Mr. Magorium's Wonder Emporium


2008年2月16日(土)「マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋」

MR. MAGORIUM'S WONDER EMPORIUM・2007・米・1時間35分(IMDbでは94分、米版93分)

日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(1.85、ARRI)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米G指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://woman.excite.co.jp/cinema/magorium/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

高層ビル街の一角にある小さなおもちゃ屋の支配人として働くのは、23歳のモリー(ナタリー・ポートマン)。しかしかつては天才ピアノ少女と謳われた彼女も、大学を卒業してから作曲で行き詰まっていた。そんなある日、経営者で発明家のマゴリアムおじさん(ダスティン・ホフマン)は、引退を宣言。モリーに跡を継いで欲しいと言い出し、資産をはっきりさせるため会計士のヘンリー(ジェイソン・ベイトマン)を雇う。

74点

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 最近、血なまぐさい落ち込むような映画ばかり見てきたので、久々のファンタジーで心が安らいだ。癒された。アメリカ人はこの手の身近にあるファンタジーがうまい。時代掛かったものや、大冒険でなくても、ファンタジーはちゃんと成立することを証明して見せてくれる。感動した。ちょっと涙が……。

 堅物は出てくるけれど、悪者は出てこない。夢を見る心を持ち続ける者と、とっくにそれを捨てて現実世界に生きる大人。ちょっとしたファンタジーに気付かず、仕事だけの毎日を送る人物に、まさにぴったりの会計士を配し、それに毎日空想の世界に生きていて同年代の子供たちから気味悪がられてしまう少年をぶつける。

 一方、かつては天才ピアノ少女と謳われ今は普通になってしまった女性には、243歳(!)という魔法が使える少年のような心を持ったおじさん(?)をぶつける。彼女がピアノに全力を傾けるため転職しようとしていることを打ち明けると、店を譲るという。しかも、自分は数日後に消えてしまうと宣言する。

 単なるファンタジーではなく、堅物の会計士、友だちの出来ない少年、人生に行き詰まりを感じる女性という極めて現実的なキャラクターを取り入れ、完璧にファンタジーのキャラクターであるマゴリアムおじさんが、みんなを変えていくきっかけを与える。最終的に変えていくのはそれぞれ本人というところも良い。自分が気付かなければ変えていけないとこの映画は言う。

 ウンチクのあるセリフもたくさん登場する。中でも心に残ったのは「人生はチャンスなんだ。生かしなさい」というセリフ。うーむ、生かさなければ人生をムダにしていることになる。ボクは生かしているのか……チャンスに気付きもしないのではないか……。

 ナタリー・ポートマンは最近あまり良い役をやっていない印象だが、だいたいスタートが「レオン」(Leon・1994・仏/英)レオンの変な子供だったからか、SF話題作を除いてその美しさを生かした普通の役というのはないに等しい。本作は数少ない普通のヒロイン的役どころ。ハーバード大学を卒業したそうだから、頭の良い人でもあり、才色兼備といったところ。その意味でも本作は貴重かも。まあ、演技派を目指しているんだろうけど、ちょっともったいない気も。若い時にしか演じられない役もあるんだから……。

 ダスティン・ホフマンは、何といっても「卒業」(The Graduate・1967・米)が素晴らしかったわけで、アカデミー賞作品「真夜中のカーボーイ」(Midnight Cowboy・1969・米)、サム・ペキンパー監督の「わらの犬」(Straw Dog・1971・米)、スティーヴ・マックィーンと共演した「パピヨン」(Papillon・1973・仏)、ジョン・シュレシンジャー監督の「マラソンマン」(Marathon Man・1976・米)、ウォーターゲート事件を描いた「大統領の陰謀」(All the President's Men・1976・米)、またまたアカデミー作品「クレイマー、クレイマー」(Kramer vs. Kramer・1979・米)、女装コメディ「トッツィー」(Tootsie・1982・米)、自閉症の兄を演じた「レインマン」(Rain Man・1988・米)……といったそうそうたる名作がズラリと並ぶ。SFホラー「スフィア」(Sphere・1998・米)以降、悪役などにもチャレンジしたものの、あまりパッとしなかった感じがあって、この前の「主人公は僕だった」(Stranger Than Fiction・2006・米)の教授役も中途半端だった。ただ、本作はふっきれていない気もするが、悪くない。1937年生まれだそうだから、今年で71歳。さすがに歳をとったということか。

 会計士のミュータントことヘンリーはジェイソン・ベイトマン。ぶっ飛んでるアクション活劇の「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2007・米)で女装趣味の弁護士を演じていた人。「ザ・キングダム ―見えざる敵―」(The Kingdom・2007・米)では、FBIのタクティカル・レスポンス・チームの情報分析官を演じていた。硬軟どちらも演じられる人で、本作の役はピッタリだったかも。

 帽子を集めている少年のエリックを演じたのは、1995年生まれの13歳の少年ザック・ミルズ。TVが多いようだが、映画では実話に基づいたミステリー「ハリウッドランド」(Hollywoodland・2006・米)に出ていたとか。私立探偵の息子を演じていたらしい。ひょうひょうとした感じが良い。

 特別出演というか、さらりと登場したのはTV「セサミ・ストリート」のカエルのカーミット。声もオリジナルの本物、スティーヴ・ホイットマイアだったんだとか。

 監督・脚本は、ザック・ヘルム。大学時代から劇団を立ち上げ、卒業後フォックスに脚本家として雇われ、本作の脚本を2000年に書いたらしい。それを2004年に買い戻して、ついに映画化したのだとか。「主人公は僕だった」の脚本が高く評価され、本作で監督デビューということになったらしい。その関係でダスティン・ホフマンが出たのかも。

 往年のハリウッド映画のような、楽しい洒落たアニメのタイトルがよかった。しかし誰が担当していたか、よくわからなかった。

 公開2日目の初回、40分前くらいに着いたら新宿の劇場には誰もいなかった。「エリザベス」に長い列ができていた。25分前に開場した時はオヤジが2人。寒い日で、もうちょっと早く入れて欲しかったが、2人じゃなあ……。

 全席自由だったが、字幕版のためか、最終的に406席に10人くらい。ほとんど中高年で、若い人は2人。女性が4人。うむむ。もっと入っても良い映画だと思うが、予告編がイマイチだったかも。木村カエラの歌だけが目立っていたもんなあ。

 この劇場は入口の横に喫煙スペースがあり、換気扇がちゃんとしていないのか煙が場内に入ってくる。強力な換気扇を付けるか、喫煙スペースをなくすかして欲しい。

 それより最悪だったのは、予告編が終ってシネスコになった途端ピンボケになり、リール・チェンジまでずっと中央やや左上がずっとボケたまま。リール・チェンジ後もちょっとましになっただけでボケていた。映写技師はシロートなんだろうか。これで金が取れるか? まったくガッカリ。

 カーテンが開いて始まった予告編で気になったものは……「ランボー最後の戦場」は同じ予告で飽きてきたが、劇場窓口で前売り券を買うとオリジナル・デザインの迷彩バンダナがもらえるらしい。「少林少女」は新予告。なかなかおもしろそうだが、悪ふざけのような感じも少し。

 上下マスクの「ノーカントリー」はアカデミー賞にノミネートされ、がぜん勢い付いた感じ。結果によっては拡大公開になるのかも。とこかく怖そう。「魔法にかけられて」は早く見たい。


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