Sweet Rain Sinigami no Seido


2008年3月23日(日)「Sweet Rain 死神の精度」

2008・日・1時間53分

ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル


公式サイト
http://www.shinigaminoseido.jp/
(全国の劇場案内もあり)

突然の不慮の死を判定する死神の“千葉”(金城武)の、新しい担当は27歳のOL、藤木一恵(小西真奈美)だった。偶然を装い藤木にコンタクトをとると、藤木はずっと運に見放され、愛した人が不幸になるという人生を送ってきていたことがわかる。電機メーカーの苦情処理をする現在もストーカーに悩まされ続け、何もなく同じ毎日を過ごす暮らしを送っていた。千葉が「実行」か「見送り」か迷っていると、意外な事件が起こる。

73点

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 3つの人生の物語。だいたい2つめが終わったあたりでなんとなく全体の話が想像が付くが、感動的な話ではある。ただ、小説としては、この構成、このラストもあると思うが、映画とするとクライマックスの盛り上がりに欠け、最後の3人目の話があまりに地味で、盛り下がる印象。惜しい。

 1人目の27歳OLの話は、いかにもラブ・ストーリーらしい構成で、千葉と藤木の関係が素晴らしく、もっと見ていたい感じ。時代背景は1980年代。死神の設定もうまく、ファンタジーとして受け入れやすい。小西演じるヒロインが、美人過ぎるとしてもいそうな感じで等身大。実に良い。それに反して、ストーカーの話はあまりに強引で納得しがたい。ひど過ぎる。小説なら良いのかもしれないが、具体的に映像で見せられると、あまりにありえない。

 一転して、40歳のヤクザの話はあまりに暴力的。たぶん描写としてはそれほど暴力的ではないのだが、ほんわかしたラブ・ストーリーにどっぷり浸っていた後だけに、とても暴力的に感じてしまう。しかも石田卓也演じるチンピラの阿久津があまりにリアル。演技がうまく、見ているこちらがチンピラに嫌悪感を覚えてしまうほど。本来は兄貴分のやくざの話なのに、子分のチンピラにフォーカスが行っているあたりで、これはひょっとしてという気がする。とにかくヤクザの話は映像にするととても強烈になり過ぎるので、バランスとしては3話中ここがもっとも派手になり、ピークのような印象になってしまった。このチンピラがヤクザになりたてで、しかも、もう少しまともなヤツでないと、観客は付いていけない。成人式でキレるやつらを見ている感覚になる。とても認められない。

 3人目の70歳理容師は、観客から言えば未来の話で、家庭に人間そっくりのアンドロイド型お手伝いロボットが入っているような時代の話。ファンタジーだとしても、こんなに海岸近くの人里離れた場所に(景色は良い)、お土産屋でもペンションでもなく、床屋があるなんてどうかしている。しかも70歳のおばあちゃんが1人でやっていて、お客が来るか。ファンタジーだけど……。ファンタジーだからこそ、リアルにしなければならない部分というのはあると思う。

 死神の“千葉”を演じる金城武は、なにしろ「恋する惑星」(Chungking Express・1994・香)が良かった。たくさんの話題作などに出演しているが、チャン・イーモウの「LOVERS」(House of Flying Daggers・2004・中/香)では国際的な評価を得た。現在ポスプロ中というジョン・ウーの新作アクション「Red Cliff」にも出演、「傷だらけの男たち」(傷城・2006・香)で共演したトニー・レオンと再び共演している。

 薄幸なOL、藤木一恵を演じた小西真奈美は、いかにもいそうな感じで自然な演技。歌手デビューすることになる役で、実際に歌がうまく、役名で歌手デビューすることになったというのだが……。

 チンピラ阿久津をムカツクほどリアルに演じたのは石田卓也。2002年の「ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でフォトジェニック賞を受賞して芸能界に入り、2005年にTVドラマで役者デビューしたらしい。「蝉しぐれ」(2005・日)で劇場映画デビューしたらしいが、見ていない。最新作は「リアル鬼ごっこ」(2008・日)で、「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」が4月から公開されるらしい。演技はたぶんうまいと思うが、本作はあまり良い役とは言えなかったと思う。印象がよろしくない。

 阿久津のアニキ藤田を演じたのは、光石研。ベテラン名わき役で、相米慎二の「セーラー服と機関銃」(1981・日)では、薬師丸ひろ子の同級生役をやっていたらしい。TVの出演も多いが、日本映画以外にもハリウッド作品の「シン・レッド・ライン」(The Thin Red Line・1998・米)や、韓国との合作映画「ロスト・メモリーズ」(2009 Lost Memories・2001・韓/日)、いつ公開されたのかもわからないが「インビジブル・ウェーブ」(Invisible Waves・2006・タイほか)にも出ている。最近のメジャー作品は中田秀夫の「怪談」(2007・日)あたりか。

 敵対する組のボス、“くりき”を演じている人が顔はわかるのに名前が思い出せない。主要キャストに入っていないので、文字としてリリースされていない。どの資料を見てもリリースをベースに作られているらしく、判で押したように同じ内容。とにかく、こんな役がうまい人。いい。

 ヤクザのエピソードで登場する銃器は、ベレッタM92、ガバメント、グロック、ハイパワー、P226らしいもの、トカレフなどと、リボルバーも少々。

 監督・脚本は筧昌也。漫画家からアニメーションをヘてディレクターになり、小説も書くという多彩なクリエーター。TVの「ロス:タイム:ライフ」や、劇場映画「恋するマドリ」(2007・日)の原案を担当しているらしい。

 原作は人気若手ミステリー作家、伊坂幸太郎の「死神の精度」(Accuracy of Death/文藝春秋)。大沢たかおで映画化された「陽気なギャングが地球を回す」(2006・日)もこの人の原作らしい。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は前日に座席を確保しておき、10分ほど前に着いたら場内案内が始まったところ。最終的には全席指定の540席に2.5割ほどの入り。さすがに系列のより大きな劇場で出演者たちの舞台あいさつがあった翌日だけに空いている。

 3対7くらいで圧倒的に女性が多く、女性はやや若めだが、メインはやっぱり中高年。

 半暗で始まった予告編は……上下マスクのチャン・イーモウ監督作品「王妃の紋章」はやっぱり絵がすごい。そしてチョウ・ユンファとコン・リー。これは面白そう。

 前作はガッカリだった「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」は、今度はちょっとホラー風の予告。脚本家は変わったが、同じ監督、配役でどうなんだろう。まったくの子供向けと考えれば良いのかもしれないが……。

 ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが共演するという「最高の人生の見つけ方」は、余命6ヶ月を宣言されてどう生きるかという話らしいが、予告編を見ると決して湿っぽい話ではなく、むしろ楽しい映画のようだ。監督がロブ・ライナーなので期待できるかもしれない。

 上下マスクの「バットマン・ビギンズ」の続編「ダーク・ナイト」は、すごいアクション。特にバイクがカッコいい。そしてジョーカーはかなり怖い。ちびっ子はおしっこを漏らすかも。完全に大人向けの映画のようだ。モーガン・フリーマンやマイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマンらが引き続き出ているのも見逃せない。期待したい。なぜか日本語サイトはまだない。

 ワーナーが配給しているからか、コピー防止のドットが目立ったのは残念。


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