Nightwatching


2008年1月14日(月)「レンブラントの夜警」

NIGHTWATCHING・2007・加/仏/独/ポーランド/蘭/英・2時間19分(IMDbでは134分、トロント映画祭版141分)

日本語字幕:手書き書体下、齋藤敦子/シネスコ・サイズ(HDTV)/ドルビー・デジタル

(加14-A指定、日R-15指定)

公式サイト
http://eiga.com/official/nightwatching/
(全国の劇場案内もあり)

レンブラント(マーティン・フリーマン)は妻サスキア(エヴァ・バーシッスル)の伯父であるヘンドリックのプロデュースで肖像画で財をなし、無理に仕事をしなくてもよい状態だった。そして今はサスキアがプロデューサーをやっていた。そんな時、オランダからスペインを追い返した自警団の働きを記念して、自警団の肖像画の仕事が入ってくる。それぞれの人となりを絵に書き込むため調べるうち、いろいろなスキャンダルが明らかになってくる。そしてついに隊長が暴発事故で死んだという知らせが入る。

71点

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 凝った演出が逆効果になってしまった感じ。芝居がかった演出が好きな人や、「ドッグヴィル」(Dogville・2003・デンマーク)が好きな人は本作もOKだろう。ボクは王道の普通のドラマの演出で撮って欲しかった。だから、どうにも最後までノレなかった。ただIMDbでは7.6と高評価。

 想像力をたくましくすれば、「レンブラントの『夜警』に描かれていることはすべて芝居であり、作者の意図が多いに反映されたものだ」というのを物語にするのなら、それは芝居(舞台)だろうということなのかもしれない。

 ショットの多くはロングと顔のどアップでできており、他のサイズがあまり無いので疲れる。あらゆるところに舞台的な演出がなされているのも? なぜ映画にしたのか気になってしまう。構図がほとんど一方向で不自然な配置。まるで「最後の晩餐」を見ているよう。レンブラントの絵画のスタイルを再現したのだろうか……。その割に色が浅いのはビデオ撮影のためか。

 照明の使い方も自然なライティングではなく、舞台のライティング。人物がその部屋から出ていくと外の照明を落としたりする。多くはバック・ライトかサイド・ライト。セットも簡略化され、リアルさではなくかなり観念的な感じ。登場人物もカメラに向かって独白したり……。そこまでするなら、芝居にすればいいのに。

 本当に映画にした理由が良くわからない。しかもストーリーがわかりにくい。本来それほど複雑な話ではないのに、雑味が多すぎてわからなくなる。その上、登場人物が多く、日本人には覚えにくいこともあって、ますます混乱する。1時間40分くらいに切れば、わかりやすくなるのではないだろうか。映画を見終わってから公式サイトでストーリーを読んで、やっとそういうことだったのかと納得した。

 不必要と思える裸が多過ぎ。まず冒頭の主人公レンブラントの裸など必要あるのか。上半身くらいならまだしも、必要の無いものをブラブラさせて……。男の裸は彼だけで、あとは女性のフル・ヌードが何人か。これもここまでの露出は必要ないもの。この物語を描くのに必要とは思えない。ただ、エログロな感じだけは強調されただろう。つまり。映画で俳優を脱がせるのがこの監督の趣味なのではないだろうか。

 その監督はピーター・グリーナウェイ。脚本も書いている。日本で知られているのは「英国式庭園殺人事件」(The Draughtsman's Contract・1982・英)、「数に溺れて」(Drowning by Numbers・1988・英/蘭)、「コックと泥棒、その妻と愛人」(The Cook the Thief His Wife & Her Lover・1989・仏)、「プロスペローの本」(Prospero's Books・1991・仏/蘭ほか)あたりだろうか。ボクはどれも見ていないので何ともいえないが……。

 ほとんど日本で有名な役者さんは出ていない。かろうじて主人公レンブラント役のマーティン・フリーマンくらい。何か暖かな気持ちになれるラブ・ストーリー群像劇の「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米)や、爆笑SFコメディ「銀河ヒッチハイク・ガイド」(The Hitchhiker's Guide to the Galaxy・2005・米/英)で情けない主人公を演じていた人。とても、こんな病的な人を演じるキャラクターじゃないと思ったが、そこはプロの役者。何でもこなせるということか。

 公開3日目の初回、新宿の劇場はビルが30分前に開くので25分前くらいに着いたら、すでに劇場前には長蛇の列。たぶん50人以上で、すでに入場は始まっていた。待つ間にたちまち100人以上に。前売り券があっても受付が必要で、初回のみ全席自由。受付のナンバーは何と172。どうやら関東地区では単館公開で、人が殺到したらしい。待っている間に聞くとはなしに話を聞いていたら、レンブラントの絵に興味のある人が多いようで、やはり単館上映というのが混む原因と皆さん考えていたようだ。

 10分くらいで場内に入ったら、すでに全座席の1/3ほどは中央部分を中心に埋まっていた。最終的に男女比は4:6くらいで女性が多く、年齢的にはほぼ中高年というか高齢者。若い人は1割いただろうか。ほぼ満席には驚いた。

 ただ新宿の劇場はアイマックス・シアターだったために、座席が通常の劇場より上下左右に広く配置されている。その端の位置からシネスコといえど通常スクリーンを見るのはちょっと辛いと思う。しかも、アイマックスは上映時間の短いものが多いから、イスが硬くしかも小さい。これで2時間以上はかなり苦痛だ。

 ちなみに品川にあったメルシャンのアイマックス・シアターも閉館してしまったため、関東地区ではアイマックスは見られなくなったようだ。もともと品川っていうのが遠くて行きにくかったけど……。もう日本に残っているのは大阪のサントリーだけらしい(軽井沢にもあったが閉館したのだとか)。かなり採算をとるのは難しいという。

 気になった予告編は、キーラ・ナイトレイ主演の「つぐない」。なかなかタイルが出ず覚えられなかったが、少女が姉の恋人を犯罪者として糾弾してしまい、後年になって償いをするというようなものらしい。ヴァネッサ・レッドグレイヴが出ているので、「いつか眠りにつく前に」と混乱した。ちょっと重い感じ。

 クリスティーナ・リッチ主演の「ペネロピ」は、豚の鼻を持った美少女のお話。コメディタッチのラブ・ロマンスのようだったが、シリアスっぽくもあった。この予告からは判断不能。


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