Penelope


2008年3月1日(土)「ペネロピ」

PENELOPE・2006・英/米・1時間41分(IMDbで米版は102分)

日本語字幕:手書き書体下、田邊拓郎/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG指定)

公式サイト
http://www.penelope-movie.com/
(入ると画面極大化。音にも注意。何がどこにあるかかわりにくい)

イギリスの名家ウィルハーン家。5代前の先祖ラルフが使用人の娘クララを妊娠させ、しかも彼女を捨てて名家の娘と結婚、クララを自殺に追い込んだことから、魔女であったクララの母は、最初の娘に豚の鼻と耳を持って生まれるという呪いをウィルハーン家にかけた。呪いが解けるのは、豚の鼻と耳を持つ娘に名家の男が永遠の愛を誓うとき。4代は男の子しか生まれなかったため、何事もなかったが、5代目で初めての娘となるペネロピ(クリスティーナ・リッチ)は、まさに呪いの通り豚の鼻と耳を持って生まれきた。母のジェシカ(キャサリン・オハラ)は世間の好奇の目から娘を守るため、一切外に出さずに育ててきた。やがて適齢期となったペネロピは顔を隠して見合いをするが、素顔を見たものはすべて逃げ出してしまうのだった。

75点

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 予告やチラシ、前売り券の雰囲気から、もうちょっと理屈っぽい、いかにも寓話っぽいものかと思ったら、楽しくて笑える感動のファンタジーだった。おもしろい。久しぶりに声を出して笑った。とにかくクリスティーナ・リッチがかわいい。特殊メイクで全く違和感のない豚の鼻をつけていても、キュート。しかも、それが見慣れてしまって、呪いが解けた後、普通の顔にもどった時、美人なのに何か物足りなさを感じるほど。「ブラック・スネーク・モーン」(Black Snake Moan・2006・米)で演じていたセックス依存症の女性とは180度違うキャラクター。さすが女優。

 設定としては、魔女のかけた呪いという子供のおとぎ話のようなものだが、それを大人の話にして、信じてはいないんだけれど、どこか納得させてしまうところに個の映画のすごさがある。ただ、やっぱり夢見る心を失ってしまった人には、単なる陳腐な子供だましの物語にしか感じられないとは思う。これ人によって違うだろう。たぶん評価もそこで分かれる。

 それにしても、ブタ鼻のペネロピの人気が出ると言われる一言はキツイ。「大衆は君をしゃべれるブタだと思っている」。う〜ん。そしてペネロピと心が繋がる青年マックスが、家を出て言ったことに対する評価もいい。騒ぎを巻き起こしたが「君は前に踏み出した」と。この勇気がなかなか持てない。

 うまいと思うのは、この設定を登場人物に否定させているところ。結構相手の候補として登場するギャンブル好きの青年マックスに、呪いなんて信じているのか、と言わせている。そしてほかにも登場人物は、伝説の真偽を探ろうとする新聞記者がいたり、ペネロペをバケモノと徹底的に拒否するお坊ちゃまがいたり、友だちとして受け入れてくれる細かいことにこだわらない女性がいたり、実にバラエティ豊か。ストレートに、今は醜いプリンセスと、二枚目の白馬の王子が結ばれて、キスしてすべて解決というわけではない。このヒネリが良い。そしてもいくつもの小さなオチがちりばめられている。でも、基本はおとぎ話だから、最後はやっぱりキスで終わる。こうでなきゃね。それに、全体にアメリカ英語とは違うイギリス英語のトーンというか、リズムというか、それがいい感じだ。おとぎ話に似あっている。リース・ウィザースプーンはアメリカ人という設定なのか、それはなかったと思うけれど、完全に聞き分けられるほど耳が良くないし英語も解らない。

 なんと驚いたことに、製作会社のタイプAフィルムズというのは、ペネロペの友だちになる女性を演じている女優のリース・ウィザースプーンの会社なんだそう。本作のプロデューサーも務めている。なんでも初めてプロデュースも務めたのは、大ヒット作「キューティ・ブロンド」(Legally Blonde・2001・米)の続編の「キューティ・ブロンド/ハッピーMAX」(Legally Blonde 2: Red , White & Blonde・2003・米)からだとか。続編にしては「ハッピーMAX」も面白かった。プロデューサーの才能もあるのかも。

 監督はカナダ生まれのマーク・パランスキー。短編2本の脚本が高く評価されたことから、マイケル・ベイ監督の「アルマゲドン」(Armageddon・1998・米)に助手として参加。「パール・ハーバー」(Pearl Harbor・2001・米)では監督アシスタントとなっている。その後「悪魔の棲む家」(The Amityville Horror・2005・米)とマイケル・ベイの「アイランド」(The Island・2005・米)の第2班監督となり、さらに脚本家へのインタビュー・シリーズのビデオ作品を作って、本作で劇場長編映画の監督デビューを果たしている。本作は、まるでベテラン監督のような作りで、彼を監督に選んだだろうプロデューサーの目が確かだったことを伺わせる。

 脚本は、レスノー・ケイヴニーという女性。1990年に女優としてデビューし、1995年からTVの脚本家として活躍し始めたらしい。2004年からは「レイモンド」というTVシリーズの脚本とプロデューサーを務め、本作で劇場長編映画の脚本を初めて手がけた。本作は女性らしいテーマとも言える。外見と心の問題。

 ペネロピの心をとらえる青年マックスには、ジェームズ・マカヴォイ。ヒット作「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」(The Chronicles of Narnia: The Lion, Witch and the Wardrobe・2005・米)のタムナスさんを演じていた人。「ラストキング・オブ・スコットランド」(The Last King of Scotland・2006・米/英)では主役を演じて強烈な印象を残した。近々「つぐない」(Atnement・2007・英)が公開されるなど大活躍だ。

 悲劇的な出来事にも落ち込まない母親を演じたのは、キャサリン・オハラ。似たような役柄を「ビートルジュース」(Beetlejuice・1988・米)でも演じていた。コミカルな役柄が多い人で、最近はアニメの声優も多いようだ。

 驚いたのは、ペネロピの子供のころを演じていた女の子が、クリスティーナ・リッチそっくりだったこと。何という子なのか、ちょっと気になったが……。

 公開初日の初回、新宿の劇場はビルが開く1時間前に着いたら、受付の番号は24番。土曜と初日と映画の日が重なったためのようだ。ハッキリ言って土日と映画の日が重なるのは迷惑。混むから。こういうときは金曜か月曜にシフトして欲しい。

 若い女の子が多く、9割りほどが女性。そして全体の8割りほどは20代くらいか。初回のみ全席自由で、20分前に7割りほどが埋まり、最終的には340席ほぼすべて埋まった。さすが映画の日。やっぱり1,800円は高いよなあ。

 ロビーにいた10人くらいの関係者の一団は最後には場内に入ってきていたが、多過ぎるっちゅうの。

 スクリーンはビスタで開いていて、ややくらくなって予告が始まったが、明るくてスクリーンが見にくかった。そしてタイトルがなかなか出ない予告ばかり。最後の一瞬だけでは覚えられないぞ。

 気になった予告は……この劇場はアート系の物が多いので、カンヌ出品とか気が重くなるものが多い。予告編だけで溜息が出る。あ〜あ、辛い。シャリー・マクレーンが出ている「あの日の指輪を待つ君へ」はそれでも、ちょっと気になるところ。泣きそうだけど久々に映画でシャリー・マクレーンを見る気がする。

 東山紀之と田中麗奈の「山桜」は、藤沢周平の時代劇で、「武士の一分」とかの一連のシリーズかと思ったら、監督が違った。どうなんだろう。

 入場者プレゼントがあって「DHCのスキンケア・サンプルセット」をもらったが、どうしよう。


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