Stardust


2007年10月27日(土)「スターダスト」

STARDUST・2007・英/米・2時間08分(IMDbでは英版130分、米版128分)

(日本語吹替版もあり)

日本語字幕:丸ゴシック体下、古田由紀子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision[IMDbではレンズ、in Panaavision])/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(英PG指定、米PG-13指定)

公式サイト
http://www.stardustmovie.jp/
(音に注意)


イギリスの片田舎にウォールという名の小さな町があった。その外れには長大な壁が張り巡らされており、それを超えて外の世界に行くことは禁じられていた。しかし、ある時、ダンスティンという若者(ベン・バーンズ)がそれを超えて、魔法の世界ストームホールドへ入って行った。そこで若者は魔女にとらわれた美しい女性(ケイト・マゴーワン)と恋に落ちる。若者がウォールへもどって9ヶ月後、1人の男の赤ん坊がストームホールドから届き、名はトリスタンで、魔女の手から守るため人間の世界で育てて欲しいという。18年後、りっぱな青年に成長したトリスタン(チャーリー・コックス)は、片思いのヴィクトリア(シエナ・ミラー)にプロポーズするため、流れ星を持ち帰ると約束し、壁を越えてストームホールドへ行くが……。


76点

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 驚いた。豪華な出演者が売りのそこそこのおとぎ話風物語だろうと思ったら、思いっきりの渾身の大ファンタジー。素晴らしい冒険物語だった。まあ、ご都合主義で強引なストーリー展開だが、それはファンタジーの定石で、それを気にさせない面白さがある。そこが素晴らしい。

 見終わると、とてもハッピーな気持ちになるし、子供の時、よくこんな話を聞いたり、読んだりしたなあという郷愁もわいてくる。何か懐かしい感じ。子供にはこれくらいのホラ話(失礼!)を信じて大きくなって欲しい、そんな映画。

 冒頭の父親が青年のころはとても二枚目なのだが、その息子トリスタンがいまいちだなあと思っていたら、髪を長髪にしたらカッコイイの何の。さすが役者というか、そこを狙ったのだろう。つまり演出。ヒロインもどうかなと思っていたら、だんだんかわいくなってくる。主人公が片思いするヴィクトリアはめちゃくちゃ美人だが、性格ブスの設定で、あまり魅力的に見えないところも、やっぱり演出。

 なにより古き良きイギリスの風景が素晴らしいし、魔法もいい。ボクは「ハリ・ポタ」の魔法よりおとぎ話っぽくて良いと思う。そして世界観の作り方もうまい。ちょっと「ロード・オブ・ザ・リング」の強い影響も見られるけれど、壁で隔てられた魔法の国や、この世に縛りつけられている幽霊たち、世継ぎをめぐる骨肉の争い、空飛ぶ海賊、稲妻をあつめて武器にしたり、ユニコーンがいたり、星が魔法の世界では生き物だったり……。いいなあ。それを見せるSFXは、ちょいとお金のかけ方が少なかったようで、トップ・レベルではないものの、なかなかいい。ついでに、言葉がイギリス英語というのも、なんだか優雅というのか、独特のリズムがあって雰囲気充分。ちょっと気取った感じはするものの、アメリカ英語のような砕け過ぎた感じがしないのが、この物語では良い。

 主役のトリスタンを演じたのは、チャーリー・コックス。アル・パチーノがシャイロックを演じた「ヴェニスの商人」(The Merchant of Venice・2004・米ほか)に出ていたらしい。つい最近アート系劇場で公開されたヒース・レジャーの「カサノバ」(Casanova・2005・米)にも出ていたらしいが見ていない。

 流れ星というありえないキャラクターを演じたヒロインは、アメリカ生まれだけどクレア・デインズ。こういう役を真剣に演じているところが良い。これこそ役者だろう。誰の真似もできない。流れ星なんだから。想像力の豊かさが求められる。それをばかばかしいと思わずに真剣にやり通すこと。なかなかできない。最近公開されたアンドリュー・ラウ監督の社会派シリアス・ミステリーの「消えた天使」(The Flock・2007・米)では、等身大の公共安全局新人職員を好演。「ターミネーター3」(The Terminator 3:Rise of the Machines・2003・米)では、信じられない事件に巻き込まれる獣医を演じるなど、いろんな役に挑戦している。名門イエール大学で心理学を学んだんだそうな。頭が良いからこそなせる技か。アメリカ版「もののけ姫」(Princess Mononoke・1997・日)ではサンの声を担当した。

 片思いされる美貌のヴィクトリアを演じたのは、シエナ・ミラーという金髪美女。新ボンドのダニエル・クレイグのギャング映画「レイヤー・ケーキ」(Layer Cake・2004・英)や「カサノバ」に出ていたらしい。彼女もアメリカ人。

 先王を演じたのは、最近アート系で「ヴィーナス」(Venus・2006・英)が公開された名優ピーター・オトゥール。ちょっとバケモノじみてきちゃった感はあるけれど(失礼!)、75歳なんだからしかたがない。現役でいることの方が驚きだ。名作「アラビアのロレンス」(Lawrence of Arabia・1962・英)の人だからなあ。オードリー・ヘップバーンと共演した「おしゃれ泥棒」(How to Steel a Million・1966・米)も良かったなあ。比較的最近では「ラスト・エンペラー」(The Last Emperor・1987・伊ほか)のイギリス人教師役が印象に残っている。

 王の息子たちは7人いて、日本で言うと一郎、二郎みたいな名前が付けられているのに笑ったが、その長男プライマスが、ジェイソン・フレミング。恐ろしかった「URAMI 〜怨み〜」(Bruiser・2000・米)で強烈な印象を残した。内容的には残念だったSF「リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い」(The Leagueof Extraodinary Gentlemen・2003・米ほか)のジキル/ハイドや、SFアクション「ザ・グリード」(Deep Rising・1998・米)も良かったなあ。「レイヤー・ケーキ」にも出ている。

 最後まで生き残る七男セプティマスを演じたのはマーク・ストロング。ロマン・ポランスキー監督の「オリバー・ツイスト」(Oliver Twist・2005・英ほか)に出ていた人で、最近では真田広之の出たSF「サンシャイン2057」(Sunshine・2007・米)にも出ていたらしい。どうりで見た感じがした。

 おいしい役、空飛ぶ海賊シェイクスピア船長を演じているのが、最近自身の監督作「グッド・シェパード」(The Good Shepherd・2006・米)が公開された、アメリカ生まれのロバート・デ・ニーロ。本当は争いごとが嫌いだが、イメージだけは好戦的で強い男というイメージを作っているという設定も面白い。ぴったり合っていて、しかもとても重要な役。すばらしい。女装シーンも笑える。

 怪しげな商人のファーディを演じたのは、リッキー・ジャーヴェイスという人。音楽も、監督も、脚本家も、プロデューサーも訳者もやるという才人。TVでの活躍が多かったようだが、ベン・スティラーの「ナイトミュージアム」(Night at the Museum・2006・米/英)で厳しい館長を演じていた人(たぶん)。こんな面白い人だったんだ。

 スゴイのは、特殊メイクでガイコツ間近の年老いた魔女ラミアを演じたアメリカ生まれのミシェル・ファイファー。魔法で年相応の美しい姿にかえって見せるが、次第にまた元の醜い姿にもどっていく。その醜怪なメイクと来たら、オリジナルの顔がわからないほど。いくら49歳とは言え、熟女でこれを演じるのは相当の勇気が必要だったのではないだろうか。ほぼ同時に公開された「ヘアスプレー」(Hairspray・2007・米/英)でも意地の悪い嫌われ役を演じていたし、何か吹っ切れたのだろうか。役の幅が広がったことは間違いない。オッパイがたれるし……。

 ナレーションは、これまた驚いたことに、イアン・マッケラン。「X-メン」(X-men・2000・米)のマグニートをやってた人。数々の賞を受賞し、ナイトの称号を持っている俳優。「ゴッド・アンド・モンスター」(Gods and Monsters・1998・米)はすごかったなあ。

 監督はプロデューサーと脚色も手がけたマシュー・ヴォーン。ロンドン生まれで、なんと「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」(Lock, Stock & Two Smoking Barrels・1998・英)のプロデューサーで、出演もしているらしい。かなりリアルなギャング映画の「レイヤー・ケーキ」を監督・プロデュースしている。本作はファンタジーでまったく傾向が違うが(戦いのシーンは結構えぐい)、腕のある監督はどんな作品でも作れる言う証明だろう。

 原作はネビュラ賞受賞作家のニール・ゲイマン。脚本家も、プロデューサーも、監督もやっていて、今度公開される「ベオウルフ」の製作総指揮と脚本をやっているらしい。ちなみに「もののけ姫」(1997・日)の英語版の脚本を手がけたのはニール・ゲイマンだそう。

 公開初日の初回、新宿の劇場は45分前に着いたら、ジーサン1人にオヤジが2人。40分前に開場時間の案内があって、30分前にそれでも10人くらいに。オバサンが2人。キャストのせいなのか若い人はほとんどいない。まもなく開場になって、全席自由の場内へ。

 10分前くらいから増え出して、大学生くらいが1割りほどに。若い女性はわずかに2人。最終的には420席に3割りほどの入り。日本語吹替版は入っているのだろうか。もっと人が入っても良いと思うが。

 カーテンが開いて暗くなって始まった予告編では……「CGを一切使わないで」とか宣伝していた映画があったが、そんなことは観客には「そんなの関係ねー」わけで、使っていようがいまいが、映画が面白ければいいのだ。「CGを一切使わない」なんて製作者の自己満足に過ぎない。それをウリにするのは止めて欲しい。

 スクリーンがシネスコになって、「アーサーとミニモイの不思議な国」(・・)のちょっと大人になったフレディ・ハイモア少年が出てきて、「スパイダーウィック家の謎」が2008年に公開されるらしい。日本のサイトはまだない。またファンタジーだが、おもしろそう。

 アンジェリーナ・ジョリーが出てきたのはなかなかタイトルが出ずにいらいら。これじゃ覚えられないではないか。絵もあまりきれいではなく、なんなんだろう。たぶん「マイティ・ハート」だったと思うが。具体的な内容は良くわからない。実話の映画化で、亭主が誘拐されて待ち続けた妻の話らしい。


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