XX


2007年12月2日(日)「エクスクロス 魔境伝説」

2007・エイベックス・エンタテインメント/STUDIO SWAN/東映/東映ビデオ/メモリースティック/アース・スターエンターテイメント/クオラス/東映チャンネル/宝島ワンダーネット/NEC BIGLOBE・1時間30分

ビスタ・サイズ(Arriflex)/ドルビーデジタル

(日PG-12指定)

公式サイト
http://xx-movie.com/index.html
(音に注意。入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

火請愛子(鈴木亜美)は、彼氏の浮気で落ち込む水野しより(松下奈緒)を誘い、秘湯の温泉宿へやって来る。しかし、ささいなことで喧嘩した2人は、別々に行動することになり、部屋へ戻ったしおりは突然、村人たちに襲われる。さらに愛子はハサミを持つ謎の女(小沢真珠)に襲われ、2人はバラバラに逃げ惑うことになる。

70点

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 音で脅かす映画。発生源不明の音がガンガン鳴る。だからそれほど怖くない。音がした時だけ怖い、というよりビックリするだけ。むしろ、真剣に怖がらせようとしていない印象。お笑いに走っている部分があり、中途半端な作品となってしまった感じ。アクションとしては面白い。

 本来、この手の作品はリアルな描写から始めて、徐々に異常な部分があらわになってきて、クライマックスで一気に盛り上がるというのが定石。ところが、アバンからいきなり全開の映像で、しかも音で脅かすだけだから、観客は全く付いていけない。乗り遅れる。しかもジェット・コースター・ムービーで休む間がないから、観客は追いつくことができずに、乗り遅れ状態のままラストを迎える。そしてそのラストが顔オチというのも、ホラーではなくコメディというよりギャグ映画の終り方。魔境伝説などという子供向けのようなサブタイトルが付いているのが気になっていたのだが、そういうことだったのか。

 構成は面白い。章分けというのはしっくり来ないが、ケータイをきっかけにある時点までさかのぼって主演の二人の女の子の視点を入れ替えるというのは、ちょっと「羅生門」(1950・日)的であって、事件を多面的に見ることができる。せっかくここがいいのに、ギャグに行ってしまった。怖い映画ができるところを、自ら足を引っ張ってしまったような……。

 まず冒頭の温泉キャンプ場のバンガローのおばあさんが、男なのでギャグなのか性同一性障害の人なのか考えてしまう。仮に女性という設定だとしても、若いのに顔に線を入れてシワとかを描いているわけで、まるで志村けんが演じるばあさんのようなのだ。この演出はどうなんだろう。ここから付いていけない。もし、本物のおばあさんで、あまり有名でない地味目の人が過剰演技でなく、ぼそぼそとしゃべるような感じで出てきていたら、相当怖かったのではないだろうか。ドアを閉める時に「イヒヒヒヒ」なんて笑うなんて、昭和の低年齢子供向けTVアニメくらいなのではないだろうか。まあ、万事この調子。

 主演の鈴木亜美と松下奈緒はとらかくがんばっていていいが、その真剣演技がこのギャグ調のホラーでは生きてこない。かわいそうなほど。特に鈴木亜美は体を張った格闘技にチャレンジし、なかなか見せてくれる。へっぴり腰ではなく、ちゃんと腰が入っていて本当に強そうに見えるところがすごい。かなり特訓したのではないだろうか。また殺陣師がうまく、撮り方が適切ということもあるだろう。残念なのは、温泉に入るためのバスタオル。これはやめて欲しい。今は普通に女性なら誰でもバスタオルを巻いて温泉に入るのだろうか。そうでないなら、裸で入っているように見える工夫をして欲しかった。TVのバラエティ番組じゃないんだから。

 最高に良いのは、かかしの絵。かかしには見えず、磔にしか見えないが、すばらしい。この調子で全部撮ってくれれば良かったのに。

 レイカというキャラクターは全く正体不明で、どうやってこの事件にかかわってきたのかもわからない。そのタフさ加減は半端ではない。徐々にならともかく、こちらも最初から全開。ジェイソンかフレディか、もはや人間を越えている。裁ちばさみを持っているだけでも普通じゃないのに、どこから持ってきたのか、身長くらいもあるどでかい裁ちばさみまで持ち出すので、彼女が出てきたら、もう笑うしかない。ショッカーの怪人みたいに爆発するし。リアルさなんて、そんなのカンケねー。

 ケータイでこの事件にかかわることになる物部昭という男は、小山力也が声をやっていて、まるで「24」のジャック・バウアーそのもの。それを狙っているふしがあるし。これもどうなんだろう。真剣に怖がらせようと思っているとは思えない。TVならいいけど……。

 音楽も、なんだかTVっぽいというか、わざとらしく、古くさい感じがした。

 原作は上甲宣之の「そのケータイはXX(エクスクロス)で」(宝島社)。この第1回ミスで話題になった作品だそうだが、こんなギャグのような感じなのだろうか。それに、何がXXなのかわからなかったが、説明する気はないらしい。エクスクロスって何?

 脚本は「デスノート」(2006・日)シリーズの大石哲也。TVの仕事が多いようだが、ケイン・コスギの「マッスルヒート」(2002・日)も大石の脚本。

 監督は「バトル・ロワイアル2 鎮魂歌」(2003・日)や「スケバン刑事コードネーム=麻宮サキ」(2006・日)の深作健太。

 公開2日目の初回、映画の日の翌日で、しかも舞台あいさつの翌日ということで空いているだろうと思って50分前くらいに着いたら、銀座の劇場は中年男性が1人。25分前に開場した時で、何とオヤジ3人のみ。あれれ……。「足を切り落とされるぞ」の予告では怖さが伝わらないなあと思っていたら、ホラーじゃなかった感じだけど、謎を残す予告の方が映画は良いと思うなあ。

 最終的には510席に30〜35人くらい。えっ、公開2日目の日曜日で! 見た人は怖いっていうより笑えるよ、と話すだろうから、これからも観客が増えるとは思えないのに……。若い男性は5人くらい。鈴木亜美と松下奈緒狙いは舞台あいさつの回に来ているか。女性は若い人が2人、オバサンが2人くらい。

 カーテンが開いて始まった予告は、「魍魎の匣」なかなか面白そう。登場人物も前作のままだが、監督が原田眞人になってどう変わるのだろうか。もしくは変わらないのだろうか。前作のちょっととぼけた感じとミステリアスなところが好きだったのだが。ただ「突入せよ!「あさま山荘」事件」(2002・日)の監督だから、ヒドイことにはならないと思うけど。

 「茶々 天涯の貴妃」は絵付きの予告に。衣装は豪華絢爛だが、どうにも宝塚男役調のセリフまわしが鼻について……。

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