Elizabeth: The Golden Age


2008年2月17日(日)「エリザベス:ゴールデン・エイジ」

ELIZABETH: THE GOLDEN AGE・2007・英/仏/独・1時間54分

日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(1.85、ARRI)/ドルビー・デジタル、dts

(英12A指定)

公式サイト
http://www.elizabeth-goldenage.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

1585年、フェリペ二世(ジョルディ・モリャ)が統治するスペインは世界最強を誇っていた。唯一スペインに逆らっていたのは、エリザベス女王のイングランドだけだった。イングランドはプロテスタントとカトリックの二つに分かれていたが、プロテスタントのエリザベス(ケイト・ブランシェット)はカトリックに対しても寛大な処遇をすることを宣言する。そんな中、幽閉中のスコットランド女王メアリー(サマンサ・モートン)はイギリスにいるカトリック系の反対分子を使い、エリザベス女王暗殺を画策する。

73点

1つ前へ一覧へ次へ
 確かにアカデミー賞でノミネートされただけあって、絢爛豪華な衣装とエリザベス女王役のケイト・ブランシェットは素晴らしい。ちょっとスペインが悪者過ぎるものの、時代感や大ざっぱな歴史を理解するにもいいかも。唯一、気になるのは、ドラマというかエリザベスの苦悩のみに焦点を当て過ぎて、斬首される政敵のスコットランド女王メアリーや、スペインなど敵対する側の状況や言い分が全くなく、存在感なさ過ぎ。その結果としてして突入する戦争シーンも淡泊で、ちゃんと戦争を描こうとはしているものの単なる経過説明程度にしかなっていない。そんな中で日本の元寇のように神風が吹いて(嵐がやって来て)スペインの無敵艦隊(英国側の皮肉った名称)を全滅させた(アルマダの海戦)と言われてもなあ……。もちろん、そこまで描けば2時間程度で収まる話ではなくなってしまうだろうが。

 もちろん、まったく悪くはないし、国に命も魂も捧げたエリザベスの苦悩はよくわかる。その点で成功作だと思う。ちょっと物足りない感じがするのは、回りの人物や出来事なんかが、ちゃんと描かれていないからではないか。

 アルマダの海戦は、本作で描かれているものとはちょっと違うようだ。本作ではイングランドにほとんど艦船がなく、海を埋め尽くすほどの大艦隊2万5千の軍勢 VS 海賊ウォルター・ローリー卿などのわずかの船とテムズ川沿岸の民兵を含む迎撃隊3〜4千しか描かれていない感じだが、実際には直前に司令官を失ったスペイン131隻3万 VS イングランド105から197隻に増援された1万5千という形なんだとか。うむむ。

 とにかくケイト・ブランシェットはカッコ良く、また素晴らしい演技で見せる。かつらを使った様々な髪形や、衣装も素晴らしい。もっとも良かったのは甲冑姿か。さすがに前作「エリザベス」(Elizabeth・1998・英)で注目されただけに、続編でも力がはいっている。後ろ姿だったが、全裸になっていたのは本人だったように見えたが……。サム・ライミのホラー「ギフト」(The Gift・2000・米)も存在感があって良かったし、WWIIの女スパイを描いた「シャーロット・グレイ」(Charlotte Gray・2001・英/豪/独)も意思の強い女の役で印象を残し、ブルース・ウィリスの「バンディッツ」(Bandits・2001・米)ではアクションも行けることを証明した。西部劇の「ミッシング」(The Missing・2003・米)ではまたまた強い女を演じ強烈だった。最近は「さらば、ベルリン」(・2006・米)で人妻で不倫関係でしかも……という複雑な役を演じている演技派。

 エリザベスをアシストする側近フランシスを演じたのは、ジェフリー・ラッシュ。前作でも同じ役を演じているが、やはり出世作は天才ピアニストを演じた「シャイン」(Shine・1995・豪)だろう。最近では「パイレーツ・オブ・カリビアン」(Pirates of the Caribbean・2003〜2007・米)シリーズか。不気味な感じでうまい。

 海賊からエリザベスに気に入られて重臣となるウォルター・ローリーを演じたのは、クライヴ・オーウェン。ワイルドで濃い感じの人で、良い役と悪い役と半々の人。スパイク・リーの犯罪アクション「インサイド・マン」(Inside Man・2006・米)では犯罪者グループのボスを、SFアクション「トゥモロー・ワールド」(Children of Men・2006・米)では事件に巻き込まれた役人を演じていた。

 そのウォルター・ローリーと結ばれるエリザベスの侍女、ベスを演じたのは、アビー・コーニッシュ。オーストラリア出身の26歳の美女。「キャンディ」(Candy・2006・豪)や「プロヴァンスの贈りもの」(A Good Year・2006・米)に出ているらしいが、どれも見ていない。ちょっとエロい感じが強いので、そればっかりにならなければいいが。

 カトリックの暗殺者、トマス・バビントンを演じたのは、ロバート・デニーロが監督した「グッド・シェパード」(The Good Shepherd・2006・米)でスパイのマット・デイモンの悩める息子を演じたエディ・レッドメイン。追いつめられた感じが良く出ていて、眉毛も薄く、何をしでかすのか怖かった。

 そのボス、ロバート・レストンを演じたのは、リス・エヴァンス(アイファンズ)。コミカルな役もやるが、悪役ではかなり怖い感じの名優。イギリスのギャング映画「ロンドン・ドッグズ」(Love, Honour and Obey・1999・英)、変人役を演じておかしかった「ノッティング・ヒルの恋人」(Notting Hill・1999・米)、痛快スポ根コメディ「リプレイスメント」(The Replacements・2000・米)でも笑わせ、「ハンニバル・ライジング」(Hannibal Rising・2007・仏ほか)や「Jの悲劇」(Enduring Love・2004・英)ではかなり異常で怖かった。本作も怖い。

 幽閉されているスコットランド女王メアリーを演じたのはサマンサ・モートン。「ギター弾きの恋」(Sweet and Lowdown・1999・米)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」(In America・2002・アイルランド/英)で主演女優賞にノミネートされた実力派。どちらも見ていないが……メジャーな作品ではスピルバーグのSFアクション「マイノリティ・リポート」(Minority Report・2002・米)で予知能力を持った女性を演じてインパクトがあった。本作ではちょっとポッチャリして、まったく違う印象。眉が薄く、やっぱり怖い。斬首刑はスゴイ緊迫感だった。

 監督はシェカール・カプールという人。話題になった「女盗賊プーラン」(Bandit Queen・1994・英/印)を撮った人。前作の「エリザベス」(Elizabeth・1998・英)を撮った後、いまひとつ感情が伝わってこなかった「サハラに舞う羽根」(The Foue Feathers・2002・米/英)を撮って5年置いて本作だからなあ……。

 脚本は、TVから始まり、ジョディ・フォスターが製作した「ネル」(Nel・1994・米)や、ショーン・コネリーとリチャド・ギアが共演した「トルゥーナイト」(First Knight・1995・米)、リドリー・スコットの「グラディエーター」(Gladiator・2000・米)を手がけたウィリアム・ニコルソンと、前作「エリザベス」を手がけたほかは、ほとんどTVを書いているマイケル・ハースト。本作では製作総指揮も兼ねているけど。

 公開2日目の初回。65分前に着いたら誰もいなかった。東京マラソンの日だったので少ないと予想していたが、そのとおり。1人ズーズーシーばあさんがいて驚いたが、とにかく40分前くらいに15人くらいに。寒い日だったが25分前くらいになってようやく上の窓口が開いた。前売り券を当日券と交換して階下へ移動してまた並び、20分前くらいにとうとう開場した。初回のみ全席自由。17席×2列のカバーの席もOK。

 最終的に654席に5.5〜6割りほどの入り。ほぼ高年齢層。男女比は3.5対6.5くらいで女性の方が多く、若い女の子もちらほら見かけた。

 予鈴、本鈴と鳴って、半暗で始まった予告で、ソフィー・マルソーが登場。フランス映画祭の団長を務めるらしい。自身の監督作「ドーヴィルに消えた女」も公開されるらしい。

 「スター・ウォーズ」のネタとも言われる黒澤明の傑作「隠し砦の三悪人」が、「椿三十郎」の続いてリメイクされるとか。樋口真嗣監督だが、なぜ……。

 まあ、とにかくなかなかタイトルが出ない予告ばかりで、これでちゃんと機能をはたしているのか大いに疑問だ。作品名を覚えられない。


1つ前へ一覧へ次へ