Kohn fai bin


2007年10月8日(月)「ロケットマン!」

FIRE WARRIORS・2006・タイ・1時間43分


日本語字幕:丸ゴシック体下、堤 洋子/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル

(シンガポールNC-16指定)

公式サイト
http://www.rocket-man.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)


1855年、イギリスと通商条約を結んだタイは、輸出するものとして農産物を生産するしかなくなり、大量の牛が必要とされ、牛飼い(ナイホイ)が生まれた。1920年代になって、イギリスのメイヤーズがトラクターを開発し、そのライセンスを王室のウェン閣下(プティポン・シーワット)が独占したが、価格が高く一般の農民には買うことができなかった。そこでウェインはごろつきを集めて牛を牛飼いから奪わせる策に出た。そんな牛泥棒から牛を奪い返す覆面の男ロケットマン(ダン・チューポン)がいた。彼は両親を殺した牛泥棒を探していたのだった。


70点

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 うーん。昔の面白くなる直前の香港映画を見ているような感じ。手法が古くさく、話の構成もコテコテ。CG、ワイヤー・ワークを使いまくり、ギャグとリアルな暴力を同居させ、感動ファンタジーに持っていこうとしたと。ただ、もういろんな作品でスレてしまっている日本の観客には興味が薄く、ギャグもお国柄の違いでほとんど笑えない。一生懸命作っているというのは伝わってくるのだが……。

 単なるアクションかと思ったら、実は今流行りの冒険ファンタジー。予算の関係からか、話のスケールは小さいが、魔法使いが2人も登場し、ちょっとだけ魔法の戦いを演じて見せる。しかし、こんな中途半端になるんだったら、肉体派アクション一本やりで行ったほうが良かったのでは。

 たぶん、タイ映画の魅力はニュー・ウェーブにあるのではないだろうか。少なくともボクにとってはそうだ。「レベル・サーティーン」(13・2006・タイ)とか、「レイン」(Bangkok Dangerous・2000・タイ)とか、「快盗ブラック・タイガー」(Tears of the Black Tiger・2000・タイ)とか、「ガルーダ」(未)(Garuda・2004・タイ)とか、「デッドライン」(102 Bangkok Robbery・2004・タイ)とか……。ちょっと古いっぽい「マッハ!」(Ong-Bak・2003・タイ)も面白かったけど。

 主演は「七人のマッハ!!!!!!!」―なんて面倒な邦題なんだ―(Born to Fight・2004・タイ)のダン・チューポン。やはり大ヒット作「マッハ!」のトニー・ジャーより、美男子ではあるものの、数段見劣りしてしまう。「七人の……」もあんまり人が入っておらず、話題にもならなかったからなあ。とにかく地味。

 黒鬼―ナイホイ・ダムを演じたのは、「マッハ!」のアクション監督のパンナー・リッドグライ。なんだかキックボクシング選手のような名前だが、「七人の……」(監督も)や「トム・ヤム・クン!」(Tom Yum Goong・2005・タイ)も手がけているベテラン。ただし本作のアクションは普通の印象。やはり監督の演出の差だろうか。

 ヒロインのサオを演じた美女は、カンヤパック・スワンクートという人。まだかなり若いようで、映画の出演もこれが初めてらしい。いい役だが、この程度の出来では注目されることはないかもしれない。ちょっとかわいそう。

 ウェン閣下を演じたコメディアンのような人は、プティホン・シーワット。アイドル・グループの一員から独立して、俳優としても活躍中なのだとか。口元の傷が気になったが、本物なのか特殊メイクなのか。これだけオバカ・キャラを演じられるとは、とても元アイドルとは思えない。まじめな役も見てみたい。

 監督はチャルーム・ウォンピムという人。脚本も手がけている。「バトル7」(Heaven's Seven・2002・タイ)という自主製作と紙一重のようなアクション映画を撮った人。タイでは大ヒットしたらしいが、日本では受けない内容。しかも本作同様、前時代的だった。そういう人なのだろう。やたら爆発が多くて、西部劇調だったし。残念だ。

 面白かったのは、主人公の表向きの職業がいわゆる花火師で、タイのお祭りなどで使う打ち上げ式の爆竹を作る専門家という点。だから大小様々の爆竹を使って敵を攻撃する。その絵は面白い。監督の好きな爆発もたくさん入れられる。銃は単銃身のショットガンらしい古いものだけ。1920年代が舞台だからしようがない。

 牛飼いと牛泥棒がわかりにくい。最初は誰が泥棒で、誰が単なる牛飼いなのかわからず、見ていて戸惑った。字幕の限界だろうか。

 公開3日目の初回、銀座の小劇場は45分前に着いたら誰もおらず、劇場の明かりも消えていた。30分前になって5〜6人の列になり、20分前になってやっと開場。この時点では12人ほど。若い男性が2〜3人、中年手前くらいの女性4人、あとオヤジ以上。

 オヤジの劇場というイメージのここは全席自由で、最終的には177席に25人くらい。ま、こんなものだろう。

 暗くなって始まった予告では……太って動けなくなって、もう人が呼べなくなったスティーヴン・セガールのB級アクション3連発「オヤジ映画祭」をやるらしい。この劇場にはピッタリかも。1本はどうもビデオ映像のようだったが、調べたら2本がビデオ公開作品。しかもIMDbで3.5点とか2.3点という信じられない低評価。どれもセガール自身が脚本を書いているというのが悲しい。2003年くらいから、ほとんどがアメリカでは劇場公開ではなくいきなりビデオ(DVD)発売となっている人……。しかも公開される作品にはすべてかつての栄光「沈黙」が冠されているという悲しさ。悲し過ぎる。前回は、娘の藤谷文子名で「お父さん、もうやめてください」とまで言わせているのに、また……。


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