The Good Shepherd


2007年10月20日(土)「グッド・シェパード」

THE GOOD SHEPHERD・2006・米・2時間47分(IMDbではロシア版139分)


日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定)

公式サイト
http://www.goodshepherd.jp/
(音に注意)


アメリカ海軍の将軍の息子として生まれたエドワード・ウィルソン(マット・デイモン)は、名門イェール大学に進学すると、1940年、成績優秀な者だけが入れる秘密結社スカル&ボーンに勧誘され入会する。そして会員であるウィリアム・サリバン将軍(ロバート・デ・ニーロ)から、間もなくアメリカは第二次世界大戦に参戦するため、大統領から対敵防諜機関を作るように指示されたから、参加して欲しいと要請される。快諾したエドワードは、スカル&ボーンの集会で、上院議員の娘クローバーと出会い一夜を共にする。


75点

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 壮大なアメリカ諜報機関の歴史物語。そのために自分の人生と家族さえも捧げた男の半生。そして必要悪としてのスパイ、そしてスパイ活動とはどんなモノなのか。それが描かれている。

 アクション活劇のスパイとは違うドロドロした人間の醜さが表れる恐ろしい現実のスパイの姿。こういった機関がなければ、敵のスパイに好きなように情報を盗まれ、誤った情報をつかまされ、国が滅ぼされ兼ねない。

 誰も信じられない世界で生きるとはどういうことなのか。これがリアルに描かれる。どんな仕事をしているか妻にも話せず、家族は崩壊し、たった1人の息子さえも愛する国のために犠牲にしなければならない生き方。これが恐ろしく、ずっしりと心に響いてくる。またドイツのハニー・トラップを仕掛けた女の射殺が恐ろしい。サイレンサーを付けた銃で頭を1発。直接は写さず、壁に飛ぶ血で表現されている。マット・デイモンの息子をハニー・トラップに落とした女も、実に恐ろしい手で殺害される。

 昔を舞台にした映画なので、煙草を吸うシーンが多い。現代劇ではほとんど煙草は出てこない。いまや時代を表現する手段としてタバコは使われているようだ。

 クレジットされた監督作としては2作目というロバート・デ・ニーロの演出は素晴らしく、カット1つさえおろそかにしない重厚な絵作り。上質な映画を作ろうとしている意気込みが伝わってくる。ただ、すべてのカット、シーンに力が入っていて、すべてが見せ場のようになってしまって、逆に単調になった感じ。3時間近いほどの長さは感じないが、2時間15分くらいの長さは感じる。話も難しく、登場人物の名前が覚えられないと、なかなかわかりにくかったりする。日本人にはちょっとつらい内容で、付いていけなくなると単調で退屈かもしれない。

 ロバート・デ・ニーロが監督するというだけあって、出演者がすごい。マット・デイモン、アンジェリーナ・ジョリーのほかにも、マット・デイモンの部下に「ミラーズ・クロッシング」(Millor's Crossing・1990・米)のジョン・タトゥーロ。CIAの長官が「アルタード・ステーツ/未知への挑戦」(Altered States・1979・米)のウィリアム・ハート。自殺したマット・デイモンのの父に「普通の人々」(Ordinary People・1980・米)や「タップス」(Taps・1981・米)のティモシー・ハットン。

 FBI捜査官は「ザ・ワイルド」(The Edge・1997・米)のアレック・ボールドウィン。イェール大学の教授は「ハリー・ポッター」シリーズの新ダンブルドア校長のマイケル・ガンボン。ほんのちょっとだけ出るマフィアのボスは、「リーサル・ウェポン2/炎の約束」(Lethal Weapon 2・1989・米)のジョー・ペシ。

 印象に残ったのは、耳の不自由な女性ローラを演じたのは、タミー・ブランチャード。テレビで活躍していた人のようで、映画も日本公開された作品はほとんどない。今後の活躍に期待したい。

 製作総指揮のひとりが、フランシス・フォード・コッポラ。ロバート・デ・ニーロとは「ゴッドファーザーPart II」(The Godfather: Part II・1974・米)で監督と出演者として仕事をしている。さらに「フランケンシュタイン」(Frankenstein・1994・米)では、プロデューサーと出演者として仕事をしている。

 脚本はエリック・ロス。「フォレスト・ガンプ/一期一会」(Forrest Gump・1994・米)や「モンタナの風に抱かれて」(The Horse Whisperer・1998・米)、「ミュンヘン」(Munich・2005・米)などの感動作・話題作を手がけている人。

 さらに、プロデューサーは本作の製作会社でもあるモーガン・クリークの創設者、ジェームズ・G・ロビンソン。西部劇ブームを作った「ヤングガン」(Young Guns・1988・米)や傑作「ラスト・オブ・モヒカン」(The Last of the Mohicans・1992・米)の製作総指揮や、ジム・キャリーの出世作「エース・ベンチュラ」(Ace Ventura: Pet Detective・1994・米)のプロデュースなどを手がけている。最近はあまりパッとしない感じだったが、ついに本作を手がけたというところか。

 上映前に「ブレードランナー」風のドルビーデジタルのデモあり。ラストには上映フィルムは私たちが現像しましたと東京現像所の名前が出た。

 公開初日の初回、新宿の劇場は40分前に着いたら当日券の列に20人くらい、前売り券の列に7人ほど。予想していたが若い人は少なく、女性もほとんどいなかった。7人に1人くらい。ほとんど中高年の男性。35分くらい前になって案内があり、最初に当日券の窓口が開く。30分前に開場になって場内へ。

 初回のみ12席×2列のカバーの席も含み全席自由。スクリーンはビスタ・サイズで開いていた。最終的には1,044席に4割くらいの入り。派手な作品ではないので、まあまあの入りといっていいだろう。

 ちなみに、グッド・シェパードとは「良いシェパード犬」から転じて、スパイの意味の犬かと思ったら、違っていた。「私は良い羊飼いである。良い羊飼いは羊のために命を捨てる」という新約聖書のキリストの言葉の引用、なんだそう。主人公は良い羊飼いたらんとしたということらしい。

 半暗になって始まった予告編で気になったものは……なんと「Mr.ビーン」がスクリーンに帰ってくるらしい。「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」前作はTV版の方がおもしろかったので、今度はがんばって欲しいもの。

 上下マスクの「バイオハザードIII」はやっと新予告に。それでも内容はわからないが、すごそうなのはわかった。とにかくゾンビがすごい数で、ミラ・ジョヴォヴィッチはカッコいい。

 ロバート・レッドフォードが監督する上下マスクの「大いなる陰謀」は、アフガニスタンでのテロとの闘いを描いたものらしい。ロバート・レッドフォードはもちろん、トム・クルーズ、メリル・ストリープ、マイケル・ペーニャ、つい最近「ザ・キングダム」を監督したピーター・バーらが出演する。これは見たい。2008年4月公開らしいが、もう予告編を流すんだ。「政治家も問題だが、何もしない我々も問題だ」というセリフがグサリとくる。

 上下マスクの「ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記」も新予告に。主人公ゲイツの先祖がリンカーンを殺したとか。なかなか面白そう。公開が近い「ボーン・アルティメイタム」も新予告。カットが速過ぎて目が回る。何が何だか良くわからなかったが、カッコは良さそう。

 暗くなって、スクリーンがシネスコになって、リドリー・スコット監督の「アメリカン・ギャングスター」の予告。デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ、キューバ・グッティング・Jrと豪華顔ぶれ。内容はほとんどわからなかった。公開はまだ先なのか。


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