The Kingdom


2007年10月13日(土)「キングダム ―見えざる敵―」

THE KINGDOM・2007・米・1時間50分


日本語字幕:丸ゴシック体下、表記無し/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35とHDTV)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG-12指定)

公式サイト
http://www.kingdom-movie.jp/
(音に注意)


サウジアラビアの首都リヤド、外国人住居区で自爆テロが発生。その現場検証中、さらに大規模な爆発が発生し、居合わせたFBI捜査官が死亡する。FBIは司法省の制止も聞かず、4人のタクティカル・レスポンス・チームを派遣する。与えられた時間は5日間。実行犯が警察の制服を着ていたことから、捜査は警察ではなく軍が当たっていた。4人のチームのお目付け役は、国家警察のアル・ガージー大佐(アシュラム・バルフム)が担当することになり、厳重な行動監視を行なってくる。


75点

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 怖い。いつ撃たれるかわからない恐怖。テロとの戦いとはどんなものなのか。そして、アメリカとサウジアラビアの特殊な関係。すぐ身近にテロリストがいる恐怖。そして続く怨みと復讐の連鎖。つまり、1つの事件は解決したが、話は終らない。

 映画はサウジアラビア国家警察のアル・ガージー大佐に花を持たせ、感動的に終るが、考えてみればアメリカ国内の州をまたがる事件を担当するFBIが、他国に行って捜査を行い、戦争みたいな大銃撃戦まで演じるなんて、アメリカらしい話。主権侵害も甚だしいのでは。逮捕に協力ならまだいいとしても、結局、力で力を抑えるのは、次の火種を作ってしまう。凶悪な犯罪者をみな殺しにするのは、それはそれでアクション映画としてはスカッとするのだが……。

 ただテロは無差別。単なる身代金目当てかも知れないが、日本人がイランで誘拐され、その事件も解決していない今、本当に他人事ではない話。なんでこんな世の中になってしまったのだろう。

 サウジアラビア人だってテロには怒っているし、テロを無くしたいと思っているという点を描いたのはいい。しかし、いくら軍が捜査していて警察が捜査できない状態だとしても、FBIのタクティカル・レスポンス・チームが現地へ行って、簡単かつ基本的な捜査をしただけで、いろいろな証拠が見つかり犯人像が浮かび上がってくるのはいかがなものか。

 タクティカル・レスポンス・チームのリーダー、ロナルド・フルーリーを演じたのはジェイミー・フォックス。とにかくトム・クルーズと共演した「コラテラル」(Collateral・2004・米)が良かった。その後「Ray/レイ」(Ray・2004・米)でアカデミー主演男優賞を受賞し、「マイアミ・バイス」(Miami Vice・2006・米)ではアクションも行けることを証明して見せた。さすが一流俳優。到着してすぐ銃を取り上げられるが、現地警察が使っているH&KのHK33、AKS74U、ベレッタM92FSなどを使う。

 爆発物専門捜査官クセラント・サイクス役はクリス・クーパー。悪役がうまい人だが、本作では特別捜査官。なんといっても「遠い空の向こうに」(October Sky・1999・米)の厳しい父親役が秀逸。HK33などを使用。

 法医学調査官ジャネット・メイズ役はジェニファー・ガーナー。TVのアクション・ドラマ「エイリアス/2重スパイの女」で注目され、「デアデビル」(Daredevil・2003・米)のエレクトラ役が目立っていたことから、スピン・オフ映画「エレクトラ」(Elektra・2005・米)まで作られ、すっかりアクション女優のイメージだが、実際にはお上品なお嬢様らしい。子供時代に学んだバレエによって体のこなしがいいらしい。本作でもMP5のPDWを苦もなく使いこなしている。ただ、1人だけレイバンのサングラスっぽかったけど、なぜ。

 情報分析官アダム・レビット役はジェイソン・ベイトマン。つい最近「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2007・米)に出ていたらしいが、気付かなかった。ちょっとコミカルな役の人のようで、マイクロ・シアターで公開されたベン・スティーラーのコメディ「ドッジボール」(Dodgeball: A True Underdog Story・2004・米)、日本では劇場公開されずビデオ発売となった「スタスキー&ハッチ」(Starsky & Hutch・2004・米)にも出ていたらしい。「スモーキン……」は良かったとしても、よく本作のシリアスな役のオファーが来たなあと。オーディションを受けたのかも知れないが……。

 サウジアラビア国家警察のアル・ガージー大佐を演じたのはアシュラム・バルフム。イスラエル生まれで、日本公開されたものだとパレスチナ問題を描いた「パラダイス・ナウ」(Paradise Now・2005・仏ほか)に出ていたらしいが、小劇場の公開だったので見ていない。味のある役者で、今後が楽しみ。

 脚本はマシュー・マイケル・カーナハン。どこかで聞いた名だなあと思ったら、「NARC ナーク」(Narc・2002・米)のジョー・カーナハンの弟だとか。本作が劇場公開作の最初ということになるらしいが、ジョー・カーナハンの「スモーキン……」に協力していたらしい。

 監督はピーター・バーグ。役者でもあり、最近では「スモーキン……」でベン・アフレックの同僚で出ていた。ちょっと前だとマイケル・マン監督の「コラテラル」(Collateral・2004・米)の刑事など。脚本家やプロデューサーもやっているが、監督としてはB級映画の王道として面白かったザ・ロックの「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン」(The Rundown・2003・米)を監督している。本作もアクション部分は特に素晴らしい。ただし、カメラは動かし過ぎ。ドキュメンタリー・タッチを狙ったのだろうが、シネスコの画面はちょっと動かしてもそれが強調される。それを動かしまくったのでは、観客は目が回ってしまう。それだけが残念。もっとフィックスで撮って、動きを出して欲しかった。

 プロデューサーには、ピーター・バーグもだが、マイケル・マンも。男の闘いを描き続ける人で、監督する新作も進行中らしい。

 タクティカル・レスポンス・チームが到着してすぐ言われるのは、ケブラーの防弾チョッキを身に着けろと言うこと。着いてすぐとは、また物騒な。そんなに治安が悪いということ。彼らを乗せた車両も、襲撃されないよう空港から時速240kmほどで疾走する。

 警察や軍が使うのはHK33、SIG SG551か552、M4/M4A1、特殊部隊がMP5。テロリストは、AKS74U、定番の対戦車ロケット弾発射機RPG-7、ラストの少年はなんと使い古されたトカレフ。爆発物はPETNやC4やセムテックだと言っていた。武器を担当したのは、IMDbのクレジットにはないが、フィルムのエンド・クレジットではニコラス・パパック。ラストに3名の名とともに捧ぐと出るが、1人がニコラス・パパック。本作の撮影中、セットの中で自動車事故で亡くなったという。まだ20代の若さだった。

 公開2日め(10/12から公開)の初回、新宿の劇場は40分前に着いたら誰もいなかった。あれれ。先週公開したばかりの「ローグ・アサシン」は早くもグループ内の最下位劇場落ち。でも本作は公開初日から下位劇場だから、比べたらましか。しかしすでに他の劇場で公開していた「プラネット・テラー」が2番目の劇場での公開とは納得が行かない。

 35分前になってオヤジが3人。22〜23分前に開場になったが、この時点で中年カップル1組とオヤジが20人くらい。全席自由だが、前の席の人の頭が邪魔になる劇場。千鳥配列がせめてもの救い。

 上映ギリギリになってから人が増え出し、最終的には350席に6割ほどの入り。男女比は8対2くらいでほとんど男性。しかも9割は老寄りの中高年。これくらいの混み具合がゆったり見れてちょうど良い。

 カーテンが開いて、暗くなって始まった予告編では……「ソウ4」。どんな話か全く不明だが、アメコミ付きの前売り券というのは魅力的。どうしよう。

 スクリーンがシネスコになって始まったアンジェリーナ・ジョリーの新作はなかなかタイトルが出ない。これでは覚えられないではないか。ラストに出たそれは「マイティ・ハート ―愛と絆―」。パキスタンで夫が誘拐されるという実話の映画化。どうだろう。 は


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