The Death and Life of Bobby Z


2007年11月18日(日)「ボビーZ」

THE DEATH AND LIFE OF BOBBY Z・2007・米/独・1時間36分(IMDbでは米版97分)

日本語字幕:手書き書体下、伊原奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、with Panavision)/ドルビーデジタル

(米R指定)

公式サイト
http://www.sonypictures.jp/movies/bobbyz/index.html
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

DEAの捜査官クルーズ(ローレンス・フィッシュバーン)は、麻薬組織の大物ワテロ(ヨアキム・デ・アルメイダ)に捕らえられた相棒と人質交換するため、カリフォルニアの麻薬王ボビーZ(ジェイソン・ルイス)と差し出すことになった。しかしボビーZは当局の捜査の手が及ぶのを恐れてタイに逃れ、タイで心臓発作のため死亡していた。そこで、長期服役者の中から外見が似ていて、しかもギャングたちから命を狙われている元海兵隊員のティム・カーニー(ポール・ウォーカー)を、刑務所から出してやるということでボビーZに仕立て上げることにする。

75点

1つ前へ一覧へ次へ
 普通のB級映画かと思ったら、もっとずっと面白かった。さわやかで痛快な大冒険活劇といった趣。ほとんどは主役であるポール・ウォーカーの明るさやさわやかさによる所が大きいと思う。憎たらしい悪人たちと、微妙なギャグのバランスが絶妙。アクションとは言っても残酷だけじゃない。

 ストーリーとしては、B級映画によくあるパターン。身代わりにされた男が、いつのまにか本人になりきり、ついには超えてしまう。そこにギャングと警察と美女と子供まで絡んでくれば、もう満点盛り状態。ありふれたストーリーでも、ちょっと素敵なエピソードと素晴らしい演者と演技、適切な演出、そこそこの予算があれば面白い映画が作れるということだろう。楽しめた。クリスマス・シーズンに突入した今見るにはピッタリの映画ではないだろうか。なんだかハッピーな気分になれた。

 よくあるパターンでは、身代わりの男は1人2役でうり二つが相場だが、本作では本当に雰囲気が似ているだけで、別人を使っている。ここがおもしろい。観客と主人公たちもそれを知っているから、知り合いが出てくればいつ正体がバレるかハラハラドキドキ。最初からバレているのではないかという疑いさえあるから、主人公がどうやって切り抜けるのか目が離せない。

 もう1つの仕掛けとして、刑務所にいるとは言え本当は悪いヤツではない主人公を強調するため、子連れで「グロリア」(Gloria・1980・米)のように逃げることになる。そして、やっぱり子供が助けてくれることに。お互い血が繋がっていないことはわかっているのに、「パパ」と呼んで抱き合うところなど感動させられる。なにしろポール・ウォーカーは金髪、子供はメキシコ系で、どう見ても似ていないのだ。ボビーZも金髪なわけだが……。

 さらに、刑務所内の避けられない喧嘩でバイカー(暴走族)のボスを殺してしまい、麻薬マフィアばかりかバイカー・ギャングからも追われることになり、なぜか刑事を殺害した罪まで着せられて警察からも追われることになるという三重苦。

 主演のポール・ウォーカーは、1年くらい前ハリウッド版「南極物語」(Eight Below・2006・米)でもさわやかな笑顔を見せていた。「ワイルド・スピード」(The Fast and the Furious・2001・米)で一躍スターの仲間入りをはたしたが、「ザ・スカルズ/髑髏の誓い」(The Skulls・2000・米)でも光っていた。ただ、本作の長髪はイケてない。すごいのは目を殴られた特殊メイク。アザや傷だけでなく、瞳の横の白目の部分に血の塊までできている。これはリアル。ビックリした。

 とんでもないDEA捜査官は「マトリックス」シリーズのローレンス・フィッシュバーン。あまり出てこないのだが、すごい存在感。そして怖い。

 美女エリザベスは、ちょっと緑がかったブルーの眼が美しいオリヴィア・ワイルド。アメリカの人気番組「The OC」などTVで活躍している人で、映画では「カンバセーションズ」(Conversations with Other Women・2005・米/英)に出ていたらしい。

 マフィアのボス、ワテロは「24」シーズン3でも本作と似たような役を演じたヨアキム・デ・アルメイダ。メキシコ・マフィアはなかなか怖い。そのワテロに使われている小ボスはジェイソン・フレミング。つい最近「スターダスト」(Stardust・2007・英/米)で王の息子プライマスを演じていた。ワテロの部下のカウボーイ頭に、TVドラマ「燃えよカンフー」のデビッド・キャラダインの義理の兄弟キース・キャラダイン。最近あまりパッとしないようだが代表作はリアルなウエスタンの「ロング・ライダース」(The Long Riders・1980・米)だろうか。いい感じの憎たらしい悪役を好演。

 狂言回し的に、物語の最初と最後に登場するホームレス風の男は、ブルース・ダーン。ダグラス・とランブル監督のSF「サイレント・ランニング」(Silent Running・1972・米)で主役を演じた人。悪役の多い人だが、娘も役者でローラ・ダーン。ただし、ヨーロッパ版と日本版にしか登場しないそうで、アメリカ版には出てこないらしい。おとぎ話的な印象を避けたのだろうか。

 DEAの捜査官クルーズが使うカービンはM4、ワテロの部下は黄金に輝くベビー・イーグル。バイカーの殺し屋が使うのは、たぶんS&WのM500マグナム8インチのスタンダード・コンペンセイター・モデル。スクリーン初登場ではないだろうか。ポール・ウォーカーが使うのは、海兵隊という設定からか、ガバメント・カスタムのシルバー・フレーム。ただこれを落としてしまう。構えはウィーバーで、決まっていた。しかもドット・サイトをつけたM4をタクティカル・スリングで下げ、ちゃんとトリガー・フィンガーをのばしてプロらしい所作を見せる。特訓したのだろう。キース・キャラダインはカウボーイらしくウインチェスターM94を使用。ワテロは後半ベレッタM92FSも使う。

 素晴らしい殺陣はパット・ミレティッチという人。総合格闘技UFCの第一人者だそうで、悪役の1人として出演もしているらしい。間抜けな役だそうだが、M500を持ったバイカーだろうか。荒野での西部劇風の待ち伏せをしての格闘戦は特に素晴らしい。

 原作小説があって、書いたのは脚本家でもあるドン・ウィンスローという人。脚本はボブ・クラコワーとアレン・ローリンスの2人。どちらも劇場長編映画の脚本は初めてらしい。

 監督はジョン・ハーツフェルド。ジェームズ・スペイダーが殺し屋を演じた群像劇「2 daysトゥー・デイズ」(2 Days in the Valley・1996・米)の脚本と監督をした才能ある人。また恐ろしいポリス・アクションの「15ミニッツ」(15 Minutes・2001・米)の脚本と監督もやっている。本作が面白いのは当然といえば当然。なんでこんな地方公開のみのような扱いなのか理解に苦しむ。


 公開2日目の初回、豊洲の劇場は前日に座席予約をしておいて25分前くらいに着いたらすでに開場済み。スクリーン・サイズやスクリーンまでの距離、床の傾きなどわからずに選んだため、場内に入ってみるとスクリーンが意外に大きく近過ぎた。しかし全席指定で移動できない。しかもシネスコとは……。

 最終的に109席にわずか6人ほど。4人が女性で、30代くらいとオバサン。男はオヤジ。もっとドカンと入って良い映画だと思うが、都内の劇場じゃ予告をみた記憶がないし、チラシも置いてなかったし……あんまりの扱い。

 10分前から案内が上映されるのだが、これがしゃべりっぱなしでうるさい。気になって本も読めない。せめて文字と音楽だけにして、始まるまでは静かにして欲しいなあ。しかもビデオ予告は画質が悪い。本編前の予告のビデオ予告はそんなに酷くないのに。音は素晴らしく良い。クリアで、特に重低音の迫力はスゴイ。体が振動するほど。

 少し暗くなって始まった予告では……「アイ・アム・レジェンド」は上下マスクで新予告。この劇場だとすごい迫力。そうか、ゾンビ物か。ヴォルデモート卿みたいなのが、それも群を成して……。

 「ナンバー23」も長い新バージョン。なるほど、だんだんわかってきた。主人公の思い込みというオチだけは止めて欲しいが、どうなのか。

 入場プレゼントで大判ポスターをもらった。


1つ前へ一覧へ次へ