The Golden Compass


2008年3月2日(日)「ライラの冒険 黄金の羅針盤」

THE GOLDEN COMPASS・2007・米/英・1時間52分(IMDbでは113分)

日本語字幕:手書き書体下、稲田嵯裕里/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://lyra.gyao.jp/
(音に注意。日本の新着情報に全国の劇場案内もあり)

我々が住む世界と見た目はそっくりだが、実際にはとても違っている世界。そこでは人間はダイモンと呼ばれる分身と共に暮らしていた。12歳の少女ライラ(ダコタ・ブルー・リチャーズ)は幼い頃に両親を失い、叔父のアスリエル卿(ダニエル・クレイグ)によって、イギリス・オックスフォードの大学寮で育てられた。そしてアスリエル卿が北極へダストの調査に出発した直後、大学に強い影響力を持つコールター夫人(ニコール・キッドマン)が現われ、自分も北の調査に行くから助手として付いてこないかという。学長の許可をもらったライラは、出発の直前、アスリエル卿からあずかったという真理計「黄金の羅針盤」を託される。決してコールター夫人に知られてはならないと。

73点

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 壮大なスケールの大ファンタジー、冒険物語。よくここまでまとめたものだと思う。それも2時間以内で。SFXは驚異的で、おそらくほとんど3D-CGと思われる1人1人に必ずいるダイモン(原語ではデイモンと発音)は、ほとんどどのカットにも登場するわけで、つまりほぼ全編3D-CG処理がなされている。しかも、実に自然で画面に溶け込んでいる。違和感がなく、あたかもそこに存在しているかのよう。

 しかも冒険につぐ冒険。次々とピンチが訪れ、戦いがあって、話はどんどん進んでいく。このスピード感。まさに映画向きの話なのかもしれない。

 ただ、やはり壮大な話を2時間以内にまとめるため、多くの要素が駆け足になってしまっている。絵はどれも素晴らしいが、事柄を追うのに精いっぱいで、登場人物の掘り下げがなく、薄っぺら。ドラマもその要素が多いのに、上辺だけになってしまっている。

 盛り上げは実にうまく興奮させるが、結局、見終わっても何も残らない。次作はどうなるんだろうという好奇心だけ……。アスリエル卿のダニエル・クレイグも、ちょっと出るだけで次作にならないと活躍しないようだ。起承転結で言うと、本作は「起」と「承」で、1つの大きな戦いは終るが、中途半端な印象も。第1作はあえて言えばアイス・ベアのイオレクの物語なのかも。とりあえず彼の話は完結している。クマ同士の戦いのシーンはかなり長いが、たぶんすべて3D-CGなんじゃないだろうか。そう思うとちょっと複雑な感じもした。そして、戦いのシーンが多いからだろう、血がほとばしるようなことはなく、火花のようなものが出て消えていくような演出。クマのシーンだけがアゴが飛んだり、血が出ていたような気がする。そのおかげかレイティングはPG-13。

 謎の悪女を演じるのは、ニコール・キッドマン。とにかく美しく、絶世の美女という言葉がピッタリ。彼女が悪女を演じると、よりクールで怖い。「コールドマウンテン」(Cold Mountain・2003・米)や「ザ・インタープリター」(The Interpreter・2005・米)は良かったが、「インベージョン」(The Invasion・2007・米)はちょっと……。「アザーズ」(The Others・2001・米/西/仏)や「ムーラン・ルージュ」(Moulin Rouge!・2001・米)、「バースデイ・ガール」(Birthday Girl・2002・米)も良かった。本作は彼女が一番目立っていたかも。

 主演の少女ライラを演じたのは、ダコタ・ブルー・リチャーズ。1994年生まれの今年14歳。ほぼ実年どおり。ロンドン生まれだそうで、15,000人のオーディションで監督と原作者の目に留まったらしい。ほとんど全くの新人ということらしい。演出でもあるのだろうが、ちょっと生意気な感じが強過ぎて、日本人好みではないかも。得意技がウソをつくことだからなあ。

 そのダイモン、パンタライモンの声を出していたのは、つい最近「アーサーとミニモイの不思議な国」(Arthur et les Minimoys・2006・仏)に出ていたフレディ・ハイモア。2頭のライオンを描いた「トゥー・ブラザーズ」(Two Brothers・2004・英/仏)の少年役が良かった。実に少年らしい少年。

 アイス・ベアのイオレクの声は、何と「X-メン」(X-Men・2000・米)シリーズのマグニート役のイアン・マッケラン。あんなに細い体で、しかも老人なのに、こんなに太い声が出るとは驚き。想像もつかなかった。

 コールター夫人のダイモン、ゴールデン・モンキーのヘスターの声は名女優キャシー・ベイツ。憎たらしい感じが良く出ていると思ったら、うまいわけだ。ついこの前「ビー・ムービー」(Bee Movie・2007・米)でも主人公のお母さん役で声優をやっていた。

 魔女セラフィナは、エヴァ・グリーン。アスリエル卿を演じたダニエル・クレイグの「007/カジノ・ロワイヤル」(Casino Royale・2006・米/英ほか)で、ボンドを助けるボンド・ガールを演じた人。ちょっと暗い感じが魔女にピッタリ。

 ダニエル・グレイグのダイモン、ステルマリアの声を出していたのは、クリスティン・スコット・トーマス。「イングリッシュ・ペイシェント」(The English Patient・1996・米)でアカデミー主演女優賞にノミネートされた人。「モンタナの風に抱かれて」(The Horse Whisperer・1998・米)でもよろめく役を演じていた。

 気球乗りリー・スコーズビーは、ほとんどカウボーイという設定の、サム・エリオット。まんまじゃん。使う銃も黒色火薬仕様の丸いエジェクター・ロッドが付いたシングル・アクションと、ウインチェスターのレバー・アクションM73(?)を使っている。

 マジステリアムの黒幕らしい偉い人は、クリストファー・リー。ちょっと出。こんな役が多い。やっぱり吸血鬼ドラキュラのイメージなんだろう。「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・米/ニュージーランド)シリーズもちょっと出ていただけだった。

 劇中、アイス・ベアのイオレクのことをエグザイルと呼んでいて、字幕は追放者とでていたから、そうか、あのグループは追放者って意味なんだとやっとわかった。

 監督は脚本も書いたクリス・ワイツという人。「Mr. & Mrs.スミス」(Mr. & Mrs. Smith・2005・米)では役者として出演していたらしい。もっとも多い仕事はプロデューサーだ。3D-CGアニメの「アンツ」(Antz・1998・米)の脚本も書いているし、やっぱり1作目よりだいぶ落ちた「ナッティ・プロフェッサー2/クランプ家の面々」(Nutty Professor II: The Klumps・2000・米)も書いていたわけで……。ケンブリッジというから頭は良さそう。どういう経緯で本作を監督することになったんだろう。「アバウト・ア・ボーイ」(About a Boy・2002・英/米/仏)の脚本がアカデミー賞最優秀脚色賞にノミネートされたらしいが(監督もしている)、悪くはなかったものの、何ともこじんまりちした印象でTVっぽかったけど。

 公開2日目の、2回目、字幕番初回、銀座の劇場は2F席は7割りほどの入り。男女はほぼ半々で、若い人から中高年まで割りと幅広くいた。映画の日の翌日なので、この程度の入りなのではないだろうか。ボクはありがたかったけど、昨日は混んだんだろうなあ。

 半暗で始まった予告では……3D-CGアニメの「カンフー・パンダ」はなんだかとても日本のアニメっぽい感じがしたが、れっきとしたハリウッド作品、ドリームワークスだ。絵が良いのは当然として、またまた俳優陣が豪華。ジャック・ブラック、ダスティン・ホフマン、アンジェリーナ・ジョリー、そしてなんとジャッキー・チェンまでが声をやっている。見たい。

 「ナルニア国物語 第2章:カスピアン王子の角笛」は同じ予告ばかりで、そろそろ飽きてきた。すごそうだったのは「僕の彼女はサイボーグ」。韓国との合作ということでか、日本映画の枠を超えている気がした。さすがクアク・ジェヨン監督。期待できそう。ニコラス・ケイジの「NEXTネクスト」は、短くて良くわからないが、2分先の未来が見える男の話だと。

 それにしても、微妙にピントがあまい感じがしたが……気のせいか……。


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