Slither


2007年12月8日(土)「スリザー」

SLiTHER・2006・米・1時間36分(IMDbでは95分)

日本語字幕:手書き書体下、岡田壮平/ビスタ・サイズ(with Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R-15指定)

公式サイト
http://www.slither.jp/
(入ったら音に注意)

アメリカの片田舎の小さな町に隕石が落下する。そして、その隕石に付着していたタマゴ状のものが割れ、中からナメクジのような生命体がはい出す。たまたま通りかかった第一町人のグラント(マイケル・ルーカー)が近寄ると、生命体の背中のようなところから針のようなものが発射され、体内に入ってしまう。帰宅したグラントは湿疹状のものが現われたり、顔が腫れたりと次第に変貌を遂げていく。コミュニティ・スクール講師である美しい妻スターラ(エリザベス・バンクス)は、疑惑を持つが確信が持てない。そんな時、妹のブレンダ(ブレンダ・ジェームズ)が失踪し、グラントが目撃されていたことから、警察署長のビル(ネイサン・フィリオン)が事情聴取にやって来るが、グラントの姿も消えてしまう。

71点

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 一言でいうと、音で脅かすゾンビ映画。ストーリーもありきたり。ロバート・ロドリゲス監督の「パラサイト」(The Faculty・1998・米)と同じ。ただ同化されるとひと目でわかるゾンビになってしまう。そして強烈な空腹感に襲われ、肉を求めてさまようことになる。

 この手の映画はごまんとあるわけで、それだけB級映画向きの定番ストーリーなわけだ。問題はそのモンスターをいかにスゴク描くか、またクライマックスの戦いをどう見せ、いかに派手にやっつけて見せるか、そこにある。本作はかなりの低予算ながら宇宙生命体の15cmくらいの赤茶けた生命体を、まるでそこにいるように見せることで一応、成功している。

 マイケル・ルーカーなんていう性格俳優を配役したことと、美女たちと、お約束の入浴/シャワー・シーンと、最後の爆発までしっかりと入れて見せたことで、ちゃんとしたB級映画に仕上がっている。アクション・シーンはえげつないくらいで、それでいて残酷さはなく、ちょっと不謹慎だが笑って見られるようなところもある。

 決して志は高くないが、真剣に一生懸命作った感じ。そこは好感が持てる。ただ、いかんせん低予算。隕石とかいろんなものがチープ。そしてモンスターをチラシや前売り券、公式サイトなどでは緑として描いているが、本編ではオレンジ色系。まったく違う。これはなぜ?

 スターラを演じるエリザベス・バンクスは、確か「スパイダーマン」(Spider-man・2002・米)シリーズで、新聞社の経理担当だかの女性を演じている美女。感動競馬映画「シービスケット」(Seabiscuit・2003・米)では、美しくて優しい富豪の妻を演じていた。いきなり雰囲気の異なる本作での主演だが、体当たり演技でアクションもこなしている。際どいシーンもあって、今後期待したい女優さんだ。途中でレミントンの870のようにショットガンを手にするが、最後にはなぜか床に落ちているUSPかM92Fを拾って撃つ。

 夫でモンスターになるグラント役のマイケル・ルーカーは、殺人鬼を描いた「ヘンリー」(Henry・1986・米)でデビューした人で、以来、悪役か刑事役でいろんな作品に出ている味の濃い人。シルベスター・スタローンの山岳アクション「クリフハンガー」(Cliffhanger・1993・米)でもナイスな悪役を演じていた。2000年以降はTVが多かったようだが、最近日本で劇場公開されたのは、ウェズリー・スナイプスの刑務所ボクシング映画「デッドロック」(Undisputed・2001・米/独)の看守長役だろうか。

 入浴シーンもある若い美女カイリーを演じたのは、タニア・ソルニア。TVで活躍してきた人で、人気ホラーの「スーパーナチュラル」にも出ていたらしい。映画では、つい最近ガッカリさせられたニコラス・ケジのホラー「ウィッカーマン」(The Wicker Man・2006・米/独)で接客係1を演じていたらしい。本作とどっちが速かったのかわからないが、血まみれでがんばっていたので、今後もどんどん活躍して欲しい。

 どうしようもない町長を演じたのは、グレッグ・ヘンリーという人。けちな悪党を演じさせたらピカイチ。TVが多い人だが、スクリーン・デビューはマイケル・ルーカー主演の「ヘンリー」。最近だと実話の未解決猟奇殺人事件を描いた「ブラック・ダリア」(The Black Dahlia・2006・独/米)がある。「ブラック・ダリア」のほかにも「ファム・ファタール」(Femme Fatale・2002・仏/米)や「ボディ・ダブル」(Body Double・1984・米)、「レイジン・ケイン」(Raising Cain・1992・米)など、ブライアン・デ・パルマ監督作品への出演が多い。

 ちょっと主演を張るには地味な印象の、警察署長ビルを演じたネイサン・フィリオンは、やはりTVが多い人で、映画では本作が初めての大きな役らしい。「ドラキュリア」(Dracula 2000・2000・米)や、「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・)で小さな役を演じているとか。うーん。

 監督は脚本も手がけたジェイムズ・ガン。1970年生まれというから37歳の若さ。おバカ映画の「スクービー・ドゥー」(Scooby-Doo・2002・米)シリーズの脚本を書いた人。はじめからナンセンス映画の下地があったらしい。高速でゾンビが襲いかかってくる「ドーン・オブ・ザ・デッド」(Dawn of the Dead・2004・米)の脚本でホラーにも目覚めたらしい。本作が劇場長編映画の監督デビュー作だとか。次にどんな作品をつくるかだな、評価ができるのは。

 エンド・クレジットの後、最後の最後に1カットあるので、早くに席を立ってしまわないように。

 公開初日の初回、新宿の劇場は35分前に着いたら誰もいなかった。30分前に開場となったものの、たった1人だけ。ほとんど予告をやっていなかったので、しようがないか。20〜15分前になってようやくポツポツと人が。最終的には350席に35人くらいの入り。これは悲しい。老若比は3対1くらいで中高年が多く、女性はなんと1人。

 ガラガラなのにわざわざ人の前にすわるヤツが。まったく……。若いくせにサロンパス臭いし。何より酷かったのは、悲惨なシーンで野卑な声で嘲笑すること。精神を疑う。確かに笑いの要素はあるのだが……。

 ブザーが鳴って、カーテンが開いて、暗くなって始まった予告は……柴崎コウの「少林少女」は本広「踊る大捜査線」克行監督の日本映画のようだが、チャウ・シンチーを大きくフィーチャー。チャウ・シンチーは一体どういう位置づけなんだろう。「少林サッカー」の続編的な扱いだが。

 スタローンは「ロッキー」と「ランボー」しかないとばかりに、ついに最後の作品から20年後に「ランボー最後の戦場」となった。上下マスク。ただ、まだ古い予告のまま。続編「エリザベス ゴールデン・エイジ」も上下マスクで、古い予告のまま。ジャンヌ・ダルクのようにアクション系だと面白いのだが。ケイト・ブランシェットがすごい迫力。

 ゾンビ映画の「28日後」の続編「28週後...」は、ロバート・カーライルの主演。それにしても、なんでみんな似たようなゾンビ映画を作りたがるんだろう。

 「AVP2」も同じ予告編だったが、殺戮映画なのに吹替版があるとか。大人向けではないのだろうか。ちょっと不安。


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