続・三丁目の夕日


2007年11月4日(日)「ALWAYS 続・三丁目の夕日」

2007・日本テレビ/ROBOT/小学館/バップ/東宝/電通/読売テレビ/読売新聞/白組/IMAGICA/STV、MMT、SDT、CTV、HTV、FBS・2時間26分

シネスコ・サイズ(ARRI 535)/ドルビーデジタル


公式サイト
http://www.always3.jp/
(全国の劇場案内もあり)

昭和34年、東京タワーが完成して間もなく、夕日町三丁目の駄菓子屋、茶川商店に、川淵社長(小日向文世)が息子の淳之介(須賀健太)を連れ戻しに来る。成績も良い息子に良い教育を受けさせるには経済的な裏付けが必要だというのだった。しかし淳之介は絶対嫌だ、茶川(吉岡秀隆)と一緒にいる聞き入れず、茶川はしっかり育てる約束を証明するため、芥川賞をとることを宣言する。鈴木オートも協力すると申し出るが、ちょうどそのころ、鈴木オートは親戚の子を預かることになりお嬢様育ちの我がまま娘(小池彩夢)がやってくる。

76点

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 前作を見た人の期待を全く裏切らない、実に昭和30年代があふれた作品。この昭和ノスタルジーは半端じゃない。この時代に少年時代を過ごした人には、町並み、生活、遊び、仕事、近所付き合い、風俗、モノ、親子関係……いろんなものが見ているだけでもたまらないのではないだろうか。昭和の色調、そして3D-CGが素晴らしい。古いTOHO SCOPEのマークから始まるのも○。

 茶川の芥川賞挑戦を縦軸に、親戚の女の子の出現、茶川の恋、六子のボーイフレンド、サギ話、給食費問題、同窓会などを横軸に折り込んで、みごとに昭和30年代を作り上げて見せた。懐かしさに加えて、温かい人情とそれにまつわる笑いあり、涙ありの感動ストーリー。ラストではあちこちで鼻をすする音が聞こえていた。

 ただ、あえて言うと、ちょっと詰め込み過ぎの感じもあって、話のレベルが個人的過ぎるというか、小さい感じがしてしまった。TVのファミリー・ドラマを高級にしたような感じというか。前作もよく考えてみると個人的な話だったのだが、あまりそんな感じを受けなかった。なぜなんだろう。映画としてはもう少しスケールの大きな話、たとえば三丁目の地上げとか、町内会くらいの問題だと良かったのかも。

 意外で面白かったのは、アバン・タイトルの「ゴジラ」のシーン。3D-CGなんだけれど、1980年代以降に作られた劇場版「ゴジラ」シリーズの中で、一番良かったような気がする。1954年の第1作の雰囲気で、はっきり言って迫力はあるし、なにより怖い。そのまま見たいと思ったほど。

 新しい登場人物としては、顔見せ的なゲスト出演は別にすると、鈴木オートの親戚の少女、鈴木美加役の小池彩夢が良かった。多少ステレオタイプではあるけれど、実在感があった。憎たらしいのに最後ではかわいい。お得な役だ。

 また学校の女教師役、吹石一恵もいかにもいそうな美人先生で、出番は少ないが印象に残った。醒めたというか、クールな踊り子仲間の梅子を演じた手塚理美も言い役。わずかしか出ていないのに印象に残る。ただどんな役かは最初の意地悪さ加減から想像が付いてしまうが。そして田舎の同級生、浅利陽介。ボクは初めて見たのだが、今風の男の子なのに、スクリーンの中では当時の田舎から出てきた少年のようにしか見えない。素晴らしい。この映画全体に言えることだが、この雰囲気がすごい。

 相変わらず素晴らしいのは、鈴木オートの直情径行型のお父さん堤真一と、理想的な優しいお母さんの代表、トモエ役の薬師丸ひろ子。主役となる吉岡秀隆はわざとらしい漫画チックな演技なのに、最後にはしっかり感動させる。これが不思議だ。メインの子役二人、須賀健太と小清水一揮は完全に大人の役者を食ってしまっている。うま過ぎ。堀北真希は東北弁が板について来た感じではあるが、田舎者のボクに言わせれば、田舎者はできるだけ標準語で話そうとするのが普通で、こんなに訛り丸出しで標準語を無視するような話し方はしないと思う。その分、キャラクターに説得力がなく、今回はドラマにもあまり深く関わらず、損をしている。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は45分前に着いたら、当日券売り場に7〜8人、前売り券の列に5人ほど。別れて並ぶように案内していた。これはわかりやすい。だいたい30代くらいの人が多いようで、この映画の時代設定からすると若い感じ。男女は半々くらい。

 30〜35分前くらいから人が増え出して、30分前には当日券、前売り券ともに30人くらいの列に。結局はほぼ中高年となった。これは納得。あまり普段映画を見ないような人が多いような気がした。並び方に馴れていない。まもなく当日券の窓口が開いて、チケットを買った人は前売り券の列の後へ。20分前にようやく開場して、場内へ。

 スクリーンは大きめで高く、座席が千鳥配置になっているにも関わらず、ここも古い劇場なので前席がジャマになってスクリーンが見えにくい劇場、当然指定席はない。イスも小さいし。チラシをほとんど置いておらず、売店も古いタイプ。そういう意味では、この映画には合っているかも。最終的には586席の7〜7.5割りが埋まった。さすが。下は小学生くらいから、中心は中高年。

 暗くなって始まった予告編は、第4回「このミス」の大賞作品「チーム・バチスタの栄光」が、阿部寛、竹内結子で映画化されるらしい。予告(特報)だけでは、良くわからなかった。なんでも10月にクランクインしたばかりらしいし(!)

 上下マスクの「銀色のシーズン」は、雪山版「海猿」のように出たが、見た感じは第2の「わたスキ」のような雰囲気。ただ「わたスキ」よりはトゲトゲしているというか喧嘩口調が気になった。これが時代の反映なのか。

 スクリーンがシネスコになって左右マスクで上映されたのは、山古志村で実際にあった話を映画化したという「マリと子犬の物語」は、ボクは予告編だけで泣けて、とても本編は見られないなあ。とにかく犬たちがかわいいし、けなげ。ただ(地震で)犬たちが取り残されて自分たちの力で生き延びて、という内容は「南極物語」(1983・日)と一緒。アメリカ映画などでは必ず犬も連れて脱出するから、こういう話が成立しにくい。ハリウッド版「南極物語」(Eight Below・2006・米)でもそこのところを苦労していた。うーん国民性の違いか……。


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