Midnight Eagle


2007年11月25日(日)「ミッドナイトイーグル」

2007・ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン/松竹/ジェネオン エンタテインメント/テレビ朝日/朝日放送/メ〜テレ/北海道テレビ/新潟テレビ21/九州朝日放送/IMAGICA/USEN/デスティニー・2時間11分

シネスコ・サイズ(マスク、Arriflex)/ドルビーデジタル



公式サイト
http://www.midnighteagle.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

戦場カメラマンの西崎優二(大沢たかお)は戦場で心に大きな傷を負い、学生時代から好きだった山へこもるようになった。その間に妻を失い、1人息子の優(佐原弘起)は妻の妹で写真雑誌記者・有沢慶子(竹内結子)が奪うようにして引き取った。そんなある冬の日、西崎は山で謎の飛行物体が山頂付近に墜落するのを目撃、撮影する。大学の山岳部の後輩・東洋新聞松本支局の落合信一郎(玉木 宏)は、それがテロリストにより撃墜された米軍のステルス爆撃機B5、通称ミッドナイトイーグルとだとにらみ、2人で吹雪の墜落現場への取材に向かう。しかし、ミッドナイトイーグルには特殊爆弾が搭載されており、北の工作員部隊も日本国内に潜入し、現場へと向かっていた。さらに、事態を重く見た日本政府も、自衛隊の習志野の空挺部隊と松本の山岳部隊からなる特別部隊を編成して、吹雪でヘリが近づけない現場へ徒歩で向かわせる。

71点

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 うーん、感動する話だが、どうにもドラマがいまひとつかみ合っていない感じ。アクションはそこそこ良いと思うが……。

 どれだけ原作に忠実なのかわからないが、ドラマが付け足しのようで、納得できないというか、感情移入できない。確かにラストは感動的で、涙が流れそうになるが、それはそこだけでの話で、それまでの積み重ねが生きているわけではない。規模は違うが、なんだかマイケル・ベイ監督作品のよう。小説では違和感がなくても、実際に映像化するとつじつまが合わないというか、展開のおかしい部分が出てくるもの。そこが強調されてしまった感じも。

 冒頭の中東辺りのような戦場での少年とのエピソードは、いかにも作ったような話で、リアル感がない。設定ばかりか映像としてもあまり出来が良くなく、同じ監督が撮ったのか疑問を感じた。原作を読んでいないのだが、そもそも主人公が戦場カメラマンという設定がそぐわない。むしろ雑誌記者の方が自然。しかもわずかな登場人物のうち3人くらいもが、主人公の撮った戦場写真集を見て感動して人生が変わったみたいなことを言うわけで、都合良過ぎでしょう。それに以前、大沢たかおってTVか何かで戦場カメラマンの役、やってなかったっけ。

 さらに良くないキャラクターが竹内結子が演じる有沢慶子。ものの言い方がすべて上から。上目線。何様なんだと、観客は反感を覚えてしまう。しかもラストで日本的に逆の意味で「許しません」などと言うのだが、はたしてそれでいいのか。さらには、明らかにテロリストと思われる銃を持った負傷した男女をホテルにかくまうのだが、どう考えてもこれは重大犯罪。自分の記事のためなら平気で犯罪を犯すキャラ。それでいて公安に彼らを売ったと思われたくないとか、支離滅裂なことを言う。一体どの立場の人間なんだろう。

 そして大事な場面で政府の中枢部に呼ばれて、何とむき出しのICチップ(静電気で壊れるんじゃないの)を渡すのは良いとしても、その後もずっと居座ってしまうとはどういうこと。せめて、山頂にいる3人の家族が全員来ているならばまだしも、なぜ慶子と優だけ? 「許しません」と言わせ涙を誘うため?

 どうもツッコミどころはたくさんあって、墜落してしばらくてっているはずのミッドナイトイーグルの機内ではまだ火花が飛んでいたり、無線の電池が無くなると機内から普通のACアダプターの端子がついた電源が見つかったりする。家の中で銃を撃っても通報されないし(今は本当にそうなのかも)……。ボクでもこれくらいは気になった。そしてもっとも気になったのが、冬期迷彩で真っ白の兵士を見つけて、どうして瞬時に自衛隊だとか敵だとかわかったのかということ。観客には(少なくともボクは)まったく見分けがつかなかった。持っている銃がアップにならない限り、どっちかわからない。

 救いは佐原弘起演じる優が、実にかわいい素直な少年だということ。この子が泣かせる。今どきこんなに素直な子がいるかと疑いたくなるほどの良い子。2000年生まれというから7歳。TVやCMには出ているようだが、映画は初出演らしい。すごい子だ。

 他の出演者では、自衛隊員を演じた吉田栄作が良かった。気取った感じが無く、演じているというポーズも感じられない。自然さがグッド。本来なら作戦本部と話をするのは彼になるはずが、応戦が忙しかったからか、主人公の一般人である西崎に取って代わられ、かわいそうだった。

 すごく気になったのは、出ている男性キャラの多くが無精ヒゲをたくわえていること。事件のためにヒゲが剃れず次第に伸びてきたというのではない。最初から無精ヒゲなのだ。1人とかなら気にならないが、ほとんどの男性キャラがそう。何なんだろう。

 脚本は長谷川康夫と飯田健三郎の2人。2人とも「ホワイトアウト」(2000・日)、「亡国のイージス」(2005・日)を手がけている。なるほど、話が似ている。と思っていたら、編集も「亡国のイージス」のウイリアム・アンダーソン。撮影は「ホワイトアウト」の山本英夫。録音も「ホワイトアウト」の小野寺修。視覚効果も「ホワイトアウト」の松本 肇。企画も「ホワイトアウト」の小滝祥平……という具合。あらら。

 監督は脚本家出身の成島 出。本作が監督3本目らしい。3本目にしてこの大予算とは驚かされる。ただ1本も見ていないので、なんとも言えない。

 原作は高嶋哲夫の同名小説。活劇に定評のある人らしいが、まだ読んだことがなく映画がどれだけ原作に近いのかも不明。ただ、言えることは、原作を読んでから映画を見ると、ほとんどの場合失望する。監督とのイメージの違い、予算や撮影の制限、一定の時間以内に収めなければならないことによる変更で、本を読んで受けた自分のイメージとは違ったものになるのが当たり前なのだ。

 北の兵士たちの武装はたぶんAK74とRPG-7、自衛隊は当然89式小銃。サイトは米軍のATN PVS-14ナイトビジョンのようだったが、どうだろう。だとすると価格は1本40万円くらいするのでは。ただ、これはドットやレティクルがないので、単独で使われることはないようなのだが……。米軍基地を襲ったテロリストが持っていて、その後なぜか慶子が持ち歩いてしまうピストルは、ちょっと大きい気もしたがたぶんマカロフ。戦場カメラマン西崎のカメラはフィルム・カメラのニコン。ボクの周りのプロ・カメラマンはみなデジタルだが、設定としてどうなんだろう。

 自衛隊が協力しているだけあって、ヘリは汎用ヘリのUH-1イロコイと攻撃ヘリAH-1ヒューイ・コブラが出てくる。スクランブル発進するのはF-15イーグル。

 公開3日目の初回、銀座の劇場はあらかじめ座席予約をしておいて30分くらい前に着いたら、ちょうど開場したところ。スクリーンはビスタ・サイズで開いており、10前くらいから劇場案内が上映された。

 2F席はすぐに20人くらいになった。ほとんど中高年の男性で、女性はほぼオバサンが2〜3人。あの予告だとなあ……。やっぱり硬派アクションで売った方が良かったのでは。最終的にはわずかに35〜40人くらい。

 半暗になってCMが始まったが、手すりのところに上着や荷物を置くなっちゅうの。目障りだし、危険。気になった予告編は……「ベオウルフ」は上下マスクで新予告。いくら本人そっくりとは言え、3D-VGは不気味で不自然。違和感ありまくり。ここまで似せてモーション・キャプチャーするんだったら、本人に演技させろという話。

 ローランド・エメリッヒ監督の新作、リアルなマンモスが群れで出てくる「紀元前1万年」は、まだ何が何だか良くわからない。ただすごそうな感じはあった。まだ日本語のサイトはないようだ。

 ティム・バートンの実写の新作は、ジョニー・デップとヘレナ・ボナム=カーターが共演する「スウィーニー・トッド」。残酷な復讐劇をミュージカルにするらしい。これって、ジョン・シュレシンジャー監督がベン・キングスレーで1997年に映画化してるよなあ。

 スクリーンがシネスコになって「ライラの冒険」はちょっと長い新バージョン。なかなかスゴイ。シネスコだと迫力が違う。早く見たいなあ。


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