Arther and the Minimoys


2007年9月23日(日)「アーサーとミニモイの不思議な国」

ARTHUR ET LES MINIMOYS・2006・仏・1時間44分(IMDbでは米版94分、仏版103分)


日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、ライブは Technovision)/ドルビーデジタル、dts(IMDbではドルビーデジタル、dts、SDDS)

(仏U指定、米PG指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.arthur-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)


1960年、アメリカ、コネチカット州のある貧しい田舎の家。イギリスの寄宿学校に入れられたアーサー少年(フレディ・ハイモア)は、夏休みでおばあちゃん(ミア・ファロウ)の家にいた。おじいちゃん(ロン・クロフォード)は数年前に突然失踪し、アーサーの両親も2人とも働きに出て、アーサー少年の誕生日さえ家にいなかった。そんなある日、男(アダム・レフェブレ)が現れ、未払い金がかさんでいるので、立ち退けと行ってくる。期限は48時間。そして電話が止められ、ついには電気も止められてしまう。アーサーは、おじいちゃんがアフリカでお礼にもらったルビーを庭に埋めたという話を信じ、宝探しを始める。やがて手がかりは、庭にあるという身長2mm半の小さな種族の住む国にあるとわかる。


73点

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 久々にリュック・ベッソンで面白かった。ちゃんと最後まで見ることが出来た。ストーリー展開で気になるところも少なかったし、感情移入できた。ただ、長い。そして大人向きでは無い。さらには3D-CGのミニモイのキャラクターが、いまひとつボクには馴染めなかった。実写パートは文句なし。3D-CGパートは人形劇と思えば違和感も無い。もちろん、とても技術が高く、リアルで自然な動きなのだが……。たぶん、これも子供たちが夏休み中の8月とかに公開した方が良かったと思う。
 いろんなファンタジーの良いとこ取りという感じはある。全体の雰囲気はニック・モラニスの「ミクロキッズ」(Honey, I shrunk the Kids・1989・米)みたいで、ハーレー・ジョエル・オスメントの「ウォルター少年と、夏の休日」(Secondhand Lions・2003・米)の設定もあり、主人公がアーサーという名で岩から剣を引き抜くのは「アーサー王伝説」だし、名前を口にしてはいけない邪悪なものってアナタそのままじゃない。で、地下にアリンコの世界があるような雰囲気は「バグズ・ライフ」(A bug's Life・1998・米)で(邪悪なものがホッパーそっくり!)、王とか王妃とかって「シュレック」(Shrek・2001・米)だろうし……

 たしかに、リュック・ベッソンという人は冒険談が得意なのかもしれない。監督デビュー作である傑作「最後の戦い」(Le Dernier Combat・1983・仏)は、近未来SFアクションだが、ストーリー構成は冒険談になっていた。でも、「アンジェラ」(Angel-a・2005・仏)が最後の監督作品かと思っていたら、本作も監督していたとは。

 一番残念だったのは、主人公の少年が身長2mm半になってミニモイの世界に入ると、まったく顔形が変わってしまうこと。面影がない。まるで別人。感情移入が途切れる。せめて、どこか似ていないと……。そしてどのキャラクターもフランス人好みなのか、耳が尖っていて、眼も切れ長であまり親しみやすくない。日本人的にはちょっと意地悪そうな印象。

 実写の主役は、フレディ・ハイモア。トラ映画の「トゥー・ブラザーズ」(Two Brothers・2004・英/仏)でトラと一緒に育った少年を演じていた天才的な子。その後、ジョニー・デップの「ネバーランド」(Finding Neverland・2004・英/米)で父の死で心を閉ざした少年を好演、ちょっと前は「チャーリーとチョコレート工場」(Charlie and the Chocolate Factory・2005・米/英)で再びジョニー・デップと共演している。さすが天才子役、出まくり。幼く見えるが、1992年生まれというから15歳。日本では中学3年生ではないか。

 おばあちゃん(グランニーと言っていた)は、なんと古典ホラー「ローズマリーの赤ちゃん」(Rosemary's Baby・1968・米)のミア・ファロー(例が古っ!)。1945年生まれだから62歳か。まだまだ、全然、元気。そう言えば最近、酷いリメイク「オーメン」(The Omen・2006・米)に怖い役で出ていたっけ。

 CGパートの英語版の声の出演は、セレニア王女が、歌手のマドンナ。名前を口にしてはいけない邪悪なマルタザールが、歌手のデヴィッド・ボウイ(なんだかジェレミー・アイアンズっぽいというか、「バグズ・ライフ」のホッパーのケヴィン・スペイシーっぽい)。ミニモイの世界のラスタマンことマックスが、ラッパーのスムープ・ドッグ。ミニモイ族のちょっと頼りない王が、名優ロバート・デ・ニーロ。ねずみのような科学者のミロが、「レザボアドッグス」(Reservoir Dogs・1991・米)のハーヴェイ・カイテル。ミニモイの世界の旅行エージェントが、刑事役などが多いチャズ・パルミンテリ。望遠鏡の先にいる変なミニモイのオヤジが、マーチン・シーンの兄、エミリオ・エステベス……という具合。超豪華。でも、それだけかな。

 ラスト、登場人物が3D-CGのキャラで現われてお辞儀をするのは面白かった。最後にリュック・ベッソンまで出てきてサービス。こんなキャラでミニモイも行けば良かったのに。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、前日に座席を確保しておいたので、15分前に到着。子供向けのファンタジーかと思ったら、中高年がほとんど。男女比は半々だった。小学生くらいの子供を連れたファミリーは、字幕版なので2組ほど。大学生くらいはチラホラ。

 しかし、最終的に540席に2.5割ほどの入りは、子供向け作品の字幕版だからか、リュック・ベッソン作品だからか。そろそろ神通力もこれまで……かも。

 気になった予告編は、劇場案内のスライドで紹介していた「モーテル」はかなり怖そう。スライドの「ヘアスプレー」はあとで動画でも予告されたが、結構おもしろそう。あとは、主人公のぽっちゃりの女の子が好きになれるかどうかだろう。

 少年007の「アレックス・ライダー」は、どうも真剣な話ではなく、おとぎ話的な作品のよう。どうだろう。「スパイ・キッズ」のようでなければいいけど。悪役のミッキー・ロークは不気味ですごく良さそう。

 3D-CGの上下マスク「ビー・ムービー」は、ドリームワークスだから「アンツ」(Antz・1998・米)をそのままハチにした感じ。これでいいのか。しかし、もっと疑問なのは上下マスクの「ベオウルフ」。アンジェリーナ・ジョリーらが出ているのに、それらがどうもすべて実写ではなく3D-CGのよう。全く不自然で、不気味。生気がないのだ。死んだ人の芝居みたい。ロバート・ゼメキス監督はもう実写作品は作らないらしい。どうやらIMAXの3D映画のようだ。

 「デスノート」はまだ絵無し。過去映像のみ。撮影開始の予告とは、こんなとこから告知するの。見たいけど。

 キャサリン・ゼタ・ジョーンズの「幸せのレシピ」はあまりにコテコテというか、定石通りで気恥ずかしくなるような作品。見終わったらほっこりするんだろうけど……。殺伐とした気分になるよりは何倍もいいとは思うが……。


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