Mr. Bean's Holiday


2008年1月20日(日)「Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!」

MR. BEAN'S HOLIDAY・2007・英/仏/独/米・1時間29分(IMDbでは90分)

日本語字幕:手書き書体下、石田泰子/ビスタ・サイズ(Arri)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(英PG指定)

公式サイト
http://www.mrbean.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

教会の慈善くじ引きでフランスはカンヌへの旅行とビデオ・カメラが当たったミスター・ビーン(ローワン・アトキンソン)。ビデオ・カメラを片手に出かけたものの、リヨン駅で思わぬドジから超特急TGVに乗っていた映画監督の父エミール(カレル・ローデン)を置き去りにし、その息子ステパン(マックス・ボルドリー)と2人でカンヌまで旅することになる。しかし途中駅で乗り遅れ、ついには2人もはぐれてしまうはめに。

76点

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 驚いた。オリジナルのTVの「Mr.ビーン」の雰囲気そのまま。ガッカリさせられた映画版前作の続編とは思えない。おもしろい。ちゃんと笑えた。そして、見終わって、久々にハッピーな気分になった。お正月映画はこうでなくちゃ。年末でも良かったかもしれない。

 最も良かったのは、前作の映画の悪いところをすべて排除し、原点に立ち返ったこと。10年前の「ビーン」(Bean・1997・英/米)は脚本を凝りすぎて、本来いるだけで面白いビーンに色んなことをさせようとし過ぎた。その結果、ビーンはやり過ぎの大バカ、大迷惑キャラに成り下がってしまい、大被害を出してしまった。もう日本人的には笑えるキャラを超えてしまった。

 本作では、迷惑はあるが最小限。ギリギリかもしれないが、笑って許せる。そして、TVどおりビーンはほとんど話さない。基本は自分がドジをやって、自分がそのしっぺ返しを食うだけ。電車に乗り遅れたり、タクシーを間違えたり、パスポートを置き忘れたり、自転車をつぶされたり。いわゆる小市民的キャラクターで、ホントは優しいイイ人。子供を父親の許に帰そうと一生懸命になり、女優のタマゴを応援したりする。そして、そのどれもが笑わせる要素になっている。前作とは雲泥の差といっても良いかもしれない。

 ほとんどはMr.ビーンを演じるローワン・アトキンソンの魅力というか味によるところが多いのだが、なぜ前作から10年もかかってしまったのか。TVシリーズからいえば20年近い年月が経っている。原点に帰るのにこんなに時間が必要だったとは。それにしても、多少は老けたがローワン・アトキンソンがMr.ビーンのイメージそのままなのには驚いた。

 道連れになるステパン少年を演じたのは、マックス・ボルドリー。イギリス生まれだが、流ちょうなロシア語を話すというので配役されたらしい。実写の劇場映画は初出演。今後が楽しみだ。

 変な映画を作る映画監督カーソンを演じたのは、怪優という感じのウィレム・デフォー。不気味な吸血鬼を演じた「シャドー・オブ・ヴァンパイア」(Shadow of the Vampire・2000・英/米ほか)とか、女装まで披露した「処刑人」(The Boondog Saints・1999・米)など、とても同じ人とは思えないほど強烈だった。やっぱり注目されたのは「ストリート・オブ・ファイヤー」(Streets of Fire・1984・米)の悪党、レイベン役だろう。

 もうひとりの映画監督、少年の父ロシア人のエミル役は、かなり強面のカレル・ローデン。何といっても良かったのは「15ミニッツ」(15 Minutes・2001・米)のロシア人凶悪犯罪者、エミル役(なんと同じ名前の役)だろう。

 女優のタマゴを演じているのは、エマ・ドゥ・コーヌ。フランス生まれで、すでに何本か映画に出演しているようだが、たぶん日本ではまだあまり知られていないはず。30歳とは思えない若々しさと、さわやかさ。

 フランスの駅のレストランのウェイターを演じていたのは、たぶんジャン・ロシュフォールという人。古くからの俳優で、ボクが見たことあるのはジャン=ポール・ベルモンドの「カトマンズの男」(Les Tribulations d'un Chinois en Chine ・1965・仏/伊)あたり。強面もいけるが、コメディもいける。

 監督はスティーヴ・ベンデラックという人。どうやらTVでずっとコメディを手がけてきた人らしい。本作は長編劇場作品2本目になる。なかなか良い手際ではないだろうか。次作にも期待が持てる。

 あまり無理をしていない、小さなエピソードが連続していく原点回帰のシンプルな脚本は、ロビン・ドリスコルとハーミッシュ・マッコールの2人。ロビン・ドリスコルは前作の「ビーン」も手がけているが、もともとTVシリーズの脚本を手がけていた人。ただ表記順から見るとハーミッシュ・マッコールの方がメインらしい。ハーミッシュ・マッコールは自身が役者でもあり、ずっとコメディをやっていたようだ。外側から見ていた人のほうが客観的な判断を下せたということかもしれない。

 上映前にストンプのドルビー・デジタル・デモあり。

 CM撮影のシーンで登場した戦車はドイツの第2次世界大戦時の三号突撃砲戦車だったか四号突撃砲戦車だったか。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は40分前くらいに着いたら、窓口に15人くらいの行列。ほとんど男性で中高年。まもなく窓口が開き、当日券と交換してとりあえず地下の階段へ。寒い日だったので建物の中に入れるだけでもありがたい。

 30分前くらいに開場して、初回のみ全席自由の場内へ。並んでいた人はほとんど全員「Mr.ビーン」だった。20分前で25人くらいになり、小学生付けの親子やオバサンも増え出して、最終的に183席はほぼ満席。これは当然かもしれない。男女比は4.5対5.5くらいでやや女性の方が多い感じ。年齢層は小学生低学年から高齢者まで。中心は中高年だが、若い女性、若いカップル、ファミリーもチラホラ。

 気になった予告編は、なんと「椿三十郎」に続きまた黒澤明作品がリメイクされると……樋口真嗣監督の「隠し砦の三悪人」……うーむ。

 ジョージ・クルーニーの新作は各賞を多く受賞している「フィクサー」。上下マスクで、内容は良くわからないが、話題作なのになぜ小劇場での公開なのか。ここが気になる。

 残された時間が後わずかの母が40年前の恋を語り出すという「きみに読む物語」(Notebook・2004・米)のような雰囲気の上下マスク「いつか眠りにつく前に」もいい感じ。ただ、女性映画という感じプンプンで、ちょっと恥ずかしいか。


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