The Brave One


2007年10月28日(日)「ブレイブワン」

THE BRAVE ONE・2007・米/豪・2時間02分(IMDbではカナダ版119分)


日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定、日R-15指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/thebraveone/
(入ったら音に注意)


ニューヨークで暮らすラジオ・パーソナリティのエリカ・ベイン(ジョディ・ーフォスター)と、婚約者の医師デイビッド・キルマーニ(ナビーン・アンドリュース)はある夜、散歩中に暴漢に襲われ、デイビッドは死亡、エリカも重傷を負ってしまう。しかし警察はなかなか犯人像さえ割り出すことができない。退院したエリカはやがて護身用に闇ルートの銃を手に入れ外出の際持ち歩くようになる。そんな時、ショップで買い物中、夫婦げんかから夫が妻を射殺するという事件に遭遇し、自らも撃たれそうになったためその夫を射殺してしまう。


75点

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 さすがニール・ジョーダン監督作品。かなりショッキングな内容。すさみ切った社会で生きていくには、もはや自分で自分の身を守らなければならないのか。暴力には暴力で対するという決断。日本でも暴力団ではない一般人が銃を手に入れて発砲するという事件が起きており、もっと社会がすさむとこの映画のような事件も起きるのではないかと心配になる。そして日本は実際にすさんできている……。

 映画のコンセプトとしてはよくあるパターンで、法の力に頼らず自分の力で復讐するというもの。直接的にはチャールズ・ブロンソンのヒット作「狼よさらば」(Death Wish・1974・米)に始まる「デス・ウィッシュ」シリーズと同じ。こちらは妻を殺された夫の復讐物語だが。コミックが原作の「パニッシャー」(The Punisher・2004・米)もそうだし、日本の人気TV番組「必殺」シリーズもそう。昔から根強くある。法で裁けない悪をどう懲らしめるか。

 日本には中世ころから、武士の世界には「敵討ち」とか「仇討ち」という私刑制度があり、江戸時代には法制化され免状が発行された。「忠臣蔵」はいまだ年末になるとドラマ化されることがあるほど日本人の好きな話だ。明治になって初めて法律で禁止されることになったという。

 日本の「敵討ち」は別として、怖いのは、このような私刑を認めてしまえば、誰もがあちこちで殺し合いを始めてしまう恐れがあることと、冷静な判断を伴わない思い込みや勘違いによって間違った相手を殺してしまう恐れがあること。

 本作は主人公を女性としたことによって、より弱いものの立場という形が鮮明となり、自分の行為に悩む姿をより深く描くことができたのではないだろうか。

 彼女が闇のルートで仕入れる拳銃は、映画の中でもハッキリ言っているが、ちょっとグロックぽいカァー・アームズのK9。あまりメジャーなメーカーでもなく、デザイン的にはちょっとチープな感じだが、実は800〜900ドルもする高級品。有名なグロックなら400後半〜600ドルといったところだ。それを1,000ドルで弾付きで買っている。まあ9mmなら安い弾だと50発1箱15ドルくらいでスーパーで誰でも買えるから、本当のオマケという感じだろう。

 銃撃シーンは、すべてかなり怖い。テーマから行ってもここを気安く演出することはできなかっただろう。ただ、これでもまだオブラートに包まれて控えめな表現だろうということは想像できる。エンターテインメントである以上、なんでもリアルにすればいいというものでもないはず。

 ジョディ・フォスターの、悲しみと怒り、そして復讐の間で揺れ動く感じがすばらしい。さすがアカデミー主演女優賞を2度も受賞しただけのことはある。お約束なのかサービスなのか、美女が主役だと、ノーブラでTシャツというのが必ず1シーンはあるなあ。

 銃殺される彼氏を演じているのは、人気TVドラマ「LOST」でサイードを演じているナビーン・アンドリュース。ロンドン生まれだそうで、これからもどんどん映画に登場しそうだ。

 おいしいマーサ刑事の役を演じたのは、テレンス・ハワード。リチャード・ドレイファスの泣かせる映画「陽のあたる教室」(Mr. Holland's Opus・1995・米)が劇場長編映画のデビューだそうで、ポール・ハギス監督の傑作「クラッシュ」(Crash・2004・米)では、警官の嫌がらせを受ける黒人TVディレクターを演じていた。

 あまり重要な役ではないが、ラジオ局の上司はメアリー・スティーンバージェン。SFと切り裂きジャックを結合させた「タイム・アフター・タイム」(Time After Time・1979・米)にヒロイン役で出ていた人。「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3」(Back to the Future Part III・1990・米)ではドクの恋人を演じていた。楚々とした感じがこの人の持ち味。いい感じ。

 監督は名匠、ニール・ジョーダン。初期の作品「狼の血族」(The Company of Wolves・1984・英)はショッキングだったし、ボクは「プランケット城への招待状」(High Sprits・1988・米/英)も楽しめたし、とにかく「クライング・ゲーム」(The Crying Game・1992・英)は素晴らしかった。ハンマーで頭を殴られたぐらいの衝撃。こんな映画があったとは。どうかなという作品もあるが、とにかく強く感情を揺さぶられる作品が多い気がする。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、少し遅れて25分前に着いたらすでに開場済み。20人くらいが席に付いていた。ほぼ中高年で、男女比は7対3で男性が多かった。

 最終的には470席に3.5割りくらいの入り。確かに気持ちの良い話ではないが、これはちょっと少ないのではないだろうか。経営が変わったらシャンデリアが上がっていくイベントがなくなって、音楽だけになってしまった。

 カーテンが開き、半暗になって予告。「茶々 天涯の貴妃」は宝塚スター主演の時代劇だそうで、絵は何もなし。戦場カメラマンから始まった予告は、長めなのになかなかタイトルが出ない。結局最後に出たのは「ミッドナイト・イーグル」。内容がわかる予告になってきたら、ますます「ホワイトアウト」(2000・日)に似た感じで、織田裕二が大沢たかおで、松嶋菜々子が竹内結子という感じ。しかもお涙頂戴のところに重点を置いた予告はどうにも……。期待が薄れてしまった。アクション・メインじゃ女の子を呼べないということか。

 「バンテージ・ポイント」は8人の狙撃者それぞれの視点から狙撃を「羅生門」形式で描くというものらしい。興味津々だが、日本語サイトがまだない。デニス・クエイド、シガニー・ウィーバー、フォレスト・ウィティカー、ウィリアム・ハート、そして「LOST」の若き医師ジャック役のマシュー・フォックスも出ている。これは見たい。

 またまたファンタジーの「ウォーター・ホース」は、2008年の公開らしいが、どうもネス湖の恐竜を育てた子供の話のようだが、短過ぎて良くわからず。上下マスクの「アイ・アム・レジェンド」はそろそろ飽きてきた。オリジナルのチャールトン・ヘストンの「地球最後の男 オメガマン」(The Omega Man・1971・米)が気になる(これもリメイクらしいが)。


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