Stormbreaker


2007年10月28日(日)「アレックス・ライダー」

STORMBREAKER・2006・独/米/英・1時間33分


日本語字幕:手書き書体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビーデジタル(IMDbではdts、SDDSも)

(米PG指定、英PG指定)

公式サイト
http://www.alexrider.jp/
(音に注意。入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)


14歳の中学生アレックス・ライダー(アレックス・ペティファー)は、両親を早くに亡くし、伯父のイアン・ライダー(ユアン・マクレガー)に育てられていた。その伯父の正体はイギリスMI6の諜報部員。しかし、ある日、IT事業で成功し、イギリスのすべての学校に無料で次世代型PCの「ブレインストーム」をプレゼントすると申し出たダリル・セイル(ミッキー・ローク)の会社を調査中に、正体がばれ命を落としてしまう。そんな時、伯父によって並外れた運動能力や語学力を身に付けていたアレックス・ライダーに目をつけたMI6は、PCオタク・チャンピオンを会社に招待するというセイルのPR活動に潜入させることにする。


72点

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 「スパイキッズ」(Spy Kids・2001・米)式の子供向けおふざけ作品か、まじめに作った作品か、予告からははかりかねたが、なんと子供が主人公のマジメ作品だった。といってもシリアスなドラマではなく、イギリス流のジョークが利いたロジャー・ムーアの「007」シリーズ・テイストな作品。冒険活劇といってもいいだろう。ちゃんと正統派として作ろうとしているところに好感が持てる。

 原作があって、「女王陛下の少年スパイ!アレックス」シリーズというのがそれ。作者はアンソニー・ホロヴィッツで、集英社から単行本と文庫本が6作まで出ているらしい。第1作が「ストームブレーカー」。なんと、本作の脚本も担当している。よくできているわけだ。

 原作もそうなのかもしれないが、とにかく少年スパイというありえない話にリアリティを持たせるべく工夫されているので、大人が見ても充分楽しめる。もちろん子供が見ても面白いと思う。

 伯父のおかげで、あらゆるスポーツ、マーシャルアーツが堪能で、英語のほかにフランス語、ドイツ語、日本語も話せるという設定に加えて、PCオタクの少年だけが招待されて工場に入れるということから少年がスパイになっても不思議ではない状況。さらに特殊部隊の訓練所で2週間の特訓を受けるシーンも入れ、大人スパイでもよくあるパターンを踏襲している。

 さらに良いのが、多くのスパイ映画のいいところを巧みに取り込んでいるところ。当然007をなぞっているところが多い。スパイ・グッズの数々や、カー・チェイス、ボンド・カー、ヘリvs自動車、女の刺客、イギリス式ジョーク(イギリスの男はゲイか妻帯者ばかりというのにも笑ったが)……。そしてナポレン・ソロのような、証明写真撮影機の秘密の入口から本部へ入って行く方法とか(ここはホグワーツ?と聞くのがいい)、世話役の女の子(アリシア・シルバーストーン)が自宅で訓練のために襲ってくるのは「ピンクパンサー」の中国人の助手か。帽子を投げるガードマンは「007/ゴールドフィンガー」(Goldfinger・1964・英)のハロルド坂田だろう。

 銃器もしっかりしていて、友情出演のようにちょっとだけ出ているユアン・マクレガーをアヴァン・タイトルで襲撃する男達が持っているのがシュタイアー・サブマシンガン。それを迎え撃つユアンはM92のシルバー2挺拳銃。ガラスが割れるとそれがタイトルになるというシャレた演出。手がけたのはマット・カーティスという人。最近では「スターダスト」のタイトル・デザインも手がけている。

 ほかにも、MI6のエージェントが持っているのはSIGのP226のようで、特殊部隊はM4カービン、MP5。軍はL85A1。スナイパー・ライフルはL96A1のようだった。悪のボス、アイシャドーを塗り、いつも爪楊枝だかマッチ棒だかをくわえて嫌らしさを増していたミッキー・ロークが持っていたのは、シルバーのデザート・イーグル。

 銃器類は、撃たないシーンではどうもトイ・ガンを使っていたようだ。M4のグリップがふさがっていたような……。アーマラーはダミアン・ミッチェル。間もなく公開の「フライ・ボーイズ」や「ライラの冒険」、「ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記」を手がけているらしい。

 すばらしい殺陣をつけたのは、なんとドニー・イェン。アクション監督という肩書きだ。どうりでカッコいいわけだ。かわいそうなタイトルが付けられた「かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート」(Dragon Tiger Gate・2006・香)が今年公開されたばかり。もっと国際的に活躍して欲しい。

 主演の少年は、アレックス・ペティファー。1990年、イギリス生まれの17歳。7歳からモデルとして活躍しているそうで、GAPなんかをやっているのだとか。本作の前にはTVに1本出ているようだが、本作では500人のオーディションを突破して見事に主役の座をつかんだらしい。次作はすでに撮影が終了しポスト・プロダクションに入っている。

 MI6の堅物課長だか部長だかを演じているのが、怪優という感じのビル・ナイ。シリアスからとんでもない役まで何でもこなす人。最近では「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」(Pirates of the Caribbean Dead Man's Chest・2006・米)のタコ船長ディヴィ・ジョーンズや、傑作SFコメディ「銀河ヒッチハイク・ガイド」(The Hitchhiker's Guide to the Galaxy・2005・米/英)、吸血鬼アクションの「アンダーワールド」(Underworld・2003・米)の親玉を演じていた。シリアスものでは心当たるラブ・ストーリー「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米)や、ずっしりと重い「ナイロビの蜂」(The Constant Gardener・2005・英)などにも出演していた。

 悪の手先で、女ナチスみたいなキャラ、ナディアを演じていたのは、ミッシー・パイル。「チャーリーとチョコレート工場」(Charlie and the Chocolate Factory・2005・米)で、いつもガムをかんでいる女の子を連れたお母さんを演じていた人。傑作SFコメディ「ギャラクシー・クエスト」(Galaxy Quest・1999・米)あたりから映画に出るようになったらしい。それまではTVで活躍していた。ティム・バートン監督の「ビッグ・フィッシュ」(Big Fish・2003・米)にも出ている。

 恐ろしい口避け男を演じていたのは、「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・米ほか)のゴラム役で有名なアンディ・サーキス。第一次世界大戦ホラーの「デス・フロント」(Deathwatch・2002・英)でも恐ろしい役だったが、本作もほとんどしゃべらないながら、恐ろしい。

 アレックス・ライダーの伯父さん、ユアン・マクレガーを殺す殺し屋はダミアン・ルイス。演劇学校でユアン・マクレガーと同期だったらしい。気持ち悪いホラー「ドリームキャッチャー」(Dreamcatcher・2003・米)で宇宙人にとりつかれる男を演じていた。その無表情がとても印象的で怖かった人。本作でも無表情な殺し屋で、ちょっと怖い。傑作戦争TVドラマの「バンド・オブ・ブラザース」(・2001・)でメインのキャラクターを演じた人。

 監督はジェフリー・サックス。マイケル・キートンが主演した超常現象ホラー「サイレントノイズ」(White Noise・2005・加ほか)を監督しており、本作とは全くタッチが違う。つまりうまい人なんだろうなと思う。ひょっとしたら映画オタクなのかも。TVはとてもたくさん手がけている。「サイレント……」はかなり怖かったし、つい気になるような謎からグイグイと引き込んでいく手腕は素晴らしかった。今後も期待だろう。

 公開2日目の2回目、銀座の劇場は全席自由ながら、前売り券も当日券と引き換えが必要で、15分前に着いたらすでに開場済み。10人くらいが座っていた。最終的には435席に40人くらい。男女は半々くらいで、若い人は数人。もっと入っても良い映画。特に若い人は。宣伝不足と、子供だましではないアクションという方向で予告した方が良かったのでは。

 入場の時にプレゼントでアレックス・ペティファーの写真をもらったが、よくみると印画紙ではなくただの印刷。しかもポストカードになっているわけでもない。まっ、ポストカードをもらっても使い道はないが。

 ほぼ明るいまま始まった予告は……。「ヒッチャー」はどうかなあ。オリジナルをDVDで見た方が良いような気がするが。ルトガー・ハウアーが良かったなあ。

 デンマーク映画「アフター・ウェディング」は予告だけで泣けてくる。これはダメだ。見れない。「てれすこ」は新予告で、なかなか面白そう。吉田拓郎の歌をモチーフにしたという「結婚しようよ」はなんなんだろう。吉田拓郎の歌が20曲だか使われているらしいが、あとはまったく不明。野田秀樹が脚本と演出を担当した「野田版研辰の討たれ」が映画として公開されるらしい。予告ではとても面白そうだが、舞台は舞台で見た方が良いような。カナダ/フランス映画の「中国の植物学者の娘たち」は、ミンとアンのレズ関係を描いた映画で、上下マスクの中国のお話。かなり暗い感じ。

 暗くなって、スクリーンがシネスコになって、「モーテル」の予告。止まったモーテルに殺人ビデオがあって……という内容。かなり怖そうだ。そう言えばケイト・ベッキンセールの相手役、ルーク・ウィルソンの兄のオーウェン・ウィルソン(近作「ナイトミュージアム」)が自殺未遂騒動を起こしていて、それが気になったり。


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