Jumper


2008年3月9日(日)「ジャンパー」

JUMPER・2008・米・1時間28分(IMDbでは米版90分)

日本語字幕:手書き書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts

(米PG-13指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://movies.foxjapan.com/jumper/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

5歳の時、母親が家を出ていき父(マイケル・ルーカー)に育てられたデヴィッド(ヘイデン・クリステンセン)は、高校の時氷結した川に落ちた時、図書館にテレポートし溺死を免れた。彼は内部がわかっていれば銀行へもテレポートできることを知り、父の元を去り一人暮らしを始める。銀行から一時的に借りたお金で何不自由なく暮らし、世界中あちこち旅するうち、何者かが追っていることに気付く。彼らはテレポート能力を持つ者を人間の敵と見なし抹殺する役目を持つパラディンと呼ばれる者たちだった。

73点

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 ジェット・コースター・ムービー。次から次へと何かが起こって、息つくヒマもないほど目まぐるしい展開。能力に気付いた驚きと困惑から、やがてコントロールできるようになる様を見せ、テレポートという超能力をありそうなものと思わせてくれる。しかも世界各地のモニュメントなどに現われる様子はとてもリアルで、説得力がある。日本も渋谷や新宿、秋葉原などが出てくる。この辺は映画ならではだろう。

 ただ、少なくとも主人公はその能力を人助けなどに使おうとせず(被災地で逃げ遅れた人々のニュース映像がチラリと写る)、私利私欲とお楽しみのためだけに使う悪人。結局はドロボー。閉まっている遺跡も内側から鍵を開けて、面食らう彼女を入れたりする。これでは、いくらカッコイイとはいえ観客は主人公をあまり好きにはなれない。パラディンたちに命を狙われてもしようがないではないか。即座に抹殺というのはやり過ぎだが、いくら人を傷つけていなくても、逮捕されてもしかたないではないか。

 原作(「ジャンパー 跳ぶ少年」スティーヴン・グールド/ハヤカワ文庫SF)があるので、勝手にストーリーを作ってしまうわけにはいかないだろうが、主人公がもっとその能力を授けられたことについて深く考え、悩んだりしてくれないとなあ。

 しかも、なぜパラディンがジャンパーを抹殺しようとするのかも語られないし、そもそも何者であるのかも語られない。RPGなどでは聖騎士とかだが……。もともとはシャルルマーニュ大帝に仕えた12人の勇者のことらしい。

 主人公のヘイデン・クリステンセンはもちろん新「スター・ウォーズ」シリーズ2作と3作で若き日のダース・ベーダー、アナキン・スカイウォーカーを演じた人。それ以外はパッとしない感じだが、「海辺の家」(Life as a House・2001・米)は普通に良かったかな。本作がきっかけとなって、バラエティに富んだ主演作が増えるかも。

 パラディンのリーダー、ローランドは、サミュエル・L・ジャクソン。色んな作品に出ている人で、最近は航空蛇パニック「スネーク・フライト」(Snakes on a Plane・2006・米)やクリスティーナ・リッチの「ブラック・スネーク・モーン」(Black Snake Moan・2006・米)と蛇に関わっていたようだが、ヘイデン・クリステンセンとは新「スター・ウォーズ」シリーズで共演している。日本では劇場公開されたTVシリーズ・アニメ「アフロサムライ」(Aflo Samurai・2007・日/米)では、製作総指揮と声優を務めている。

 もう1人のジャンパーは、イギリス生まれのジェイミー・ベル。感動の大ヒット作「リトル・ダンサー」(Billy Elliot・2000・英)の主演でイギリスのアカデミー賞主演男優賞を獲得、とんでもない事件に発展する恐ろしい戦争映画「デス・フロント」(Deathwatch・2002・英/独)や「キング・コング」(King Kong・2005・ニュージーランド/米)など、確実にキャリアを重ねている。

 主人公のあこがれの女性ミリーの少女時代を演じたのは「テラビシアにかける橋」(Bridge to Terabithia・2007・米)のアナソフィア・ロブ。言っちゃ悪いが、大きくなってからより少女時代の方が魅力的だった。「リーピング」(The Reaping・2007・米)のイナゴ少女も良かったしなあ。

 大人になってからのミリーを演じたのは、レイチェル・ビルソンという人。美人だけれど、どこかキツイ印象のある人で、TVの人気ドラマ「The OC」(The O.C.・2003〜2007・米)などTVを中心に活躍していたらしい。本作の役にはちょっと合わなかったかも。

 父親役はマイケル・ルーカー。昔から犯人役などが多い人で、こんな役はピッタリ。つい最近モンスター映画「スリザー」(Slither・2006・加/米)では驚くべき変身を果たしていた。

 母親役は、ちょっとしか出てこないが、ダイアン・レイン。シリーズ化したら重要な役になりそうな感じ。つい最近「ハリウッドランド」(Hollywoodland・2006・米)でジョージ・リーブスの愛人を演じていた。

 監督は傑作アクション「ボーン・アイデンティティ」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)のダグ・リーマン。「Mr. & Mrs.スミス」(Mr. and Mrs. Smith・2005・米)でもアクションを撮っているが、本当にアクションを見せるのがうまい。「The OC」では製作総指揮と監督もしているので、レイチェル・ビルソンを抜擢したのだろう。

 脚本はデヴィッド・S・ゴイヤー、ジム・ウールス、サイモン・キンバーグの3人。どうやらアクションを得意とする人たちを集めたらしい。もうちょいと長くて、それぞれのキャラクターが深く描かれていればと惜しまれる。

 デヴィッドは「ブレイド」(Blade・1998・米)シリーズを書いた人で、古くはジャン=クロード・ヴァン・ダムのアクション「ブルージーン・コップ」(Death Warrant・1990・米)なども書いている。「ブレイド3」(Blade: Trinity・2004・米)では監督もやっている。

 ジムはこれまでに「ファイト・クラブ」(Fight Club・1999・米/独)などを手がけている。サイモンは日本ではビデオ発売となってしまったが、派手なアクション満載の続編「トリプルX ネクスト・レベル」(xXx: State of the Union・2005・)や、「Mr. & Mrs.スミス」、「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」(X-Men: The Last Stand・2006・米/英)の脚本を手がけている。

 日本人俳優では、日本の科学者役で池内万作が出ていたらしいが、気が付かなかった。

 コピー防止のためのドットがちょっと目立ったのは残念。それに、日本語吹替版はなぜ? 大人向けで暴力いっぱいなのに。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は45分前に着いたら20〜30代くらいの男性が1人。30分前になって開場した時でも20人ほど。2/3は20代くらいの若い人で、残り1/3が中高年。女性はわずかに3人ほど。

 スクリーンはビスタで開いており、カバー無しの全席自由。小学生連れのお父さんや、高校生の3人連れもいたが、客層はほぼ最初のまま。最終的には1,044席の4割りほどしか埋まらなかった。話題作なのに……。

 チャイムが鳴って半暗になって始まった予告は……上下マスクの樋口真嗣監督版「隠し砦の三悪人」は森田芳光版「椿三十郎」(2007・日)ほどオリジナルにそっくりというわけではないようだが、どうなんだろう。

 アンジェリーナ・ジョリー、ジェームズ・マカヴォイ、モーガン・フリーマンが出演するアクション「ウォンテッド」は映像がまた素晴らしい。日本の公式サイトは見当たらなかったが、なんと監督は「ナイト・ウォッチ/Nochinoi Dozor」(Nochinoi Dozor・2004・露)シリーズのティムール・ベクマンベトフだとか。これは楽しみ。弾丸にカーブをかけるとは!

 上下マスクで、トニー・レオン、金城武が出演するジョン・ウー久々の監督作品「レッドクリフ」は、超娯楽大作という感じで面白そう。ただ10月公開だからだいぶ先だなあと。

 そして驚いたのはシリーズ最新作「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」はちゃんと映像付きの予告。あの巨大な倉庫から話は始まるらしい。6月21日公開だから、3ヶ月ある。

 トム・ハンクス、ジュリア・ロバーツ共演の上下マスク「チャーリー・ウイルソンズ・ウォー」もおもしろそう。2人が新作から遠ざかっていたような気がするので、余計に楽しみ。

 シネスコになって、ドルビー・デジタルの洞窟パターンのデモの後、スキン・ヘッドの後頭部にバーコードのある男が主人公らしい「ヒットマン」。凄いアクション。銃はカバメントとMP5とブレイザー・スナイパー・ライフルのよう。劇場によっては見たい。


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