Enchanted


2008年3月15日(土)「魔法にかけられて」

ENCHANTED・2007・米・1時間48分(IMDbでは米版107分)

日本語字幕:手書き書体下、古田由紀子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG指定)(日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/movies/mahokake/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内は最新情報から)

アニメのおとぎ話の国「アンダレーシア」の住人、心優しいジゼル(エイミー・アダムス)は、義理の王子エドワード(ジェームス・マーデン)と結婚して自分が女王の地位を奪われると恐れた魔女ナリッサ(スーザン・サランドン)によって、人間界へ追い出されてしまう。ジゼルが着いたのは現代のニューヨーク。夜さまよっているところを、バツイチの離婚弁護士ロバート・フィリップ(パトリック・デンプシー)と6歳の娘モーガンに助けられ、エドワード王子が助けに来るまで泊まることに。しかし、魔女の命を受けた刺客ナサニエル(ティモシー・スポール)が毒リンゴを持って追ってきていた。

80点

1つ前へ一覧へ次へ
 参った。感動した。楽しかった。血も出ないし、残酷な暴力もない心安らぐロマンチック・コメディ。たまにはこういった映画を見ないといけないのではないかと思った。人間にはいくつになってもおとぎ話が必要なのだ。そして、それが、本作だ。笑えるし、日頃の嫌なことを忘れて、とってもハッピーな気分。希望が湧いてくる。

 あえて古くさい60年代くらいの手法の導入から、まずビスタ・サイズでアニメの世界へ入っていく。最新CGのディズニーのロゴのお城、そしてその窓、その中のテーブルの上の絵本、タイトルが書かれたその飛び出す絵本が開きその中へ。そして、往年のディズニー・スタイルのアニメーションが始まり、人間世界へ落とされると、そこからシネスコ・サイズになって実写の世界へ。主人公のジゼル、リス、ナサニエル、王子、魔女ナリッサまで、まったく実写とアニメで違和感がないのが素晴らしい。

 そして、アニメの世界と実写の世界のギャップで笑わせ、しかし人々が一緒に歌い出して踊り出すというミュージカルの世界や、ヒロインの歌声で動物たちが集まってきて一緒に仕事をするというアニメの世界でしか起こらないことを実写でリアルに再現して見せる。この楽しさ。もちろん、最後はちゃんとThe Endの文字。久しぶりに見た気がする。

 あえて言えば、ジゼルとロバートの関係をもう少し描いて欲しかったのと、娘のモーガンとジゼルの心の交流ももう少し欲しかった。そして、その過程でナサニエルがジゼルの良さを目にして自分の使命に疑問を持つというところまで描かれていたら、ラストが唐突ではなかったかも。

 とにかくヒロインのエイミー・アダムスが美しくて、キュート。魅力があふれている。アニメのキャラクターなので、貧しい身分のはずなのに育ちがよくて素直。すべてのことを良いようにとらえて、悲観的な見方も、卑屈なとらえ方もしない。このピュアで無垢な感じが、ほかの登場人物はもちろん、観客にもストレートに心に入ってくる。いら行動がちょっとくらいおかしいからって、こんなに良い子は守ってあげなければという気にさせる。

 ほぼジゼルのキャラクターでこの映画の成功は決まったのではないだろうか。演じているのは、エイミー・アダムス。イタリア生まれのアメリカ育ちで、1974年生まれの34歳! ちょっと見には22歳くらいにしか見えない。確かにアップになると目の回りなどにシワはあるが、はつらつとした感じでほとんど気にならない。ほとんどTVに活躍してきたようで、年齢からしても出演作はたくさんある。なぜいままであまり知られていなかったのか(特に日本で)不思議なくらい。映画では小劇場で公開された「私が美しくなった100の秘密」(Drop Dead Gorgeous・1999・米/独)や、大作ではレオナルド・ディカプリオの「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(Catch Me If You Can・2002・米)に出ていたらしいが、印象に残っていない。その後あまりパッとせず、本作で花開いたと。今後は注目だろう。高校のころからコーラス部で歌っていたらしく、本作の歌もすべて本人。うまい。

 真実の愛のキスをするため素敵なリップ(唇)を探しに来るジゼルが出会うロバート・フィ“リップ”を演じているのは、人気TV番組「グレイズ・アナトミー」(Grey's Anatomy・2007〜・米)のデレク医師役のパトリック・デンプシー。映画では見ていないがヒラリー・スワンクの「フリーダム・ライターズ」(Freedom Writers・2007・独/米)や、ロマンチック・コメディの「メラニーは行く」(Sweet Home Alabama・2002・米)で市長の息子をさわやかに演じていた人。ほかにギャング青春映画「モデスターズ/青春の群像(Mobsters・1991・米)」やホラーの「スクリーム3(Scream 3・2000・米)」で若い刑事を演じていて、非常に印象が良い。本作の役にはピッタリだろう。

 エドワード王子は、また絵に書いたような二枚目でピッタリのジェームズ・マースデン。さわやかだが何も考えていないようなディズニー・アニメの王子役の雰囲気が良く出ている。「X-メン」(X-Men・2000・米)シリーズでサイクロップスを演じている人。

 魔女のナリッサ女王は、なんとベテラン女優のスーザン・サランドン。「イーストウイックの魔女たち」(The Whitches of Eastwick・1987・米)、「テルマ&ルイーズ」(Thelma & Louise・1991・米)、「依頼人」(The Client・1994・米)、「グッドナイト・ムーン」(Stepmom・1998・米)、最近では見ていないが「エリザベスタウン」(Elizabethtown・2005・米)に出ている。さすがに魔女というか女王の貫録がある。

 その魔女1964の手下ナサニエルがティモシー・スポール。本当に見た感じがディズニーのアニメに登場するキャラそのままの人。やっぱり印象深かったのはトム・クルーズの「ラスト・サムライ」(The Last Samurai・2003・米)で通訳兼フォトグラファーのサイモン役。「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」(Sweeney Todd: The Demon Barbar of Fleet Street・2007・米)にも出ていて、今や引っ張りだこ。

 なんと、ナレーションはあのジュリー・アンドリュース。「メリー・ポピンズ」(Mary Poppins・1964・米)、「サウンド・オブ・ミュージック」(The Sound of Music・1964・米)、ヒッチコックの「引き裂かれたカーテン」(Torn Curtain・1966・米)などに出演した大スター。最近では「プリティ・プリンセス」(The Princess Diaries・2001・米)などに女王役で出ていて、まさにクィーン・オブ・ファイタジー的イメージ。それをナレーションに使うとは。

 素晴らしい脚本は、ビル・ケリーという人。過去に「タイムトラベラー/きのうから来た恋人」(Blast from the Past・1999・米)を書いているらしいが、本作と共通項がある気がする。ちょっと見てみたい気がする。アメリカでは1年前に公開されたサンドラ・ブロックの新作スリラーも書いているらしい。

 監督はケヴィン・リマ。なかなか面白かったディズニー・アニメの「ターザン」(Tazan・1999・米)、いかにも続編という感じの実写版「102」(102 Dalmatians・2002・米)を監督している。本作は良かったので、本来は実力のある人なのではないだろうか。次作も見てみたい。

 公開2日目の初回、40分前に着いたら新宿の劇場は6人の列。オヤジが2人、中学くらいから20代くらいが4人。そのうち女性が3人。30分前ちょっと過ぎくらいに開場し、全席自由の場内へ。この時点で12人ほど。男女はほぼ半々。

 最終的には若い女性と白髪の高齢者も増えて、406席に2.5割ほどの入り。男女比は4対6くらいになり、女性2人連れというパターンが目立った。しかし、いずれにしてもこれは少ない。もっと入って良い映画だと思う。ダンス・シーンやラストのスペクタクル・シーンなど、劇場で見ておいた方が良いと思うけどなあ。

 カーテンが開いて、暗くなって始まった予告編で気になったのは……スティーヴン・キング原作「ミスト」は監督が「ショーシャンクの空に」(The Shawshank Redemption・1994・米)の名手フランク・ダラボン。これは気になる。

 SFホラーっぽい「クロバーフィールド」は、かなり気になるが、その構成が「ブレアウィッチ・プロジェクト」(The Blair Witch Project・1999・米)ぽいのが引っかかる。「身の丈三尺の大イタチ」ってなことにならなければいいが。しかもほとんどビデオ撮影という設定で手持ちで、リアルさを出すためカメラが揺れまくっている。これは疲れそうだ。ただ自由の女神の首が飛んでくるところなどスゴイ映像があるようだが……。

 スクリーンがシネスコ・サイズになってから、ピクサー3D-CGアニメの「ウォーリー」の予告。それを見る限りは、なんだか「ピノキオ」(Pinochio・1940・米)というかスピルバーグの「A.I.」(Artificial Intelligence: AI・2001・米)みたいなストーリーで、ロボットの見た目はどうにも実写SFの「ショート・サーキット」(Short Circuit・1986・米)のようで、どこにオリジナリティがあるのかと。実写のような映像は凄いけど……。

 「ナルニア国物語 第2章カスピアン王子の角笛」は新予告に。だんだん内容がわかるようになってきた。面白そう。でも、活躍するのがあの兄弟たちより、新登場のカスピアン王子のようで、ちょっとそれが気にかかる。


1つ前へ一覧へ次へ