The Invasion


2007年10月21日(日)「インベージョン」

THE INVASION・2007・米・1時間33分(IMDbでは99分、米版93分)


日本語字幕:手書き書体下、雨宮 健/ビスタ・サイズ(with Arriflex & Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/theinvasion/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)


スペースシャトルが地球帰還の際、爆破炎上。機体は粉々になってワシントン一帯の広範囲に散乱した。しかも機体は汚染されており、飛散した破片に触れると感染の恐れがあった。政府は厳重な注意を促したが、破片はインターネットのオークションなどで販売され、あっと言う間に広がっていった。やがて、人の人格が変わってしまうという事例が報告されるようになり、精神科医のキャロル(ニコール・キッドマン)の4年前に別れた夫タッカー(ジェレミー・ノーサム)も全く人が違っていた。息子のオリバー(ジャクソン・ボンド)に会いたいと突然言われ、しぶしぶ同意するが、彼の狙っていたのは息子の同化だった。


71点

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 本作はスターであるニコール・キッドマンを主演にしたことによって、ある格を得た。同化された(感染した)人々からノーマルな(未感染の)人が逃げるスリルとサスペンス。

 ビデオ発売された「ボディ・スナッチャーズ」(Body Snatchers・1993・米)というか、「SF/ボディ・スナッチャー」(Invasion of the Body Snatchers・1978・米)というか、劇場未公開の「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」(Invasion of the Body Snatchers・1956・米)のリメイク。原作はジャック・フィニイの「盗まれた街」(早川書房・1955)。

 なぜ、こんなにも多くリメイクされるのか。カレン・ブラックの出たトビー・フーパー監督の「スペースインベーダー」(Invaders from Mars・1986・米)も似たような内容だし、ジョシュ・ハートネットが出たロバート・ロドリゲス監督の「パラサイト」(The Faculty・1998・米)も似ている。当然、その元ネタの「惑星アドベンチャー/スペース・モンスター襲来!」(Invaders from Mars・1953・米)もそうだし、ジョン・カーペンター監督の「遊星からの物体X」(The Thing・1982・米)と、その元ネタ「遊星よりの物体X」(The Thing・1951・米)もそう。ジョニー・デップとシャーリーズ・セロンの「ノイズ」(The Astoronaut's Wife・1999・米)もそんな内容。いちいちあげたらキリがないくらい。ようするに、キモは体を乗っ取られている人間が、外見からは区別がつかず、どうやって逃げ、どうやって敵をやっつけるかということだ。

 その点で言えば、本作は逃げるサスペンスはよく出来ている。特にニコール・キッドマンのような美女がおびえながら逃げるというのは、絵になるし見る価値がある。子供を連れて銃を持って逃げる姿はまるでジーナ・ローランズの「グロリア」(Gloria・1980・米)のようなカッコ良さ。ただ、それを優先するあまり、あちこちにほころびが出てしまった感じ。

 たぶん、感染源というか宇宙から来た未知の生命体というのは、ヒッチコックが言うところのいわゆる「マクガフィン」だろう。それが何かより、それによって起こるドラマが見せたいのだ。ところが、それに意味を持たせてしまったり、スポットを当て過ぎるとバランスがくずれ、マクガフィンに気が行ってドラマに集中できなくなる。本作の場合、宇宙の生命体の正体などどうでも良いのに、気になってしまう。なぜ、そんなに同化を急ぐのか。未感染の人を追いかけたりしたら、逃げられるに決まっている。ゆっくりと、たまたま接触できた人だけを何年も何十年もかけて同化していけば、気付かれることはないはずだし、確実に数を増やせる。同化すれば争いのない世界が訪れるといいながら、同化するために争っているのは矛盾だ。なぜ急ぐのか。彼らの目的は何なのか。本来はそんなことを知らなくてもドラマを楽しめるはずなのに。

 見どころとしては、ニコール・キッドマンがおびえて逃げ惑う姿と、着替えシーン、そして開巻まもなくのノーブラ、Tシャツ姿くらいか。

 ニコール・キッドマンがカードマンから手に入れる銃はベレッタM92。しかし銃が嫌いという設定らしく、数発撃ったら投げ捨ててしまうのは理解しにくい。救出に来るヘリコプターは大型のブラックホーク。なかなかの迫力。

 ニコール・キッドマンの別れた夫役にジェレミー・ノーサム。面白かった暗号をめぐるスパイ活劇「エニグマ」(Enigma・2001・独/英)やSFアクションの「カンパニー・マン」(Cypher・2002・米)に出ていた人。ハンサムなのに、どこか悪いヤツというようなイメージがある。

 ニコール・キッドマンの恋人役に、ニュー・ボンドことダニエル・クレイグ。ギャングの世界を描いた「レイヤーケーキ」(Layer Cake・2004・英)や巻き込まれミステリー「Jの悲劇」(Enduring Love・2004・英)、TVムービーの「アークエンジェル」(Archangel・2005・英)などで強い印象を残した。

 ニコール・キッドマンのかわいいブロンドの息子オリバー役は、ジャクソン・ボンド。本作が劇場映画デビューらしい。TVには出ていたようだ。ダンスがうまく、3歳からコンテストに出ているらしい。今後に期待したい。

 友人の医師にジェフリー・ライト。傑作西部劇「楽園をください」(Ride with the Devil・1999・米)で、黒人兵を演じていた人。シリアスなスパイもの「シリアナ」(Syriana・2005・米)や、「007/カジノ・ロワイヤル」(Casino Royale・2006・米/英)ではCIAのフェリックス・ライター役でダニエル・クレイグと共演している。ヒゲがないと上品なのに、ヒゲがあるとギャングっぽくなる。

 夫の異常を訴える女性患者にヴェロニカ・カートライト。ちょっと異常的な感じが実にうまい人。涙目が抜群。78年版の「SF/ボディ・スナッチャー」にも出ていたし(それで配役されたのだろうか)、「エイリアン」(Alien・1979・米)のd)おびえる女性隊員役は秀逸。色っぽかったぁ。最近はTVの仕事が多かったようだが。

 監督はオリバー・ヒルシュピーゲル。恐ろしい心理学実験を描いた「es[エス]」(Das Experiment・2001・独)や、組織崩壊をリアルに描いた「ヒトラー 〜最期の12日間〜」(Der Untergang・2004・独/伊)を撮った人。それで、なぜこうなってしまうのか。IMDbによると、つまらなかった「Vフォー・ヴェンデッタ」(V for Vendetta・2005・英/独)の監督、ジェームズ・マクティーグがクレジット無しで追加撮影を行っているという。ということは、ハリウッドに君臨する名手、プロデューサーのジョエル・シルバーと衝突したのだろうか。ジェームズ・マクティーグは監督になる前からジョエル・シルバーと多くの作品で仕事をしてきている。

 問題は脚本にもあったと思う。デイビッド・カイガニックは本作が初めての劇場長編映画。うむむ。

 オリバー・ヒルシュピーゲル監督だから、想像力を豊かにすると、バッド・エンディングにしてしまったのを、プロデューサーがハッピー・エンディングにしたとも考えられるが……。まっ、どっちにしても本作はオリバー・ヒルシュピーゲルっぽくない。

 公開2日目の2回目、銀座の劇場は30分くらい前に着いたらロビーに20人くらいの人。若い男性は3人、女性5人(そのうち若い女性2人)のほかは中高年男性。入れ替え5分くらい前に案内があったものの整列はなし。どうぞ、で一斉にあちこちのドアから入る。

 指定席なしの全席自由。ただスクリーンが低いので、座高の高い人が前に座るとやや辛い。最終的には360席に2.5〜3割ほどの入り。いくらニコール・キッドマンでもこの内容だとこんなものだろう。下は小学生くらいからいたが、意味がわかったのか。

 カーテンが開いて、暗くなって始まった予告編は……しょこたんや鈴木亜美が出ている、このミス第1位の映画化「エクスクロス」は、ちょっとコテコテの感じがするものの面白そう。予告では鈴木亜美がいい感じ。

 傑作「姑獲鳥の夏」(2005・日)の続編となる「魍魎の匣」も面白そう。第1作のままのキャラなら大歓迎だが、実相寺監督は亡くなってしまったし……ただ新監督は原田眞人監督なので、つまらないものにはならないと思うが。

 とにかく謎だらけというか、いままで気付かなかった点に注目させる予告がうまい「ナンバー23」は気になってしようがない。ジム・キャリーが笑い無しでシリアスに演じているらしいのも面白い。期待大。


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