Flyboys


2007年11月18日(日)「フライボーイズ」

FLYBOYS・2006・米・2時間18分(IMDbでは140分)

日本語字幕:手書き書体下、小寺陽子/シネスコ・サイズ(HDCAM SR、Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.flyboys.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり……うまく表示されなかった)

1916年、テキサスのローリングス(ジェームズ・フランコ)は牧場を差し押さえられ、銀行家を殴ったため町を出ないと逮捕されることになってしまう。たまたま映画館のニュースでヨーロッパの戦場で全米からフランス空軍に参加する若者たちがいることを知り、自分も参加することを決意する。アメリカ人のパイロット希望者はまとめてセノール大尉(ジャン・レノ)率いるラファイエット飛行中隊に配属される。

76点

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 犯罪を犯してアメリカにいられなくなった者や、名家の名誉のため、良くしてくれたフランスへの恩返しのため……それぞれの理由を抱えて他国の戦争に参戦する若者たちの物語。一言でいえば、まさに青春映画。若者たちは戦場という極限状況の中で一人前の男として成長し、恋をし、友情を深めていく。出来過ぎの話のような気もしたが、驚いたことに実話の映画化。

 おそらく、複葉機によるスリリングで大迫力の空中戦の多くは、3D-CGによるものだと思う。しかも広大な荒れ地と化した戦場の風景などもCGの合成だろう。そしてそれがたくさんあることから、ハイビジョン・デジタル・ビデオ・カメラで撮影されたのだろう。フィルムと全く違和感はないし、言われてもデジタルであることはわからない。画質も大変優れている。

 テキサス州で自分の牧場を失い、銀行家を殴ってフランスへやってきた主人公ローリングスを演じたのはジェームズ・フランコ。「スパイダーマン」(Spider-man・2002・米)シリーズでピーター・パーカーの友人ハリー・オズボーンを演じた人。本作では、最初は斜に構えているのだが次第に自覚を強め、飛行隊のリーダーへと成長していく。しかも墜落した時助けてくれたフランスの女性と恋に落ちる。幼い子供たちとの交流も素敵だ。

 ネブラスカ州リンカーンのジェンセン家の息子で、婚約者のローラと別れ、必ず生きて戻ってくると約束してやってきたウィリアム・ジェンセンを演じたのはフィリップ・ウインチェスター。ハリウッド実写版の「サンダーバード」(Thunderbirds・2004・米)で長男スコットを演じていた人。出撃した時、後ろからドイツ機に襲われて首に怪我をしてから精神的障害で飛行できなくなってしまう。自分たちを空の騎士だという。

 本国での人種差別を逃れフランスのマルセイユでプロ・ボクサーとして活躍、フランスに恩返しがしたいと志願する黒人スキナーを演じたのはアブダル・サリス。マシュー・マコノヒーの冒険アクション「サハラ」(Sahara・2005・英ほか)や群像ラブ・コメディの「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米)に出ていた人。空に憧れ、ついにはアメリカに戻って民間航空パイロットの先駆けになる。

 ニューヨークの名家の息子で、ハーバードを中退したため厳格な父によってフランスに送られてしまうぽっちゃりお坊ちゃまブリッグスを演じたのはタイラー・ラビーン。クリスチャン・スレーターの傑作B級サスペンス「ヘッドハンター」(Pursued・2004・米/加)に出ていた人。最初は人種偏見を持っているが、スキナーに命を助けられ、心を改める。

 赤シャツを着て生意気な感じだが、過去に何か秘密を隠しているビーグルを演じたのは、デヴィッド・エリソン。出演作が日本劇場公開されたのは本作が初めてらしい。ちょっと「さまよう魂たち」(The Frighteners・1996・米)のジェイク・ビューシーに似ている。

 ベテランの古株、多くの戦友を失い復讐に燃えるキャシディを演じたのはマーティン・ヘンダーソン。つい最近、猛烈アクション「スモーキン・エース」(Smokin' Aces・2006・米)や、痛快バイク・アクション「トルク」(Torque・2004・米)で主役を演じ、ハリウッド版リメイク「リング」(Thje Ring・2002・米)でナオミ・ワッツの恋人を演じた人。1人醒めた視線で、後輩たちを指導していく。なぜか宿舎となる城でライオンを飼っており、最後にはものすごい生きざまを見せてくれる。IMDbのトリビアによると、実際のラファイエット飛行中隊には2頭のライオンがいたらしい。映画と同じウィスキーと、ソーダといったという。

 部隊長のラノール大尉を演じたのは、かつてはクセもの俳優だったジャン・レノ。最近ではすっかり落ち着いた大ベテランの大御所といった感じ。リュック・ベッソンの出世作「最後の戦い」(Le Delnier Combat・1983・仏)では何をやるかわからない怖さがあって、強烈な印象を残した。コメディから冷酷な悪役まで幅広い役を演じることが出きる。本作では、アメリカ人たちをフランス語も学ばないで来やがってとバカにしながらも、肝っ玉オヤジ的な役柄でカッコいい。こんなあたりからフランス外人部隊が誕生したのかという感じがした。

 主人公ローリングスの恋人ルシエンヌ役は、本作が長編劇場映画デビューというのジェニファー・デッカー。青春映画に恋愛は欠かせない。相手役は観客も恋するような女の子でなければならない。ジェニファー・デッカーはとても清楚で、いい感じ。彼女の棲む家にドイツ軍が進出してきて、脱出するくだりはハラハラドキドキ。そしてローリングスと終戦の祝いの時にパリで会おうと約束するのだが……。

 原案と脚本は、なぜかカメラマンのブレイク・T・エヴァンスという人。TVの撮影が多いようだが、TV番組も1本監督しているらしい。

 ほかに脚本はフィル・シアーズとデヴィッド・S・ウォード。フィルはほとんど新人のようだが、デヴィッドはうの傑作名画「スティング」(The Sting・1973・米)の脚本を手がけた人。アカデミー脚本賞を受賞している。さらに大ヒットした「めぐり逢えたら」(Sleepless in Seattle・1993・米)の脚本でもアカデミー賞にノミネートされた人。その脚本力が本作でも生きている。

 監督は俳優出身のトニー・ビル。2005年にも映画に出ているから、役者をやめてしまったわけではないらしい。大傑作「スティング」をプロデュースしているので、今回デヴィッド・S・ウォードに脚本を頼めたのかもしれない。監督デビュー作は、当時話題になった15歳の青春映画「マイ・ボディガード」(My Bodyguard・1980・米)。そして、クリスチャン・スレーターの大泣き恋愛映画の傑作「忘れられない人」(Untamed Heart・1993・米)もこの人の作品。そのあとTVの仕事が多かったようだが、この人は青春恋愛ものを撮らせると良いのではないだろうか。だから本作でも淡い恋が描かれているのだ、きっと。そしてうまい。

 プロデューサーのディーン・デヴリンは「マイ・ボディガード」に出ていた人で、その後プロデューサーもやり、「ユニバーサル・ソルジャー」(Universal Soldier・1992・米)の脚本を書いたりしつつ、「スターゲート」(Stargate・1994・米)、ハリウッド版「Godzilla」(Godzilla・1998・米/日)などを手がけている。最近では携帯電話をキーにした「セルラー」(Cellular・2004・米)を手がけている。

 登場する航空機は……主人公たちが乗るフランス軍の複葉機が1916年4月に登場したニューポール17。武装はイギリス製の7.7mmヴィッカース・マシンガンが1挺。発射速度は450〜600発/分ほどだ。対するドイツ軍はフォッカーDr.1三葉機。レッド・バロンこと撃墜王リヒトホーヘェンの真っ赤な機体が有名だが、本作でも敵役となる1機の黒塗り機を除いて全機が真っ赤。ただ、実際に戦場に登場したのは1917年の8月からだとか。観客が見分けやすいようにあえて採用したらしい。武装は7.92mm(8mmモーゼル)スパンダウ・マシンガン(マキシムLMG 08/15の連合軍名。実際には製造した工廠の名がスパンダウ)2挺。発射速度は500発/分。ほかにもツェッペリン飛行船や、大型の爆撃機も登場する。

 実寸大の飛行機は地上のみで、実際には飛んでいないようだが、モーション・キャプチャーされたという空中戦はすごい迫力。ただ、当時の複葉機はこんなにアクロバティックな飛行は出来ないらしい。良いのは、5発に1発など挿入されていた曳光弾(トレーサー)の煙の軌道(弾道)が描かれていること。これによって弾がどこに飛んでいるか観客も分かりやすく、緊張感が高まる。

 面白いのは、パイロットたちには搭乗前にハンマーと、3発だけ装填されたリボルバー、たぶん8mmオーディナンス(レベル)M1892を渡されること。ハンマーはマシンガンがジャムした時などに、オペレーティング・ハンドルをひっぱたくのに使うらしい。そしてリボルバーは被弾して火が出た時、焼け死ぬのを待つより先に自分で命を絶つのだという。これが後で効いてくる。

 トロッコのような機体に模した人力の訓練装置に乗って射撃訓練をするところも面白い。第二次世界大戦時、アメリカ爆撃機の機関銃手は横長のスクリーンを使う射撃訓練装置で練習し、それがシネラマへとつながっていくから、本当にこんな訓練をしていたのかもしれない。

 これはコレクターズ・エディションのDVDが出たら買いだなあ。

 公開2日目の2回目、豊洲の劇場はやはり前日に座席を確保しておいて、20分前に行ったら10分前にならないと入れないという。出直すと、ほとんど人が入っていない。予告が始まってから入ってくる人が多かった。じゃまになるので、早く入れるようにして欲しいなあ。

 最終的には114席に25人くらいの入り。下は小学生くらいからいたが、ほとんとどは中高年。女性は3〜4人。若い人は1〜2人。遅れてくるヤツが多いし、しゃべってるヤツはいるし、お菓子の袋をバキバキいわせるし、携帯を点けるヤツがいるし、マナーが悪い。シーマンのマナー告知は面白かったが、まったく効いていないらしい。スクリーンは大きめで、イスは結ったりで見やすく、音も良いんだけどなあ……。

 半暗になって始まった予告は……上下マスクの「ナショナル・トレジャー リンカーン暗殺者の日記」は新バージョン。おもしろそう。「ミッドナイトイーグル」は、冒険アドベンチャー・アクション路線ではなく、感動愛情路線の予告が気になる。そして、どうみても予告は織田裕二のアクション「ホワイトアウト」(2000・日)そっくりに見えてしようがなかった。「ホワイト……」は東宝系で、「ミッド……」は松竹系なんだけど。


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