The Wicker Man


2007年9月1日(土)「ウィッカーマン」

THE WICKER MAN・2006・米/独・1時間41分(IMDbでは102分)


日本語字幕:手書き書体下、村田 恵/ビスタ・サイズ/ドルビー(IMDbではドルビーデジタル、dts、SDDS)

(米PG-13、独16)

公式サイト
http://www.wickerman.jp/
(全国の劇場案内もあり)


カリフォルニア州の白バイ警官メイラス(ニコラス・ケイジ)のところに、ある日1通の手紙が届く。それは数年前に別れた婚約者のウィロー(ケイト・ビーハン)からのもので、ワシントン州の故郷の島で娘が行方不明になったので探して欲しいというものだった。メイラスが島へ向かうと、そこは個人の島でありよそ者の侵入を拒む雰囲気があった。そして、住民は何かの信仰に基づいて生活しているようだった。やがて何かの儀式が進行していることを知るが……。


59点

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 IMDbで3.5点という驚異の低評価。これは、さすがにビデオで充分というより、よほどリメイクとかニコラス・ケイジが好きな人向き。設定だけが面白く、内容はほとんど無しで、ノー・プランではないがアイディア1コのみ。なんのヒネリもなし。タイトルが出た以降何も起きない。ただ主人公がウロウロしているだけ。そして問題のエンディング。こんな結末で良いのか。何も工夫せず、頭を使わず、ただ観客に衝撃を与えようとするとこうなってしまうのでは。監督なりプロデューサーは面白くしようとか、楽しませようとか、考えさせようとか、思わなかったのだろうか。これはオリジナルの脚本そのままなのだろうか。

 見どころは、ニコラス・ケイジが出ているという点だけ。そのニコラス・ケイジもうまいが演技は支離滅裂で、怒る理由などなくても怒鳴り散らすし、まるで精神異常者のよう。脚本を読んだ時点で気が付かなかったとすると、演出にも多いに問題ありだろう。そして事件が何も起きず、見どころも無しで一体どこにお金を掛けたのか……あっ、そうか、ニコラス・ケイジの出演料だ。そして木の巨人=ウィッカーマン。調べて見れば、何と、プロデューサーがニコラス・ケイジ。うむむ。

 面白かったのは、アヴァン・タイトル。緊張感もあり、テンポも良く、ありふれたパトロールの仕事から謎の事件の発生まで、ぐいぐいと引き込まれて行く。出演者も良い。車を運転する母は普通っぽいし、後部座席に乗っている少女は美しく、しかも謎めいている。主人公の記憶に強く残るのが良くわかる。しかし、これがまったく以降の物語と関係がない。あえて言えば、なくても良い。こんなアヴァンがあるだろうか。ひょっとして、別の人が撮ったのではないかとさえ勘ぐってしまうほど。この調子で最後まで行けば一級スリラーになっただろうが、タイトルが出た後はさっぱり。

 本作はリメイクで、オリジナルは同名のイギリス映画「ウィッカーマン」(The Wicker man・1973・英)。IMDbで7.7点と高得点。日本では劇場未公開で、allcinemaによればビデオが発売された後、1998年に劇場公開されたらしい。TVではオンエアされたかも。Wickerとは籐などの枝編み細工のこと。オリジナルはエロティック・ホラーの傑作らしく、かなり面白いらしい。本作からはとても想像できない。島の支配者が、本作では女性になっているが、オリジナル版ではドラキュラ役者のクリストファー・リーが演じているらしい。ボンド・ガールのブリット・エクランドも出演。脚本がヒッチコックの「フレンジー」(Frenzy・1972・英/米)や、マイレル・レインの傑作推理物「探偵〈スルース〉」(Sleuth・米・1972)などを書いたアンサニー・シェイファーという人。

 リメイク版の本作の脚本と監督を兼ねたのは、ニール・ラビュートという人。ボク的にはとても面白いロード・ムービーだった「ベティ・サイズモア」(Nurse Betty・2000・独/米)の監督をした人。実力はあるのでは? ただし、ほとんどの場合、脚本も書くこの監督が「ベティ・サイズモア」の脚本は書いていない。そこか?

 オリジナルでクリストファー・リーが演じた役を、本作ではエレン・バースティンが貫録で演じている。大傑作ホラー「エクソシスト」(The Exorcist・1973・米)で娘を助けようと奔走するお母さんを演じた人だ。「レクイエム・フォー・ドリーム」(Requiem for a Dream・2000・米)ではショッキングな役を演じてすごかった。

 アヴァンの謎の少女は、カナダ生まれのゼンフィラ・ゴスリングという12歳の少女。どこかで見た気がするのだが、どうも本作が劇場映画のデビュー作らしい。ちょっと注目したい。

 元婚約者を演じたのは、ケイト・ビーハンというオーストラリア生まれの女優さん。シリーズ第3作目の「マトリックス レボリューションズ」(The Matrix Revolutions・2003・米)でちょい役をやっていたらしい。もっと大きな役ではドョディ・フォスターの「フライトプラン」(Flightplan・2005・米)でフライトアテンダントをやっていた。ちょっと不気味な独特の雰囲気を持っている。

 ニコラス・ケイジに襲いかかってくる謎の若い女性を演じたのは、リリー・ソビエスキー。主役の小さな恋人を演じた「ディープ・インパクト」(Deep Impact・1998・米)」や、変な店の妙に色っぽいロリコン少女を演じた「アイズ・ワイド・シャット(・1999・米)」、主人公の同級生を演じた「25年目のキス(Never Been Kissed・1999・米)」、「激突!(Duel・1972・米)」そっくりの「ロード・キラー」(Joy Ride・2001・米)などに出ていた。しばらく見ないなあと思っていたら、こんなに大人になって……ちょっと妖艶さが消えて、ふっくらしてきた感じ。今後が勝負かも。

 美しい女教師は、カナダ出身のモリー・パーカー。リリー・ソビエスキーも出ていた「アドルフの画集」(Max・2002・加ほか)で正妻ニーナを演じていた人。本作でも美しさが際立っている。最近では「ハリウッドランド」(Hollywoodland・2006・米)で主人公の探偵の美しい奥さんを演じていた。素晴らしい。これからも、あまり変な役をやらずにがんばって欲しい。

 公開初日は、なんと映画の日。忘れていた。初回、40分くらい前に着いたら新宿の劇場にはすでに20人くらいの行列。誰でも当日料金1,000円で見られるんだあ。男女は半々くらいで、ほぼ中高年。若い人は3〜4人。なんか騒然とした雰囲気があるなあと思ったら、すぐ近くの劇場でアニメ「エヴァンゲリオン」の初日だった。若い男性が多い。取材陣もいる。係の人が満席ですと叫んでいた。

 30分前に開場し、この時点で25人くらい。座席は千鳥配列だが、床に勾配が無くスクリーンも低いので、ちょっと座高の高い人が前に座るとスクリーンが見にくい。特に下に出る字幕が辛い。最終的には350席に4.5割くらいの入り。映画の日はスゴイ。

 暗くなって始まった予告編は……上下マスクの「バイオハザード3」は飽きてきて、もうインパクトなし。なかなか怖そうなスリラーらしい「ディスタービア」は最初にタイトルが出てからの予告。覚えやすい。そして面白そう。「裏窓」っぽいのと、上映劇場が小規模のところばかりなのが気になるけど。

 「キングダム 見えざる敵」は面白そう。テロと、FBI特殊部隊の戦いらしい。すごいアクション。ただ、やっぱり劇場が小規模系なのが気になる。



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