Rogue Assassin


2007年10月7日(日)「ローグ・アサシン」

WAR・2007・米・1時間43分


日本語字幕:手書き風書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(クレアモント、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://www.rogue-assassin.com/
(入ると画面極大化。音にも注意。全国の劇場案内もあり)


FBIアジア系組織犯罪課の特別捜査官ジャック・クロフォード(ジェイスン・ステイサム)と相棒のトム・ローン(テリー・チャン)は、チタンの弾丸を使う組織の殺し屋ローグを追いつめ射殺する。しかし、しばらくしてトムの家にローグが侵入、一家を惨殺し、家に放火する。3年後、サンフランシスコのヤクザ街にローグが現われ、チャイナ・マフィアとの抗争が始まる。


73点

1つ前へ一覧へ次へ
 ハリウッド製の香港テイストやくざ映画。通常のアクション物とは違って、親分・子分の関係とか、メンツとか、イレズミとか、おどろおどろしいというか、妙にウェットというか、ちょっと湿っぽい。それがなければ、もっとスカッと楽しめるアクション映画だったかもしれない。

 たぶん、仕掛けである「ローグ、お前は何者なのか」というのは、多くの人が途中で気付くと思う。この映画の面白さはそこにあるわけではないので、かまわないのだが、それをキャッチにしてテーマのようにしてしまうとそれが重要なことのようになってしまうので、困る。ボクはてっきりローグの正体捜しのミステリーかと思ってしまった。実は、ヤクザの抗争とFBIの戦いを描いたアクション。銃撃戦もあるし、カンフーもあるし、チャンバラもカー・チェイスも爆発もある正統派。

 主演のジェット・リーは、「SPIRITスピリット」(Fearless・2006・香/米)でアクションに出るのは最後というようなことを言っていたが、まだ出ていたんだ。新作が4本ほど控えているが、それらはどうなんだろう。アクションこそジェット・リーの個性なのに、それを封印してしまうなんて。演技派俳優になりたいんだろうけれど……。

 あいかわらずジェイソン・ステイサムはいい。近作「アドレナリン」(Crank・2006・米)も良かったが、本作も良く動き、熱演している。水泳選手からモデルになって、役者になった人だが、多くのスタントも自分でこなすらしい。ヘタにカッコつけず、ひたすら一生懸命なのが良い。ジェット・リーとは「ザ・ワン」(The One・2001・米)で一度、共演している。日本語の長セリフはまあまあの出来。どうにか聞き取れるから、結構特訓したのだろう。

 その奥さん役の美女は、アンドレア・ロス。「CSI」とかのTVで活躍してきた人だ。今後は映画も増えるようで、期待したい。

 日本のヤクザの親分は、石橋 凌。1990年くらいから俳優業に専念するようになり、最近ではアメリカへ活動拠点を移したらしい。日本では劇場公開された「ドリーム・クルーズ」("Master's of Horror" Dream Cruise・2007・米)はTVドラマで、あまりよい作品とは言えなかったが、流ちょうな英語で、本作をきっかけに今後の活躍に期待したい。

 その娘で、姉御のキラには、ロッキー青木の娘、デヴォン青木。本物のお嬢様なのに、なかなかヤクザ言葉が決まっていた。といっても日本語が不自由で吹替になっていたようだが……。「シン・シティ2」など2本が待機中。

 ヤクザの1人で、耳を切り落とされる役でケイン・コスギも登場。ジェット・リーとも格闘技を繰り広げ、ちょっとだけ印象に残る。デヴォン青木とは「DOAデッド・オア・アライブ」(DOA: Dead or Alive・2006・米)に引き続き共演している。

 チャイニーズ・マフィアのボスは、久々登場のジョン・ローン。すごい2枚目だったが、さすがに歳を取ったなあという感じ。「イヤー・オブ・ドラゴン」(Year of the Dragon・1985・米)や「ラストエンペラー」(The Last Emperor・1987・中/英ほか)が強烈だったが、最近では「ラッシュアワー2」(Rush Hour 2・2001・米)以来か。1952年生まれというから、もう55歳。もっと活躍して欲しい。

 監督はフィリップ・G・アトウェル。多くの有名アーティストのミュージック・ビデオを手がけてきた人で、「ワイルド・スピードX2」(2 Fast 2 furious・2003・米)上映の前に上映される1作目からの橋渡し的短編(たぶん日本では上映なし)が、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーに認められ、ニコラス・ケイジの「ナショナル・トレジャー」(National Treasures・2004・米)で第2班監督に抜擢されたらしい。その後、人気TV番組で監督を任され、本作で劇場長編作デビューとなったらしい。

 脚本はリー・アンソニー・スミスとグレゴリー・J・ブラッドリーの2人。リーは大学で映画や脚本などについて学び、グレゴリーと組んで映画製作会社ヴィルトゥオーソ・エンタテインメントを作ったらしい。グレゴリーは香港映画ファンで、武術家でもあるらしく、それでリーと意気投合したらしい。2人とも本作が劇場用長編映画のデビュー作となる。

 ローグ・アサシンというタイトルは、日本のほか、オーストラリア、香港、シンガポールなどで使われているらしい。

 登場する銃器は、殺し屋ローグがスライド・シルバーのワルサーP99。ただし、なぜか現場にはボトルネックの薬莢が落ちていて、原語では「タイテイニアム・ブレット」と言っているようなのに、字幕では「チタニウム薬きょう」と出る。たぶん弾丸は一度も写らなかったから、つじつまが合わないので薬きょうとしたのだろう。普通に考えると、薬きょうをチタニウムにしても意味はないと思う。弾丸がチタニウムなら防弾チョッキも、防弾仕様リムジンなんかのドアも貫通しそうだ。なぜボトルネックなんかにしたのか。

 ジャックが使う銃はベレッタ・クーガー。こんな銃を持たせるところが変わっているが、ロータリー・バレルなのでプロップ・ガンを作るのも大変だったのではないだろうか。

 FBIはレミントンM870らしいショットガンにライトをつけていたり、G36を持っている。誰か1人がFNのファイブ・セブンを持っていたので、ボトルネックはここから来たのかも。P99のマガジンのアップでこのファイブ・セブンのマガジンのアップが使われていたし。

 ほかにもベレッタM12サブマシンガン、たぶんH&KのG3SG1かMGG90スナイパー・ライフル、IMIのジェリコなど。なんとキラは4連発ペッパー・ボックス・ピストルのコップ357デリンジャーを持っていた。実銃だったんだろうか。撃たなかったが……。

 アーマラーは、劇場のエンド・クレジットでは2人あったが、IMDbではなぜか1人。ライアン・ステイシーという人で、つい最近では「ファンタスティック・フォー銀河の危機」(4: Rise of the Silver Surfer・2007・米ほか)や、「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米)を手がけた人。

 面白かったのは、日本人がしゃべると、まず日本語の字幕が出て、それが空港の時刻表のようにタパタパタと変わって英語になること。中国人がしゃべると中国語から、韓国人がしゃべるとハングルから、英語に変わる。これがおしゃれ。

 ただ、日本のヤキューザ(こう発音していた)のシーンで、彼らの娯楽がトップレス・ダンサーの踊り、女体盛り、娼婦などで、ちょっとこっ恥ずかしかった。日本人、スケベね。そしてほとんどのヤキューザがイレズミだらけ。これも、なんだかなあ。そして、ことわざのような日本語の垂れ幕や、壁の文字などがたくさん。間違っていないが、そんなとこに書くかというレベル。ハリウッドの精いっぱい理解なのだろう。

 公開2日目の初回、銀座の劇場はほとんどお昼からの上映。なのに45分前に着いたら誰もいない。35分前くらいに10人ほどになった。中年カッブルが2組、若い男性1人、中年女性が3人、あとはオヤジ。

 まもなく開場して、指定席なしの場内へ。2F席は閉鎖中。最終的には1Fの2.5〜3割くらいの入り。これは少ない。もっと入っても良い作品なのに。

 気になった予告編は、士郎正宗原作の3D-CGアニメ「アップルシード」(1988・日)の続編らしい「エクスマキナ」。10/20〜公開なのに、やっと予告を見た。露出が少な過ぎるのでは。と言いつつも、プロデューサーがジョン・ウーなのに、上映劇場がどうにも見に行こうという気にさせないところばかり。悲しい。CGのレベルも明らかに上がっていて、とてもリアル。見たいけど……なんでこんな扱い? ラストが「マトリックス レボリューションズ」(The Matrix Revolutions・2003・米)みたいだから?

 秀吉の側室淀君(淀殿)を描いた「茶々―天涯の貴妃―」は、特に興味ないが、主演の元宝塚男役トップ・スター、和央ようかがキレイ。彼女にだけ興味あり。

 第1回の「このミス」大賞の映画化「エクスクロス 魔境伝説」。鈴木亜美、中川翔子というのがビックリ。なかなか怖そうだし、絵がカッコいい。

 またまたノスタルジック路線の「オリヲン座からの招待状」は、予告は感動させるぞって雰囲気ありすぎで、逆に引いてしまう感じ。ちょっと「ニュー・シネマ・パラダイス」(Nuovo Cinema Paradiso・1989・伊/仏)とか「マジェスティック」(The Majestic・2001・米)ぽいのも気になる。なんだかTVでも似たような話をやるようだし。ただ、これはちゃんとした原作があって、しかも浅田次郎だから間違いないんだろうけど……。

 スクリーンがシネスコになって「KIDS」と「相棒」の予告。撮影に入ったばかりらしく、まだティーザーで内容が良くわからないから、どちらもあまり興味がわかないなあ。


1つ前へ一覧へ次へ