。「夜の上海」は日本と中国の合作で、本木雅弘とヴィッキー・チャオという組み合せが良い。ではきればタダの恋愛映画ではなく、銃撃戦まであるくらいハジケて欲しいが、無理だろうなあ。


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