Mouryou no Hako


2007年12月23日(日)「魍魎の匣」

2007・エムシーエフ・プランニング2、ジェネオン エンタテインメント、ショウゲート、朝日放送、バンダイネットワークス・2時間13分

ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル


公式サイト
http://mouryou.jp/
(入ったら音に注意。画面極大化。全国の劇場案内もあり)

1952年、探偵・榎木津(阿部寛)のもとに、伯父の映画撮影所長・今出川(笹野高史)から、落ち目となった女優・袖木陽子(黒木瞳)の14歳の娘が失踪したので探して欲しいという依頼を受ける。捜査を進めるうち遺産相続の問題が絡んでいるらしいことが判明するが、居場所は判明しない。同じ頃、小説家の関口巽(椎名桔平)は出版社から今巷で話題になっている連続少女バラバラ殺人事件のことを書いてくれと依頼される。そして同じネタを追う「稀譚月報」の記者・中禅寺敦子(田中麗奈)とともに、新興宗教団体「おんばこさま」へ潜入する。

73点

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 うーむ、このおどろおどろしさ。江戸川乱歩調とでもいうのだろうか、見終わると毒にあたったというか、悪い夢を見ていたような、そんな気分になる映画。結構笑えるし、緊迫したシーンや、悪者ざまあみろというカタルシスもあるのだが、おどろおどろしさが記憶に残った。怖い。

 前作、実相寺昭雄監督の「姑獲鳥の夏」(2005・日)からほとんどのキャラクターを同じ配役で引き継いでいるものの、違った雰囲気の作品に仕上がっている。監督が違うのだから当然だが、同じ雰囲気を期待すると、失望するかもしれない。戦後の昭和の時代感や不思議感より、どちらかというと戦前から戦中くらいの昭和感と猟奇的な部分が立っている。ある意味、原田眞人監督ワールド炸裂といったところ。原田監督ファンにはたまらない作品ではないだろうか。

 原作を読んでから見ると、自分のイメージと映画のイメージ(すなわち監督のイメージ)が違っていてガッカリすることが多い。ボクは読んでいないので、ガッカリすることはなかったが、どれくらい原作に忠実なのか、ちょっと気になった。原作を気にしすぎると、映画は楽しめない。違うところばかり探してしまう。映像化しやすいものとしにくいものがあり、上映時間の制限、予算という問題もあるのだからしようがない。

 それでも気になったのは、「雨上がり決死隊」の宮迫博之が演じる刑事の木場修太郎というキャラクター。ほとんど活躍していないし、ハッキリ言ってこの物語では不要。堀部圭亮が演じる青木刑事がいれば充分。前作のキャラクターを生かしたかったのかもしれないが、刑事としては木場と青木を足したキャラクター1人がいれば良かったのでは。もしくは、もっと木場に活躍させるべきだった。あるいは、撮影した段階ではもっと活躍する場面があったのかもしれないが、長くなりすぎて(公開版でも2時間を超える133分)ザックリと切ったのかもしれないが。原田監督らしく.32口径のコルト・ポケットを持たしているところが良い。

 猟奇殺人事件なので、バラバラにされた少女の腕などがよく出てくるのだが、それがまたリアルに作られていて、おどろおどろしい。両手両足をもがれた少女が苦痛に顔をゆがめながらはってくるところなど、夢に出そうだ。

 さらに気になったのは中国ロケ部分。日本の昭和の感じを出すために中国を選んだのだろうが、雰囲気があからさまに中国。日本語の看板などがあっても日本に見えない。空気感の違いまでわかる。どうみても大陸。寒風が吹きすさんでいる。

 ラストの箱の建物はよかった。不気味な、悪魔の迷宮のような感じが良く出ていた。リアルなのに合成にしか見えなかったものの、ラストで007の的の秘密基地のように爆破で破壊されるところは圧巻。いろいろ意見はあるだろうが、映画っぽかった。

 自分のことをボクと呼ぶ少女の危うい存在感や、レズっぽい微妙な友だち関係とかも良く出ていて面白い。

 出演者は宮藤官九郎と妖怪博士みたいな榎本明にちょっと違和感があったが(2人ともちっとも怖くない。というかコミカルな匂いがしてしまう)、だいたい皆ピタッとハマってうまかった。田中麗奈なんてとても自然で、普段もこんな感じなのかと思うほど。特におかしかったのはカス取り雑誌の出版社の編集者を演じたマギー。笑えるキャラクター。驚いたのは元光GENJIの大沢樹生。やくざVシネばかりかと思ったら本作にも出ていて、普通の役もできるんだとあらためて認識した。

 公開2日目の2回目、銀座の劇場は20分くらい前に着いたらロビーではちょうど整列が始まったところ。すでに50〜60人の列。若い人が多く、中高年はここでは1/3ほど。男女比は4.5対5.5くらいで女性の方が多い。このおどろおどろしさなのに。

 15分前くらいに場内清掃が終わり場内へ。全席自由で、この時点で70〜80人くらい。最終的には360席の8割りくらいが埋まった。さすが話題作。前作のクォリティが高かったことも影響しているのだろう。原作のファンという人も多いのかもしれない。でも読んでいない方が絶対に楽しめる。

 気になった予告は、ネス湖の恐竜と少年の友情という上下マスクの「ウォーター・ホース」は、予告を見る限りよくある話で、クマとか馬が恐竜に変わっただけのような気もするし、面白いかもしれないし、微妙。

 上映前にJBLのデモと、オーロラ・パターンのドルビー・デジタルのデモあり。


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